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28/61

いよいよ、ミドル級日本タイトルマッチが開催される

前日計量もミドル級の下限ギリギリのウェイトで、展数さんとともにパスし、日本タイトルマッチに臨む事になった。


今日の会場は前試合の場所から手前にあるドーム型の会場で、本来は様々なイベントをやったり、ボクシングの試合においても、通常は世界タイトルマッチを実施する場所である。


日本タイトルマッチをメインとして使用するのは、現在においては異例の事となる。


今日も朝6時に起きて、走り込みからジム内での練習メニューは2セットこなし、今日は午後2時30分にTrulyOwnsの手配している車で会場へ行く。


イベントの関係者用に施設内駐車場の許可を取り付けているので、自社ビルの左側の駐車場から左折して、車を出す。


最初の信号で左折、さらにすぐの信号の大通り交差点で右折。さらにすぐの交差点を急角度の右折をして、やがて今日の試合会場が見え、手前左側に駐車場が見える。


駐車場に入り、1階が関係者専用となる。

一般客は地下1階になるが、ここで指定された場所に車を停めて、俺達は車から降りた。


同乗者が俺の荷物を一式持って、付近のエレベーターに乗り、駐車場1階出口の一つへと行く。外に出ると、付近に入場口がある。


正面は左側入口となっていて、ここは観客も使用する為、会場周辺の道まで歩き、左側に行く。


さらに歩くと、別の入り口が見えるので、こちらに入る。


会場に入ると、すぐ右側は関係者以外立ち入り禁止のバリケードが施されている為、関係者である俺は荷物を受け取ってから、すぐ近くにある控室へと入る。

俺を含む関係者専用の控室となる。


ここから反対側は赤コーナー選手の控室となり、同じく逆側がチャンピオンである展数さんを含めた関係者専用の控室となっている。


向こう正面に行くほど、第1試合の選手となって行き、俺とチャンピオンとは違って、複数選手の共用控室となる。


午後3時過ぎに着き、会場の観戦者は居ない為、現時点では空いているが、午後4時になると、観客の入場が可能な時間となる。


ここからは、観戦に来ている人達以外も周辺施設を利用する為、極めて混雑する事が予想されていて、俺達が会場に入った時間としては、割とギリギリな時間ではある。


第1試合の開始時間は午後6時となっており、それまではTrulyOwnsの関係者で構成された人達に飲食物の指定した物を買い出しに行ってもらい、戻ってきて軽い食事をすると言う流れである。


待ち時間中、試合開始前に周囲の選手達から奇異の目で見られる。


それは当然の話で、今日の試合スケジュールと言うのが、10回戦のノンタイトルが2試合、同じく東洋タイトルマッチが2試合、さらに直前の試合がスーパーフライ級の世界タイトルマッチが実施され、早い時間帯に終わった選手と関係者は速やかに会場を後にする。


そもそも、今日の大規模会場は昼から夕方までの時間帯でイベントを行う事がメインとなっている。


最後まで居てしまうと通常は午後11時で駐車場も使えなくなるし、周辺施設の値段もかなり高値の為、旅費だけでも相当な出費となってしまう。


今回の午後10時開始は異例中の異例と言っていい。


今日、使用している駐車場で使用時間外での利用を許可されているのは、会場の運営関係者と日本タイトルマッチの対戦関係者のみである。


おそらく、浜崎会長と音羽が相当に無茶な注文をやってのけたのだろう。

考えただけでも怖いが、味方として立っていてくれる事に感謝してもし切れないのは言うまでもない。


話を戻そう。


午後5時50分より第1試合の入場となり、午後6時に予定通り、試合開始となった。


時間が経つにつれ、試合も一つずつ終わって行き、やがて日本タイトルマッチの入場を待つ時間となった。


午後9時40分。係員から声がかかり、俺は近くの階段を降り、試合会場の中へと入る。


俺は青コーナーの入場の為、リングから南西の端に待機する。近くにはセコンド達も待機しており、後はリングアナウンスを待つばかりである。


一瞬、会場全体が暗くなる。

数秒でリング内だけ白い照明に満たされ、リングアナウンスが流れる。


「本日、メインイベント並びに各試合観戦ありがとうございます。いよいよ、最後の試合となります。それでは、両選手の入場です」


照明が会場全体を青で満たし、俺の入場アナウンスが流れる。


「はじめに青コーナーより、無敗の挑戦者、住坂雅玖選手の入場です」


照明が会場全体を再び暗くし、ビート音が流れる。5秒後、バス音が一つなると同時に、俺は両腕を上げ、力こぶを作った状態をキープし、3秒後にバス音がとともに照明が俺にスポットを浴びせ、ビートに合わせ2秒間シャドーをやってる姿を見せる。


