親しい間柄がジョーカーだった
(あの一家をどうにかしない事にはまた、同じ問題が発生しそうだが)
昔の事を思い出し、どうにもならない現実に落ち込んでいたら、ある事を思いついた。
「あ、今。俺には音羽が居るからどうにかなるかもしれない」
「ん?ガク君、どうしたの?」
「あ、悪い。こっちの事だ」
今日に言葉にした為、アカに不思議がられた。
俺は構わずに意を決して、
「音羽、聞こえるか?俺なんだが、折り入って大事な頼みがある」
音だけしか聞こえない鏡のようなフレームに話をかけてみた。
「構わないが、何の用だ?」
聞いていたらしい。どこから聞いていたのかは不明だが、好都合である。
「実は昔、住坂ボクシングジムが一方的に取り潰しされそうになった事があるんだが、今もそれは解決してはいない」
「分かった、とにかく、映像に切り替えてくれ」
音羽は音声から映像モードに切り替えるように指示した。
俺は中央の丸いボタンを押した。音羽が映像越しにこちらを見ている。
「それで、知念一族の力を借りれば、その脅威を取り除けると思って、相談しようとしてるが、すまない」
今からしようとする相談が文字通り、お家同士の争いに利用しようとしてるので、先に謝っておく。
「何となくだが、把握している。住坂ジムが長平の妻と名乗った者からの冤罪騒動、その関係者の内、声を発した者を優先的に冤罪によって法的制裁を与える」
音羽はここで、左手を少しだけ力を入れてから話を続ける。
「そこから再起しそうな者が出てくれば、再度制裁を与え、二度と世に出てこないように蓋をする。それが七見信重法務大臣による手回しで、支配下にいる政治家を使っての悪質な犯罪行為。まだ言おうか?」
想像していたよりも色々出てきた。続きがありそうなので、聞く事にした。
「お願いします。後、どうしてそんなに知っているんですか?」
「ああ、それは七海法務大臣絡みの件について、お祖父様がご立腹されていてな。普段から色々と聞かされている。ガクの弱かった時の事も把握している」
音羽は一度、咳払いをする。
「話が逸れたな。こちらとしても、既に全体の5割ほど準備を終えている。準備が終えていると言っても、後は相手の行動待ちになり、準備自体は実質完了していると言ったほうがいいな」
(俺の弱い頃、音羽はいつから知っていたんだろうか)
俺が音羽に認識された時が気になっていると、
「まあ、慌てるな。ガクとの出会いの話はいつかはする。今日は後回しだ」
それどころではないらしい。音羽を先ほどの話を続ける。
「それと、今の話は相手にも盗聴されている。今頃、大慌てで消しに来ようと必死になっている事だろうな」
音羽は不敵な笑みを浮かべる。
相手の動きを分かった上で、わざと俺達との会話を聞かせているらしい。
「さて、そろそろ尻尾を出しそうだがな」
真顔になり、何かを待っている様子の音羽。
すると、低い男の声が響いてきた。
「知念会長宅の敷地内に侵入した人物を2名捕捉しました。後、自害できないように動物用の麻酔薬を投与しています」
「ご苦労。後は各地で隠し撮りをしている連中の動画を元に七見法務大臣を取り調べすればいい」
男からの連絡が終わり、通信が切れる。
音羽はまた、俺達も見る形になる。
「逮捕する。と言う事でしょうか?」
俺は思わず、結論を急ぎそうになるが、音羽は顔色一つ変えない。
「いや、逮捕などしたらあちらの思うツボだ。今まで多方面に悪行を重ねていたようだからな。愚かな事に海外でも同様の事を行っていたようだな」
「それでは、近い内に問題は解決する。と言う事ですか?」
音羽はため息をついて、前のめりな俺を落ち着かせる。
「まあ、そうだな。ではあるが、雅玖。今日はもう、宿題は中止にして、会長にしばらく騒ぎになる事を話に行ってくれ」
用件を伝えてから、退室するように言われる。
「分かりました。長平さんと佐藤さんにも伝えるので、今から行ってきます」
俺は部屋から出て行った。
部屋から出ると、アカと桃山はしばらく沈黙する。
音羽は沈黙を破るように、
「すまない。一般人にするべきではない話を延々と続けてしまって」
二人に謝り、会話をしやすいように促す。
