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本格的にクリンチ対策が実施され、より強固な選手となる

今日も朝6時に目が覚め、いつも通りの朝メニューをこなす。


1時間経過し、川名さんとともにジムに入って、3階で朝食を摂る。


朝食の途中、壱会と押強さんが入ってきたので、川名さんがジムを出て、仕事に戻った。


食事を終え、8時となり、普段と同じ練習メニューをこなす。


1セット目は様子を見守るだけとなっていたが、2セット目のミット打ちに入ろうとしたとき、

「今日はクリンチの仕方と外し方を教えるよ。その為にはクリンチをやってみないと分からないと思う」


押強さんは俺に、クリンチを動きと腕の動かす手順などを説明した。


「じゃあ、ミットを外してもできるから今からクリンチしてみて」

押強さんは前屈みになって、俺に構えた。


早速、俺はタイミングを計ってクリンチをした。


すると、両腕を入れようとした瞬間。押強さんは後方に下がり、俺は吸い込まれるように前方に倒れてしまう。


「今度は両肘の外側を締める形でやってみよう」

俺は指示どおり、今度は両肘の外側を締めるようにクリンチをする。


次の瞬間、押強さんが締めつけられた両腕を上にあげ、俺はバンザイをしたような状態になり、さらに両腕が痛くなった。


「相手のクリンチに対して、適当にやっているとこういう事が出来てしまうから、細心の注意を払わないとダメなんだよ」


俺の拘束を解き、押強さんはここから右だけ脇を締めたり、左だけ脇を締めたりを指示して、俺はクリンチをした。


右だけを締めた場合は、俺は左前に引き倒され、左だけ締めたときは右前に引き倒されいてた。


「以上で基本的なクリンチをした際の対処法になるんだけど、実はこれ、相撲の技とほとんど変わらないんだよ」


ここでようやく、元力士を対策練習相手として、連れてきたかを理解する。


「それで、相撲に当たる技と言うか決まり手は後方に引くのは叩き込み、両腕を上げるのは双差しや極め出しにつながる。先ほどやったみたいな左や右に相手の圧力を逃がす技はいなしと言って、強い相手には有効。だけど、ボクシングにはその論法は通用しないみたいだね。見ていると、明らかに力の強い人が弱い人に対して、力を出させないようにしてる」


ここで、押強さんは険しい表情にない、さらに説明を続ける。


「相撲ではこのような力士には対し、容赦ないブーイングが飛び、どんなに素晴らしい成績を残しても、一切認められない。ボクシングについても、きたないプレイだとして、どんなに勝っても評価される事は無い。成績と金さえもらえれば問題ないと思っているが、引退後は自然と、先細りになって行く人達を多く見てきたから、自分から評価を落とす行為はなるべくしないほうがいい」


押強さんは元の表情に戻り、説明を終わる。


ここで12時30分となり、昼食をとる事にした。


午後1時、通常と同じ時間でミット打ちを始めようとする。


「最後に教えないといけない事がある。それはコーナーに追い詰めたときにクリンチされて、一瞬で位置を入れ替えられて、コーナー際に追い込まれるパターンについて」


押強さんが新たに習得すべき点を説明した。


すると、リングの外で見ていた壱会が手には何もつけない状態でリングに上がり、

「ここからは俺が実践したほうが早いから、押強さんにはクリンチする側になってもらうよ」


押強さんにコーナーに行くように指示し、自身は彼の前に立つ位置に移動した。


「今からクリンチから反転するやり方を見せるから、押強さん。クリンチお願いします」


壱会がクリンチの指示を出す。

(どう考えても、100kg以上ありそうだけど、潰されないか?)


体格差を見れば、危険以外の何物でもないが、押強さんは指示通りにクリンチをした。


次の瞬間。2人の位置が逆転し、押強さんがコーナー際へと入れ替わった。

「素手だから今は攻撃しないけど、ここから3発くらいは叩き込む事が出来る」


今の動きで力の問題ではない事が分かったが、

(どうやるんだ?これ)

足がポイントになるのは確かだが、良く分からない。


「あー、足がどうこうは分からないか。てっきりサウスポーとオーソドックスの切り替えを頻繁にやってるから気づく物だと思ってけど、さすがにか」

壱会はがっかりした様子で言ってきた。


「ここから自分でやったほうがいいから、やり方は外から教える」

壱会はリングを降りた。代わりに俺がリングに上がり、押強さんの前に行く。


「今から説明するから、俺の言う通りにやってくれ」

再び押強さんがコーナーに追い詰めた位置に移動し、俺はコーナーに追い詰められた側となる。


「押強さん、とりあえずクリンチをやった形にだけしてください」

俺は両腕を両肘の内側に差し込まれる。


「このタイミングで、オーソドックスになっている押強さんの右足の後ろに右足を回り込ませる形にして、左腕を上に持ち上げる。そのまま、左回りに回れば上手くいくはずだ」


俺は指示通りにやると、相手の重さはほとんど感じず、位置交換をする事が出来た。


「これが基本形。次は両肘の外側しか持てなかった場合をする。基本的にさっきと同じ動きだけど、左手で左肘を抱えて回るだけだが、この時に分かりやすいと反則行為になるから、あくまでクリンチしてるアピールをしながらの手を添えるだけで内側にすると言うイメージでやってみてくれ」