音楽も流れると同時に、俺はファイティングポーズをとってから、リングへと歩いて行く。


再び照明が青くなり、周囲から歓声が上がる。同時に周囲からは実況と解説が色々とコメントを言っているが、気にしても仕方が無いのでスルーする。


俺はそのまま、青コーナーまで行き、セコンドに白いガウンを脱いで渡す。


例のごとく、ロープの中央を跨いで、リング内に入った。


再び、会場全体が暗くなり、数秒でリング内だけ白い照明に満たされ、リングアナウンスが再び流れる。


「続きまして、赤コーナーより、本日、引退試合となるグエッサー浜崎選手の入場です」


照明が会場全体を赤で満たし、音楽が流れる。

こちらは荘厳と思わせるような曲で、俺みたいなドラム音はまだ流れていない。


10秒後、リングから南東の端に白い照明が展数さんにスポットを浴びせる。

こちらはリングに向かって最敬礼を行った後、そのままリングへと歩いて行く。


入場の途中、歓声だったり、罵声だったりで良く分からない状態となっているが、展数さんも気にしないでリングまで行った。


こちらも羽織っていた真っ赤なガウンをセコンドに渡して、リングの中へと入った。


照明が会場全体を白一色にして、再びリングアナウンスが流れる。


「本日のメインイベント。JBO日本ミドル級タイトルマッチ、10ラウンドを行います」


「赤コーナー154.3パウンド、ミドル級日本チャンピオンとなってから早8年。

プロ戦績は戦績49戦43勝4敗2引き分け(33KO)。そして43勝のうち、33勝がノックアウト。


日本チャンピオンから結局、誰一人も黒星を付けられず、ここまで来てしまった。


連勝中に挑戦したノンタイトル戦。非公式戦でありながら、

元キックボクシングヘビー級世界王者にPFKBルールにて完勝。


さらにはICBO元ヘビー級世界王者のマジック・ダンソンにも5ラウンドKO勝利。


慎重すぎる性格が玉に傷、史上最強の世界王者。いや、日本王者だった。


この男、日本王者である。そんな彼に今日は最強の挑戦者が立ちはだかる。


本日、引退祝いとして、黒星をプレゼントされるかされないのか、それは誰に分からない。


満を持して登場した、日本カエルの世界を食らう者。


浜崎ボクシングジム所属、『確定必打のグラスファイター』グエッサー浜ァァ崎ィィ」


名前が呼ばれた瞬間、様々な声が反響しつつも10秒以上鳴りやまなかった。


展数さんの表情はとても、静かな物で感情を読み取れなかった。


次は俺の紹介アナウンスが流れる。


「青コーナー、同じく154.3パウンド、JBOミドル級ランキング5位。

プロ戦績は7戦7勝全てにおいて、KOまたはTKO。


ウェルター級4回戦デビューより、2階級も上げながら、誰も敗北を与えないどころか2ラウンドすらも許さない。


8回戦1勝のみは同ランキング1位から勝ち取った物。今夜、挑戦者としての権利を与えられ、千載一遇のチャンスを掴み、見事に日本の頂きに登る事が出来るのかが見物。


本日、黒星を与える者が居るとすれば彼以外には誰も居ないだろう。


住坂ボクシングジム所属、『鋼鉄広金生命体』住坂ー雅ァァ玖ゥゥ」


名前を呼ばれ、俺はファイティングポーズを取ると、一斉に歓声一色となった。


「ジャッジ高塚孝之助、同じく西野天地、同じく辰野隼太、レフェリーエアリー上田」

レフェリーは両コーナーを割るように一歩進み、対角のコーナー側に一礼する。


(あ、二戦目に対戦した時と同じレフェリーだな)