アカは困りつつも、なるべく平静を装い、
「いえ、私はいいんですよ。あの裁判の時も結構特殊でしたし、あれはひょっとしてわざと吹っ掛けた案件ですか?」
「あの裁判も七見家に対しての餌でな。丸岩弁護士もすぐに意図に気付いた様子だったぞ?ガクのご両親が単純だったおかげもあるのだが」
「あの時、ジムを相手に裁判起こされて、凄く怒ってました」
「だろうな、何も悪事を働いてもいないのに裁判を起こされたのだから」
「僕はあの時のお母さん、結構怖かったんですよね。急に名前を聞いたらやる気になったところが」
「まあ、知念家に勝訴すれば、名は確実に上がるからな。七見の者達はあの時の結果に油断したからこそ、今日の件につながったのだろうな」
二人の続く話に桃山は困った顔になりながら、
「えっと、それで狙いはなんだったんですか?」
「簡単だ。一つは不用意に裁判を起こし知念家が取るに足らない一族と言う事を印象付ける。二つ目は住坂ボクシングジムを潰す為の仲間と勘違いして、七見家からの政治的圧力を緩めさせる。最後は自身の脅威になる障害物としての知念家に牙を向けさせて、これを殲滅して行く。先ほどのやり取りがその一歩だな」
音羽は今までにやってきた事に対しての意図を説明した。
アカはここまで音羽の言葉を聞いて、少し考えこみ、
「この会話、聞かれて大丈夫ですか?」
音羽は特に様子を変える事なく答える。
「いや、問題無い。先ほども説明したが、この内容と言うのは引き渡しをする国に対しての物だ。日本に対しての物ではない。これはあまりやりたくはないが、これで政府関係者が誤魔化す物なら、引き渡した国から映像と日時記録などを世界中に流して、日本を貶める事になるので、結果として従うしかないようにする為だ」
さらに彼女は目つきを鋭くして、言葉を続ける。
「自身の欲望の為だけに、確実に国際問題へ発展するような事をやる愚か者は居ないだろう。これ以上の悪事を働かせない為の予防線を行ったまでだが、その国に先日確認した限りでは、ここから問題を起こせばすぐに映像を流す準備を常にしているとの事だ」
何だか、とんでもない事を口にした。
アカはある事が気になって、音羽に聞く。
「でもこれって、結局は知念家の欲望に沿った行動では?」
「それは違うな。人と言う生き物はある程度の良心を持って行動しないと、修復できないほどの痛手を負わせる事もある。と言う意思を伝える事は必要だ」
彼女は特に怒る様子もなく、淡々と答えた。
アカと桃山があまりの重い話に困っていると、
「それよりも、大丈夫なのか?この話、予定していない2人に聞かれているが」
音羽自身が予想外だと言う含んだ事を言ってきた。
「え、二人って……」
「君達を保護してる内の残り二人と言う事だ」
音羽が窓の外を見るように目で遠くを見た。
すると、数十秒後に部屋のドアが開いて、そこに立っていたのは中山と鳰入だった。
「透乃が部屋に入ってからの会話、全部聞いてたぞ」
「予想を簡単に超える内容でビックリした」
二人から各々の感想が返ってくる。
そして、中山は桃山に対して質問する。
「ガクが途中、透子とつぶやいてるようだったけど、あれ、透乃の事だろ?」
桃山は質問に対して、図星としか思えないような目の泳がせ方をしていた。
「そして、一番分かりやすいのはアカ君だったかな。昔からの知り合いにしか見えなかったし」
アカは桃山の顔を一度見てから、逆へ向き、目を泳がせていた。
「それにしても、見事だな。彼女の髪留めに盗聴器と盗撮器をさりげなく仕込んだ事については」
アカはすぐに桃山のツインテールの根本を確認した。
一見分かりづらいが、小さく光っていたところから盗聴器と盗撮器が片側づつ、アクセサリーのように付けられていた。
「普段なら、周りを警戒してるから無理だけど、今日はこちらまで気を配れない様子だったから」
鳰入が付けた時の様子を説明する。
中山も桃山が出る時の補足をし、
「二人を連れて引っ越しする時と比べて、顔が動いたからな。あんなに迂闊な透乃を見るのは初めてだな」
普段とは違う何かを薄々感じていたようである。
音羽は改めてため息をつき、