次のパターンを指示通りにやると、先ほどと同じように体の入れ替えをする事ができた。


「ここまで出来れば、後は繰り返し練習して確実な物にするだけだな」


俺は先ほどまでに習った事をひたすら繰り返して、徐々に自分の物へとしていった。


1セット終わるごとに食事を摂る。

また繰り返し練習し、形になったときには、すでに午後9時を過ぎていた。


俺達は帰り支度をしてジムを出ると、川名さんが立っていた。

「昨日と今日の2日間、特別指導をありがとうございます」

壱会と押強さんに礼をする。


「いえ、こちらは正式な依頼を受けただけで、私達は仕事を全うしただけです」

「私もいい勉強になりました。明日、ホテルから家に帰りますが、用がありましたら、どうぞ相談してください」


押強さんが礼をしたら、後から壱会の礼をした。


2人は昨日と同じホテルに泊まり、翌朝には帰って行った。


俺も川名さんと2階住居に戻り、明日からの練習に備えて眠りについた。


■■■ 知念社長に念押しされた為、今回は形式を変えた


2日間の強化練習が終わり、翌朝に帰った日の午後から雑談配信をして、住坂雅玖と月花公兎との様子を報告した。


配信タイトル『住坂雅玖のクリンチ対策強化対策の様子について』


「へえ、今回あの元押強をゲストに呼んだのか」


「元押強って誰?」


「現役時の四股名、押強。得意手は引き落とし、はたき込み、いなしなどの引き相撲の第一人者」


「紹介が本当にろくでもない」


「いやだわ、そんな力士。むしろ住坂の害にしかならないが、大丈夫か?」


「大丈夫だ、問題しかない」


「内容聞いてから、判断しようよ」


「押強なのに、引き相撲専門って……押弱か引強に四股名変えられなかったのかな」


「引退原因、初横綱戦で1回の突っ張りで相手の顔面を破壊。後から理事長がブチ切れて、諭旨退職となる」


「学ばないねえ」


「なお、この件で知念社長と会長が庇護し、無事に理事長及び関係者は身動きを取れなくなる」


「ざまぁ」


始めに住坂雅玖が、クリンチを全く出来ていなかった事を報告する。


「これは分かる気がする」


「クリンチするところなんか、一度も見たことない」


「クリンチよりも1つの強打」


「クリンチしてる間に5発は打てるぜ」


「クリンチからブレイクまでにKOする自信があるぜ」


「それな」

「それな」


「ここは合うのかよ」


「今回、グエッサーの参加は認められなかったらしい」


「クリンチ撲滅マシンだから、存在自体が」


「ダーティーなクリンチしようとしたら、問答無用で反則と認められそう」


「だって、グエッサーの攻撃百発百中だし」


「これが一発でも外れれば、クリンチは認められそうだけどな」


「住坂なら百発中数発は外れそうだよな、相手によるけど」


「だからこそクリンチとその対策をやっておかないといけない」


「で、結果はどうだったんだろうな」


次に元押強から見たクリンチ適正についてと、相撲とどう繋がるのかを語った。


「押強の評価。ものすごくクリンチ上手くなるよ」


「ああ、すごいプロボクサーの映像見てクリンチ対策を研究してたんだが、確かに相撲は関係あるかも」


「引き、はたき込み、いなし、きめ出し、後はもろ差しもか」


「もろ出しか?」


「お前は出禁」


「真面目に答えると、あれは不浄負けが正式名称だからな。その言葉も相撲関係者に言わないほうがいい」


「別のボクシング講座動画を見たら、もろに相撲の四つ相撲と双差しと両上手だった」


「双差しの漢字表記、合ってる?」


「分からん。両差し、双差し、諸差しのどれかは結構適当みたい」


「もろ差しって書くのが正解だな、現時点では」


「で、何で今回は動画にしなかったんだ?」


「いや、何のための強化練習だよ。公開したら、対策の意味ないじゃん」


「知りたがりの俺らは完全悪って事ですね」


「今回に限っては間違いないな」


次に練習の成果がどうだったかを説明した。


「そりゃあ適正◎なら、習得も早いだろ」


「いや、むしろ☆じゃないか?」


「それ、住坂が大穴って意味なんだけど」


「いや、普通に考えたらクリキコのほうが強いだろうが、戦法はあれだが」


「☆とはいかないが、▲ならありえるかな」


「競馬予想スレはここですか?」


「元押強の評価は当たってたんだな」


「引いて前に倒れて予想が当たった。押して顔面破壊して放送事故に当たった。どっち?」


「上手い事言ってるつもりだろうが、全然スベってるからな、それ」


後は住坂の出来なかった事について触れ、最後の挨拶とともに配信が終了した。


「頻繁に足の切り替えしてるから、1回の説明で分かると思ってたのかよ」


「つまりは住坂雅玖は凡人」


「凡人がグエッサーに勝てるわけねえだろ」


「引き相撲と突き押し相撲じゃ全然違うんですよ、思考パターンが」


「引く事を微塵も考えてない力士に引き相撲を教えるのは悪だな、本当に」


「ここは相撲関連の配信ですか?」


「まあでも、元押強が注意してたのは何か、感心してしまった」


「そもそも引き相撲を多用してた人を評価するところではない」


「ああ、これってボクシング動画だったな」


「確か、クリンチの貴公子って90kg近くあったはずなんだが」


「今まで、ボクシングを土俵に見立てて、弱い奴を潰し続けてわけね」


「潰されないためにも、何とか再起不能にしてほしい、ガチで」


「やっぱり、クリンチ多用は嫌われるからやったらダメだわ」


「次の試合だけは住坂を応援するよ」


「いや、今まで何を応援してたの?」


「住坂の負ける瞬間」


「やっぱこいつ出禁だわ」


「なお、ヒッターには3戦3敗3KOと事実だけは残ってる、映像付きで」


「あ」

「あ」


「だから、あ、じゃねえんだよ」


ここからはボケとツッコミ合戦が延々と繰り広げられていった。


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