しかも、通名が変更されていた。レフェリーは進行を続ける。


次に両手を両選手に向けて広げ、各コーナーに静止する。


今度は俺たちを自身の近くを寄せ、グローブを確認し、試合の注意事項をひと通り説明する。


「日本ミドル級タイトルマッチ、JBOルールを守って、ベストを尽くし、悔いを残さないように頑張って、そして、お互いに全力を出し合って、以上」


JBOによる決まり文句に一言だけ付け加えられた。

おそらくは俺の事を覚えていてくれていたのだろう、嬉しい限りである。


レフェリーが両手を広げ、手のひらを上に受けて、両選手は各コーナーへと戻る。


俺はファイティングポーズを取って、試合へのスイッチを入れる。相手も同じ動きをしている。


「ラウンド、ワン」

次の瞬間、ゴングが鳴ると同時にレフェリーもそのまま両手を内側に付け、試合開始の合図となる。


俺はまず左ジャブを打つ、相手も右ジャブでパンチの位置に合わせ、返してきた。


(やっぱり、展数さんは全て見えてるんだな)


俺は構えを戻し、相手に対応する。


3秒後、今度は相手が左ジャブ、俺も右ジャブでパンチの位置を合わせて返す。


ここでわずかに歓声が上がる。


さらに2秒後、踏み込みのタイミングをずらして、右ジャブを放ってきた。


(あ、やば)

俺は対応出来ずにスウェーで何とか後ろに避けて、左のフック気味のジャブで攻撃を弾き、俺は右足を一歩下げて、苦し紛れの右ストレートで相手と距離を取った。


しかし、反動で後ろに転んでしまう。

俺はすぐに立ち上がり、レフェリーが再開を合図をする事なく、試合が続く。


「なあ、住坂が転ぶのって初めてじゃないか?」

「グエッサー、凄かったんだな」


観客の一部から声が漏れてきた。

俺は構えを直して、再び攻撃する。


相手もパンチの位置を合わせながら、応戦し、試合は膠着状態となる。


次に動きがあったのが、1分23秒。


展数さんが突然「青」とつぶやき、右足を踏み込みながらの左ボディストレートを放ってきた。


またもタイミングをずらされ、慌てつつも急いでサウスポーからのピボットターンしつつ左フックを繰り出した。


相手の顔面には当たったが、代償として腹直筋に当てられてしまう。


倒れる事は無かったが、ダメージはそれなりにある。

相手も顔面にパンチをくらい、一瞬だけ怯んだ。


「今度は攻撃が当たったぞ」

「カウンターも軽く入ったけどな」


またも観客から声が漏れてくる。


次の右ストレートは出せそうにも無かった為、バックステップした。


またもや、お互いにパンチを繰り出しつつも膠着状態になる。


さらに動きを見せたのが2分55秒。


オーソドックスに切り替えた瞬間、右ジャブを放ってきた。


直撃を回避出来そうに無い為、強引に右足を外へスライドさせながら、手なりでパンチを打った。


結果として、右フックのような動きになり、これが相手の左顎に当たる。


相手は一瞬ふらつくが、それまでだった。

このまま、1ラウンドが終わり、最初のインターバルとなる。


(タイミングをずらされてばかりだな、何か手を考えないと)

相手に当てた攻撃は、現状は偶然の産物ばかりである。

これをどうにかしない事には勝つ事は無い。


インターバルが終わり、2ラウンドに入る。


ゴングが鳴り、相変わらず打って打たれてのどちらとも言えない状態。


動きがあったのは1分9秒。


相手がおもむろに左ストレートを打ってきた。


俺は当然、両腕でガードしようとするが、一瞬だけグニャっとパンチが曲がったような気がした。


ガードをすると、押し付ける力が強く、俺はガードをしたまま2歩下がった。


相手はすかさず、前に踏み込んできたが、素早く右ジャブを打ち、これが相手の顔面をとらえた。


危機回避の流れでやった為、ダメージはそこまで無かったが、少しだけ躊躇した動きを見せた為、無意味ではなかった。


ここから、しばらく打ち合いになり、決定打もないまま、2ラウンドが終了する。


再び、インターバル。

(なんだったんだ?あのグニャっとしたパンチは)


