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キューピッド役の私と、無関係な寝取られ

10月初め、私達は指導室で、双冶の受験先となる『欧渓庭鴎大学』の資料を探していると、

「桃山、私から個人的な話があるので、別室にきてほしい。2人が同席しても構わない」


担任が私達にわざわざ、個人的なお願いがあると言ってきた。


双冶と雫も特に問題無いと言われ、担任に従って、別室へと移動した。


今、私達がいる教室は2-3教室となり、普段、授業を受けている場所。

人払いはすでに済ませていて、他の生徒が盗み聞き出来ない状態にしている。


私達と先生は向かい合わせで座る。

先生が近くの椅子を借りて、教卓からドアに近い場所に座っている。


担任の彼女の名前は外内(とない) 涼(はる)。

学生時代はキックボクシングをやっていたが、プロになる事は無く、大学卒業後に教師となって、十数年となる。


先月、細野君が怪しい行動をしようとして中断したのは、彼女に撃退される事を恐れた為。


そんな彼女は今、前屈みとなって、もじもじとしていた。


しばらくして、意を決した彼女は

「桃山さん、長平さんに私の事を紹介してほしい」

思ったよりも大きな声で宣言した。


私自身も知らない訳ではないが、あまりに頼られすぎている事が気になる。


「それ、私じゃなくても良くないですか?」

敢えて、突き放すように言ってみる。


すると、先生は私に顔を近づけて、

「いや、桃山に頼るのが最適解だと判断した。だから、お願い。私を紹介して」

若干、涙目になりながら訴えてくる。


私は両隣の席に座っていた2人を見て、目で語りかけてみる。


「紹介ぐらいはいいんじゃないか?」

「断るか否かは相手次第」

会わせてみろと言う事らしい。


2人の言葉を聞いた先生は喜んでいる様子で、

「ありがとう、持つべき物は生徒だな本当に」

私達を気にする様子も無く、感極まっていた。


「恋愛相談は生徒に頼るべきでは無いと思うんだけど」

私は思わず、本音が漏れてしまった。


彼女はと言うと、私のつぶやきに気にしてる様子は無い。


これ以降は特に問題無く、20分後、住坂ジムに着く。


私の先導で一同、施設内に入る。


左側のカウンターに居た与野さんが声をかけてきた。

「あら、桃山さん達と……誰?その人」

見慣れない姿を見て、彼女の事を聞いてくる。


「この人は私達の担任で、外内涼さんと言うんだけど、実は折り入って相談したい事があるんですよ」

波風が立たない感じで聞いてみた。


「じゃあ、事務室エリアで聞くから、話は座ってからね」


与野さんの先導で、事務室の中に入り、佐藤さんが前日計量日に寝ている辺りの畳に座って、相談する事になった。


「それで、相談と言うのはなんでしょうか?」

「ああ、実は長平さんについてだが」


急に弱気になる先生に与野さんは苦笑して、

「今の態度で、長平さんの事をどう思っていたか分かりましたから、素直に話してください」

彼女に素直に話すように促す。


そして、何を思ったのか、

「そうだ、桃山さん。悪いんだけど、練習が終わるまで、みんなのサポートしてくれないかな?」

私にガック達のサポートをお願いしてきた。


「分かりました。どういう意図かは知りませんが、2人は置いて大丈夫ですか?」

双冶と雫を見てから、確認を取る。


「2人は居ても大丈夫だから、今からお願い出来ないかな?」

「分かりました。それじゃあ、今から行ってきます」

与野さんに促され、私は事務室エリアを出た。


双冶は訳が分からなく、与野さんに聞いてみた。

「桃山さんだと、色々と気をつかわせるから悪いと思って」

単純な話であったが、外内にとっては死活問題である。


「元々、あの子は長平さんのファンと言うのもあるから、冷静な判断が出来ない可能性があったからね」

与野は桃山を追い出した理由に付け加えた。


「無意識の内に妨害する、と言う事ですか」

双冶は少し声を落として返した。


「長平さんもね、あんな人に一生悩ませられるかと思っていたから、先月までに解決するとは思っていなかったのよね」

与野はこれまでの監視体制に精神を削られていた事を話した。


「俺達もあの件について、本当に助かったと思っています。このジムも大変だったでしょうし」

「透乃は一番困っていたと思う」


2人は長い間、七見の件について色々と苦労していた事を思い出す。


「長平さんの件については、私も何もするする事が出来なくて、申し訳ないと思っています」

外内は同席してる人達に向けて、謝罪をしていた。


「私こそ、何年もいるのに、どうにもする事が出来なかったからお互い様ね。でも、言える事があるなら、手段を選ばなかったガクは褒めるべきよね」

与野はあくまでも、ガクのファインプレーを強調した。


「まあ、お互いに謝っていても仕方ないから、まずは長平さんが練習終わるまで待ちましょう」

かと思えば、長平さんの件についても、軽く答えたのだった。


ここからガクについての思い出話をして、時間を潰した。


午後8時30分。

いよいよガクの練習が終わり、透乃も一緒に入口へと集まる。


と、思ったら長平さんだけこちらに来てくれた。


「透乃ちゃんにお願いされてきたんだが、外内さんと話させてほしい」


そして、いつの間にか俺達の近くに来ていた透乃はこちらに来て、

「後は2人にゆっくり話してもらいたいから、私達は退散しましょう」

俺と雫を引き連れて、ジムを出ていき、住居に戻った。


私が2人に説明した事と言うのは、与野さんにサポートをするように促されて、サポートした際、みんなに不審に思われ、経緯を説明した事。


その時に長平さんに先生の事を説明すると、実は同じ高校で、同学年だったとの事で、さらに何度かは話した事がある事。


そして、長平さんの影響で、初対面より前の中学1年からキックボクシングをやっていた事。


大学を卒業して、根玄野高校に入った理由は、長平さんの様子を見守りたいと言う意思でやった事で、長平さん達は把握してたらしい。


これで、事務室エリアから退出した時に起きた出来事は終わり。


ここから先は後日談。


あれから、長平さんと先生は2ヶ月後に籍を入れる事になり、さらに翌週に結婚式を行う事になった。

ジムのみんなも参加し、当然、ガックも式に同席した。


そして、さらに先の話。


細野君が3月末で自主退学と言う事になった。


これは元々、奨学生だった事もあるが、9月の件において、彼の父に色々と叱責されたのだけど、実は彼の母と言うのが不倫をしてたらしい。


さらには細野君自体、母と不倫相手の子供だった事が父の調査で判明した。


これにより、彼の父はこれまで働いていた会社を辞め、12月末に都内へと引っ越し、不倫相手は勤務先を退職する事となり、彼の母も経済的に更なる困窮を極める事になった。


さすがに、家庭事情の悪さを考えると、これ以上の奨学金を出す訳も無く、経済的要因での退学となったみたい。


だけど、知念社長としては彼の父に恨みがある訳も無く、移住先や転職の都合を色々としてくれたとの事。


現在は静かに一人暮らしをしているらしい。

さらに先の話で、明らかな変化が起こるのだけど、それはまた後ほど。

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