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稀代の悪女からの脅威が去って

夏休みが終わり、私達は日常を取り戻した。


否、七見かおりと言う悪女が現れ、常に監視されていた日々を考えると違う気がする。


それでも私はまだ、いいほうだと思う。

双冶は奴の両親にも監視されていた。


七見一族の脅威に常に晒されていた。


しかし、それも昨日取り去られる事になった。


7月下旬に出会った知念社長の存在によって。


ガックが迷わず、彼女に助けを求めてくれたからこそ、私達の安全を確保する事が出来た。


今は本当の意味で、平和になったと言う事を意味する。


私達は9月から、ガックと一緒に登校するようになった。


これまで、私はツインテールに黒髪交じりのブロンドに染めているけど、今はもう、その必要も無い。


だから、そろそろ髪型も普通にして、染めていた髪を元に戻そうと思う。


1週間後、遂にその時が来た。


美容院は今の住居から近くにある。


位置は左から住坂ジム、今の住居、空き家を道路で挟んで、その先にあるのが美容院となる。


外観は角形の大理石を連想させるような、あくまで模様だけ。


早速、店に入る。


内装は椅子は黒、机は白、壁は灰色とモノクロ調で統一されている。


縦長に奥行きのある店内に左側がスタッフルームで遮られて、右側にカウンターがあり、そこにが立っている。


「いらっしゃい、透乃ちゃん。今日はどうしたの?」


定期的に脱色してもらったりしてるので、馴染みの人でもある。


しかし、この人は女性ではなく、男性。


髪型自体は短髪でベージュブラウンだけど、メイクの仕方が女性用。


顔も中性よりも女性寄りで、普段はとても優しい。


でも、一度怒らせてしまうととても怖い。


私はまだ、店長を怒らせた事はまったく無いけど、同席していた知らない人が怒られていた。


そんな店長の特技はハサミで居合切りをする事。


私も説明していて意味不明だけど、本当に意味が分からない。


先月に泥棒がやってきたみたいだけど、ハサミを使って色々と切り刻み、下着だけの状態にして、警察に捕まえてもらったらしい。


「実は今まで、敵をあざむく為にこの髪型にしていたんですけど、もうやる必要も無くなったから、黒に戻して髪もミディアムショートにしたいんですよ」


私は中学までにやっていた地味な髪形を希望した。


「分かった。でも、黒髪は単純にと言う訳にはいかないから、今の髪が全部伸び切るまで待つと言う方法を取ったほうが早いわね」


店長は私の希望は聞きつつも、現時点での問題も指摘した。


「まあいいわ。透乃ちゃんが高校を卒業するまで、何とか生え変わるの期待しながら、普通に染めましょう」


話を聞く限りでは、普通は自力で生え変わる長さらしいので、店長のプランに乗る事にした。


私は手前の席に座り、店長は前準備の為に粗くカットを始める。


10分ほどで終わり、次はカラーリングに入る。


今まではブリーチ込みのカラーリングだった為、髪にはそれなりのダメージが蓄積されている。


今回から黒染めにする為、根本からの髪が完全に生え変わるまではカラーリングで誤魔化す方法を取る。


こちらは塗布時間が20分、放置時間が40分の計1時間ほどで工程を終える。


後はシャンプーとトリートメントで20分ほど使い、雑に完了する。


「後は改めて、髪型の調整をするからもうちょっと待ってね」


再びカットに入り、最終的な髪のセットを行った。


「これで、どこに出しても恥ずかしくない社会人になれるわ」


(ん、社会人に?まあ、いいか)


気が早いと思うけど、高校卒業した後は知念社長の薦めてくれる宝石店に雫と勤める予定が立っている為、これで完成となる。


髪型は、長さはミディアムショートのストレート。


前髪は横に流した感じにして、毛先はワンレングスとした。


「でも、先ほども言ったようにあくまで染めただけ。1ヶ月もすれば色が落ちるから、髪が全部生え変わるまで、月1回はここに来る事、いい?」


「はい、ありがとうございます」


私は店長にお礼を言って、カウンターで会計を済ますが、キャッシュレス決済に提示した、スマホの画面に注視する。


「おや?これって確か、ねうちゃんの許可でしか使えない物なんだけど」


「んー、ねうちゃん?」


私の素っ頓狂な声に店長は慌てて、

「ごめんなさい、ねうちゃんって言うのは知念社長の事。知念音羽、『おとは』の読み方を変える『ねう』になるから大学の同級生の間ではそう呼ばれてるの」


理由を言い終えた店長はなぜか、笑顔になっていた。


「随分と可愛がられてるんですね」


知念社長の扱いがマスコットと同じなのが気になる。


「可愛がられてるのは透乃ちゃんもだから、お互い様ね」


改めて、笑顔で私に答える。


「後はこれさえ提示しておけば、ねうちゃんの監視下にある人間と言う証明にもなるから、防犯は国家レベルだと思うわ」


さらに言ってきた言葉は、可愛いとは微塵も思えないような恐ろしい内容だった。


私は店長に引きつったような笑顔を見せ、店長は笑顔で礼をする。


「今日もありがとう、また来店するのを心待ちにしてるわ」


笑顔で私を見送った。


私は美容院を出て、数分で住居に到着する。


玄関を入ると、双冶が迎えてくれた。


「随分、印象が変わったな。今の髪型も、結構いい感じだ」


双冶からの評価は上々。

しかし、私としては気になる事もある。


「でも、今の髪だとこの服、似合わないから、服を買い替える必要があると思う、だから明日、私達で買いに行かない?」


私のお願いに双冶は笑顔で了承してくれる。


数秒後、雫も玄関に来て、私の提案に乗ってくれる事になった。


そして、夜となり、私達はいつものように同じ布団で寝る事になるが、

「その、何だか、本当にドキドキするな」

双冶が新婚初夜の夫みたいな言葉をつぶやいた。


逆側に腕を掴みながら寝ていた雫は

「双冶、顔が赤い」

若干、顔を膨れさせて不機嫌になっていた。


その日は寝て、翌朝起きてからガックに会う。


彼の外見と言うのが、ツーブロックの短髪アップバンクに切れ長の目、鼻筋も通ってるし顔もシャープと言う、面識の無い人から見れば、ナンパをするタイプにしか見えないけど、彼自身は至って大人しい。


しかし、相手を自然と褒めちぎる事が出来る為、寄ってくる人達は年上の女性ばかり。知念社長もその中に入ると思う。


当の本人はボクシングの練習しか考えていないから、気にする様子は一切無いけど。


私の今の外見を見て一言つぶやく。

「桃山、似合ってるな。その髪型」

顔を赤くして、視線を横にそらした。


横にいた双冶はニヤニヤしながら、

「ガクはこんな女の子が好みなんだな、同年代には興味無いみたいだし」

私の今、思っていた事を口にした。


すると、ガックは申し訳無さそうに、

「悪い、望を見ても特に何かを思う事は無い」

彼に良く話しかける人の名前を出して答えてきた。


私はその言葉に少しだけ、嬉しくなった。


「望さんは有象無象」

雫が私の心中を代弁するように失礼な事をつぶやいた。


そんな感じで今日も登校だけ、一緒にする毎日を送る事になる。

ここから、以前に言っていた別視点の話になります。

もう少しだけ、お付き合い頂けると幸いです。

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