途中でガードの上から違和感のあったストレート。

明らかに単調な一打を放った事に違和感を覚えつつ、3ラウンドに入る。


2分11秒。


サウスポーで左ストレートを打った瞬間。相手は右ストレートで応戦。俺は右足をピボットせずにつま先を後ろに滑らせて、左足を突っ立てながらの左ストレートを上手く押し込んだ。


相手は右頬に直撃し、攻撃を中断してバックステップをした。


また、膠着状態となり、そのまま3ラウンドが終了する。


インターバル中。


「もう3ラウンド持ってるぞ、グエッサー」

「グエッサーの言ってた対策出来てないの意味が何となく分かってきた」


どうやら、相手の評価が上らしい。観客から言えばの話だが。


インターバルが終わり、4ラウンドに入る。


動きがあったのが、1分43秒。


俺はサウスポーからの右ボディーブローを打ち、相手に左ジャブを打たせ、オーソドックスに切り替えながらの左ジャブを打つ。


相手はよろけるが、何を打ち返してくるか分からないので、後ろに一歩下がる。


「住坂、何か怖がってないか?」

「グエッサーより攻勢なのに、何でだろう」


俺も良く分からないが、まだまだ奥の手を残している気がする。


両者ともに体勢を立て直して、再び打ち合う。


次に動きがあったのは、2分57秒。


サウスポーの右ジャブ、左ジャブと繰り出す。相手はスウェーしてからの左ボディーを攻撃するが、こちらも左にピボットしながらの右ボディーブローで応戦。相手の左手にダメージを与え、そのまま4ラウンドが終了する。


インターバル中、相手を見ると、左グローブの付け根を少し痛がっている様子だ。どうやら、今のポイントにならないカウンターは上手く行ったらしい。


ゴングが鳴り、5ラウンドが始まる。


相手はすぐに雑な右ストレートを繰り出した為、右にピボットしようとしたら、顔への軌道を突然、ボディーに変更して、これが直撃してしまった。


俺は顔をしかめつつも、後ろにバックステップし、試合が続く。


次に動きがあったのが、37秒。


相手は右ストレートを打ってきた為、左ストレートでクロスカウンターをする。と見せかけて、左手を手前に引く動作をしながら、右へピポットし、腕を精いっぱい伸ばした右ボディーストレートを放った。


今度はしっかりと相手のボディーに直撃し、ダウンする。


レフェリーがカウントを取っていく。


「お、グエッサーがダウンしたぞ」

「これ、あるんじゃないか?」


勝負が決まったかのような観客の声が上がったが、カウント5で立ち上がり、試合は続行される。


(ダウンと言っても、そこまでダメージは受けてなさそうなんだよな)

相手を見る限りでは、弱っている様子も無く、深入りは厳禁である。


次に動いたのが、1分44秒。


今度は痛めていたはずの左で、拳を内側から若干外側への軌道を見せたアッパー気味のストレート。


俺は左腕を斜めにしながら前腕でガードすると、すかさず右ボディーブローで追撃してきた。


俺も負けじと、スウェーしながらの腕を伸ばし切った右ボディーストレートで返した。


相手には直撃したが、ダメージ自体はほとんどなく、再び膠着状態となった。


5ラウンドが終了し、インターバルに入る。


「さっきからパンチの軌道が上下左右に曲がって気持ち悪いんだが」

「もう、こうなってくると騙し合いを制した人が勝ちそうだよね」


観客にも高度な読み合いとなっている事が伝わっている。

(さて、本当にどうしたものか)

下手に踏み込むと、一発で沈められそうなので、雑に攻撃するのだけは避けたい。


考えてる内にインターバルが終了し、6ラウンドが始まる。


俺は試しに、オーソドックスで軸足を浅めにした状態で左ストレートを打つ。相手は少し内側をアッパー気味の右ジャブを返すので、顔を左に向けながら、右ボディーを打つ。と見せかけて、左足の踏み込みを深くしながら、出していた左ストレートを前へ全力で押し付ける。


