自意識過剰の男子生徒とのいざこざ
さらに1週間後の放課後。
私は相変わらず、双冶と雫とともに『進路総合指導室』で知念社長の会社に関する資料を探してると、
「いいかげん、中山の事に見切りを付けたらどうだ?」
眼鏡をかけた、センターパートのベリーショートな男子が話しかけてきた。
彼は細野君と言って、何かにつけて双冶を引き合いに出す、残念な秀才。
「細野君こそ勉強に見切りを付けたらいい」
雫が私の代わりに買い言葉で、彼に応戦する。
「これ、理事長に報告したほうがいいんじゃない?」
同じ部屋に居合わせていた女子生徒が、細野君に聞こえるような音量で近くの生徒に言う。
「俺、今から理事長に言ってくる。重大案件だし」
男子生徒は指導室を出ていき、理事長へ通報しに行く。
「俺は何も悪い事を言ってないつもりだがな」
細野君が反省する様子は無い。
数分後、指導室に入ってきたのは私達の担任の外内先生だった。
「理事長からの指示で、桃山達に害をなす可能性がある者がいれば、特別指導していい事になってるんだ」
先生の発言に彼は慌てた様子を見せ、
「は?そんなのあなたの横暴じゃないですか?教育委員会に訴えますよ」
もっともらしい事を言っている。
先生は彼の言葉にため息をつき、
「まあいい。すでにご両親には連絡してるから、今から怒られてこい」
呆れた様子で言った。
数秒後、細野君のスマホから連絡がきて、電話に出ると、
「お前のせいで、会社の不祥事がバレた」
どうやら、電話の相手は父親みたい。
「いや、そんなの父さんが悪いだけじゃないか」
細野君は父親の失態に怒っていた。
電話からはため息が漏れ、彼を諭す。
「知念社長に敵対行為を行うと言うのはこういう事だ。本来なら起こりえなかった問題をお前は起こしたんだ」
「敵対行動って、あの会社にやった訳じゃないのに、どうしてそうなるんだよ」
細野君はここまで聞いてまだ、分かっていない様子。
「まあ、今回は1週間の謹慎と言う事で手を打っているから、お前は私達のところに戻りなさい」
彼に対して、一方的な通告。
「どうして、俺が父さんの為に尻ぬぐいをしなければならないんだよ」
相変わらずの細野君の他責志向に電話の相手はついに警告を始める。
「お前の尻ぬぐいをやっているだけだが、そんなに言うなら、自主退学させても構わないぞ」
警告に対して、彼は少しだけ怪しい動きを取ろうとしたが、諦めて先生と一緒に指導室を出ていく事にした。
彼が部屋を出た途端。
「頭が良くても、俺様な性格じゃ話にならないよね」
「勉強しか出来ないとこうなるって言う、具体的な例だよな、細野って」
居合わせた生徒が酷評した。
指導室に居る全員が思い切りため息をついて、10秒経つ。
この後は平穏を取り戻して、俺達も資料を探す事を続けた。
細野君はここから、一週間の自主的謹慎となり、学校に戻ってきてから、進路総合指導室に入ってくる事は無かった。




