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用法容量を守らないとこうなります

俺が壱会にKO負けしてからの話。


この日は午後から練習をして、帰って寝たのだが、壱会の配信を見ていた人からの失神したとの通報がされていた。


川名さんから聞かれて、5分ほど気を失っていたと答えたら、ものすごく怒られた。


展数さんも怒られてから、病院で精密検査をしてもらい、脳には特に問題ないと言う事で、その日は練習を休む事になった。


夜には音羽も久しぶりに戻ってきて、様子を見られたが問題ないと判断し、翌日からの練習はしていいと言う事で話は終わった。


1週間後にやったスーパーミドル級世界タイトルマッチの結果はと言うと、1ラウンド1分30秒のKO勝利となり、世界チャンピオンになった。


タイトルを獲った後はベルトを巻かれたり、試合後インタビューなど、セレモニーが盛大に開催された。


ところで、試合の内容はと聞かれると、どう答えるか。


壱会よりも手強いはずがなかった。何が起きたのか。


あろうことか、対戦相手がファントムフックの真似事をした。


しかし腕が見えてバレバレな上、無策でやろうとしたのですかさず、左の全力ストレートを打ち抜いて、相手は失神してのTKO勝ちとなったのである。


後日、対戦相手がヒッターちゃんねるに翻訳ツールを使いながら文句を言っていたが、8歳の娘に醜態を見られ、生配信中にコメント欄で、公開説教される事態となった。


通常は無関係なコメントの為、コメント削除案件となるのだが、その様子があまりにもおかしな為、薬物乱用になぞって『技のパクり。ダメ、ゼッタイ』と、何とも締まらないキャッチフレーズが出来る始末となった。


ここからの出来事だと、俺はすぐに世界チャンピオンのベルトを返上し、ライトヘビー級への階級上げを宣言した事である。


この階級での強敵はやはり、世界チャンピオンとなるジェイス・ニューマンだろう。


持ち前の素早さを武器にあらゆる攻撃を回避するウィービングやダッキングを駆使し、相手が嫌がったところへの強打を主体とした戦法を得意としている。


正直、普段から対策している俺にとっては大して相手にならないだろうが、実際に対戦してみないと分からないので何とも言えなかったりする。と思ったのだが、12月12日のタイトル戦で対戦相手に判定負けしたらしい。


翌年1月上旬に急きょ、引退試合として組んでほしいと相手側陣営から交渉を持ちかけられたとの事である。


引退後の事を考えて、ファイトマネーの割合を多めに頂たいとの事。


開催日時は4月4日となり、ここに勝つ事さえ出来れば、タイトル戦も組みやすくなると言う話だ。


当初の予定は3戦目でタイトル戦の予定だったが、2戦での可能性が出てきた為、相手側の条件を飲んだらしい。


ところで、俺は何をしているのかと言うと、

「よう、住坂か。今日はお前に会いたがってる人がいるから紹介しようと思って連れてきた」


4月3日の前日計量を終え、ホテルに着いて、車を降りたらホテル前に待機したニックがやってきた。


時刻は午後3時50分。


チェックインは先にしてくれるとの事だったので、現地の護衛を引き連れつつ話をする事にした。


ホテルの左側にあるフィットネスジムから人が出て、こちらにきた。

「君の話はニックから聞いてるよ。明日勝てれば多分、相手は私になると思うから挨拶に来た」


どうやら、去年12月のタイトル戦でチャンピオンを奪取した選手と言う事だ。


背丈はニックよりも少しだけ低い。肌は色白で顔のパーツが中央に寄ったような顔。容姿だけなら正直、ニックのほうがモテそうではある。今は上下ともに赤の服で統一されていて、人によっては目が痛くなるかもしれない。


「今、そこの中で色々使ってるから、今から入って会話しながら鍛えよう。ニックはもう帰っていいから、おつかれさま」


ニックは彼に一礼して去っていった。

と思ったが、どうやら信号を渡って、道路を挟んだ先の施設に入って行った。


彼はこの間に護衛の一人に川名さんを呼び、こちらに来させていた。


「ああ、フィットネスジム使うんだね。分かった、手続きしておくから午後7時までなら大丈夫だよ」

川名さんは施設に入り、受付に手続きをしてから、また出てきた。


「今、ガク君の施設利用の手続きしてきたから、そこの店員に挨拶してから入ってね。これで私は戻るけど、何かあったら、護衛の人達を頼ってね?」

川名さんは俺達に手を振ってからホテルの中へと戻って行った。


「じゃあ、行こうか。ランニングマシンで横に並びながら色々と話そう、聞いてみたい事もあるしね」


彼が俺を先導し、フィットネスジムに入る。

俺は店員に「毎回、ありがとうございます」と言って、握手と同時にチップを渡し、更衣室に入り、トレーニングウェアに着替えてから彼と合流する。


「しかし、チップの渡し方が自然だな。驚いたよ」

「初めて来る時の機内で、念入りにレクチャーされたんですよ」


彼は川名さんの入ったホテルを見て、

「ああ、beautiful Ninjaにですか。初めての試合からの動きはbeautifulじゃなかったけどね」

どうやら、海外初戦の失態を見ていたようである。


俺達は横並びになっている複数台のランニングマシンを2台使い、走り込みを行いながら、会話を始めた。


「そう言えば、自己紹介がまだだったね。私はジャック・ハート。ニックとは同じジムで練習している。さっきニックが入ったのはうちのジムだから、もし練習したい時はマネージャーと交渉してくれればいい」


「確か、アメリカのジムは経営者と運営者が違うと聞いているんですが?」

「あの二人に交渉してもらえば、問題ないだろう。それだけ、秘書と言う名の社長代理は実権を握っているからな」


音羽の根回しはかなりすごい物らしい。

川名さんが交渉すればいいところまで話が進んでいるようである。


「次の対戦はさすがに無理だが、階級上げてもらえば俺達には関係の無い話だからな」

「帰国したら、音羽社長に話をしてみます」


「それがいい。ああ、君の事は知っている。ガク・スミサカだろ、不要な会話はさせない……事はないが、私は知ってるから既に聞く必要の無い事だ」

ジャックがランニングのペースを上げた。


「明日勝って、あなたとの対戦を全力で向かいたいと思います」

俺もランニングのペースを上げる。


「私も負けるつもりはないから、お互い頑張っていこう。ついでにもう少しペースを上げて、体力づくりと行こう」


俺達は出来る範囲のハイペースでランニングマシン上を走り、終わる頃にはヘトヘトになっていた。


午後7時に終わってから、フィットネスジムを出て、ジャックと別れた。


この後はホテルに入って、川名さんを呼んでからチェックインし、食事を摂ってからベッドに寝る事になった。

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