相手は圧力に耐え切れず、リングの端まで吹っ飛ばされた。


観客が突然の光景に静寂に包まれるが、ダウンは取られない。

元からダウンを取る攻撃では無い為、俺も気にはしない。


相手は打撃から押し付ける力に変えた攻撃に対応できず、焦っているようだ。


スリップと扱われ、試合が続行する。


次に動きがあったのは2分1秒。


相手は俺の目を真っすぐ見ながら、死角を突いた左ボディーストレートを放つ。


当然、今の攻撃は見えないので、左手で上から下にパリイして、手なりの右アッパーを繰り出した。


相手には当たったが、ダウンするような攻撃でもない為、バックステップをとって、試合は続く。


このラウンドも終わり、インターバルに入る。


「最初のアレ、ダウン取らねえのか?」

「あれ、どう考えてもダウンだろ」

「レフェリー、最初の見てた?」


俺の押し付けたようなパンチに文句があるようだった。気にする事は無い。

(グニャっとしたパンチはどうやるのか分からないな)


気になっている事は、急に変な軌道を描いたパンチの事である。

俺も使ってみたいが出来ていない。


何とか、できるように考えてると、次のラウンドが始まった。


俺はもう一度、挑戦する為、オーソドックスから左ストレートを放った。


相手はすぐに対応し、がら空きになっている右側を左ジャブで攻撃したが、これは囮であり、本命は右のボディージャブ。


右足を後ろに踏み込んでから右グローブの外から当て、グローブの内側にずらすように右回しにして、ねじ込んだ。


今度はやりたい事が成功し、相手はまともにダウンした。


レフェリーがカウントを取る。しかし、対処法が最初から分かっているように片膝をつき、体を大きく右側に傾け、思い切り息を吐く。次に右グローブで3回強めに叩いて、復帰し、レフェリーに向かってファイティングポーズを取った。


レフェリーは瞳孔なども確認したが、問題ないと判断し、「Box」と言って、試合を続行する。


すると、なぜか展数さんは右側の口角を上げ、一瞬笑ってみせた。


(どちらの意味か全く読めない)

ダメージアピールなのか、ダメージが小さいのか本当に分からない。


他の選手であれば、ダメージアピールと受け取って、ラッシュをかけるんだが、危険を感じ、大きくバックステップした。


「なんでダウンを2つ奪ってる側が後ろに下がってるんだ?」

「奥の手があるかもと警戒してるんでしょ、単純に」

「でも、奥の手って何?」


相手に対して、何かしらの危険を予測してるらしいが、俺には関係ない。


と思ったら、相手はすばらく前進して脇を締めながらの左ストレートを打ってきた。


俺は軽くスウェーをして、後ろに回避するが、これがまずかった。


そのまま踏み込みを深めると同時に腕を伸ばしてきて、これが俺の顔面に直撃する。


と言っても、ダメージはほとんどないが、それで左膝をついてしまい、ダウンを取られた。


俺はすぐにファイティングポーズを取り、カウントがされない内に試合再開となる。


「なんだ?住坂はダウン取りやがったぞ」

「あー、上手く合ってしまったな」

「ダメージは少ないようだけどね」


とにかく、これも作戦を立てながらやらないといけない。


俺はオーソドックスで右ジャブ、左の大振りフックを繰り出し、相手の出方を見る。


相手はすかさず、がら空きになった顔面右側に左ストレートを放った。


俺は顔を連動させるように脇を外した右フックを放った。


これが正解。相手はまともに顔面の左側と顎に打撃をもらい、今度はきちんとダウンした。


レフェリーがカウントを取る。


何とか立ち上がろうとするが、顎へのダメージが大きく、腕で立ち上がろうとする動きしか出来なかった。


カウント「10」が宣言され、ここで試合は終了となり、リングアナウンスが流れる。


「只今のノックアウトをお知らせいたします。7ラウンド49秒。7ラウンド49秒。勝者、青コーナー、住坂雅ー玖ー」


何とか勝利する事ができた。

最後に放った一撃はロシアンフック。


佐藤さんが得意としている技である。

人の技で勝てた事を思うと、改めて一人では何も出来ないと思ってしまった。


そんな俺をよそに、レフェリーは勝ち名乗りをし、俺の右手をあげて、四方にアピールさせている。


いつの間にリングに上がっていたコミッショナーが俺の腰にベルトを着ける。


俺は赤コーナーに向かって、浜崎ジムの関係者に向かって一礼をする。


そして、ベルトを着けたまま、ベルト授与者とJBOトップの3人が横並びになり記念撮影が開始する。


しばらくして、記念撮影が終わり、周囲のリング外に居た係員に促され、俺はリングを降り、試合会場エリアを出ていく。

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