「だがいいのか?この事に首を突っ込むと言うのは、知念家と秘密を共有する事を意味するのだぞ?」
二人に警告をした。
しかし、二人とも覚悟が決まっている様子で、
「少し前に助けてもらいましたし、それに。今までの話からすると、俺はガクから透乃を取り上げたと言う事にもなるんですよ?」
中山は本来の今あるべき姿を音羽に告げた。
この言葉を聞いた、桃山は急に不機嫌な顔をなる。
「こう言うだろうと思ってたか黙ってたのに」
「双冶、今の言葉はダメ。さらに言うと、ガク君も傷つくかもしれないから絶対にやめてね」
鳰入も中山の言葉に、厳しめの注意をする。
音羽はこの場を放置すると収拾が付かなくなる事を考え、
「ともかくだ。もうすぐ雅玖が戻ってくるはずだから、今後の取るべき行動はその時に言う」
とりあえず、色々な思いを話すのを止める事にした。
3分後。
また、部屋のドアが開いた。今度は雅玖であった。
「雅玖、詳細までは把握し切れてないから、補足の説明を頼む」
音羽が俺に説明を促す。
「長平さんと親父に事の全容を説明したら『とりあえず、夏休みが終わるまでは自宅から出るな』と言われました」
俺の言葉に音羽は少しだけ考え込む。
「まるで籠城戦だな。実は雅玖が部屋を出てからジムに着くまでの時間を使い、会長にはそれとなく伝えた。そこで色々と考えてから雅玖に伝えてからそちらによこす。と言う事だったな」
どうやら、俺がジムに移動した間に話をつけてくれていたらしい。
「これからの話だが、今月末まで、住坂ジムには会長、長平、与野、佐藤が。君の家には雅玖とお母様、丸岩君と君達3人も含める。以上が夏休みが終わるまでの各々の滞在場所となる。関係者各位には、既に連絡を入れているから、何も心配は要らない。」
月末までは俺達の建物外への行動は禁止となったらしい。
さらに音羽は補足として、
「雅玖、君は9月に入るまでは練習も禁止となったから、ここは諦めて、夏休みの宿題を全て終わらせてくれ。君達も雅玖に協力するようにしてくれ」
どうやら、練習禁止令も出てしまった。
音羽の伝えた内容に対して、アカがいくつか質問をする。
「双冶君達の今の住居の扱いはどうしますか?あと、ここの部屋割りはどうしますか?」
音羽は少し考えつつも、
「隣の家屋については、知念グループで雇っている護衛部隊などに管理を任せる。部屋割りについては、雅玖に聞いてくれ」
これまで入念に下準備をしていた事がうかがえる答えが返ってきた。
アカは音羽にお礼を言って、映像を切るように促す。
「ありがとうございます。部屋割りがこちらで決めるので、知念社長はその悪人のかたまりを一人残らず誅罰してください」
音羽は映像を切るのを一旦やめ、アカに諭す。
「言葉が過激だな。これから行う事については間違いないのだが、自らの発した言葉によって、自身の行動も過激になる。今後は慎むようにな」
アカも少しだけ落ち着いて、頭に血がのぼっていた事を謝る。
「いえ、私も少し熱くなっていました。今後は気を付けます」
「今は大人しく、朗報を待っていてくれ。私は今からやる事が多いのでな。失礼させてもらう。ではな」
音羽は右手の指を揃えて顔近くまで上げ、俺たちに対する挨拶代わりとして、映像を切った。
この後、俺は部屋割りの案を思いつかなかった為、それまではみんなで俺の部屋に寝泊まりする事になった。
現在、時刻は丁度12時となり、お袋から人数分の食事をもらって、みんなで食べる。
そこから夕方まで、俺の宿題を中心にほとんど教えてもらう状態になっていた。
途中、音羽から中山に渡された課題の見せてもらったが、これは本当に何を書いているか不明であった。
それでも、中山はどうにか少しずつ空欄を埋めていたらしい。桃山から聞いた感じでは少なくとも俺の何倍も頑張っていると言う事だった。
夕方になり、俺達の宿題や勉強の時間が終わり、やる事も特にない為、今日の夕食は居間で食べる事になった。
お袋がいつも食事をしている場所は、1階玄関を入り、右側の奥の突きあたりにある部屋だ。調理場と一体になっているDKタイプとなっている。後はお袋と親父の部屋が1つずつあって、2階は洗面所以外は俺の部屋だけである。
現在、居間の中央に配置されているテーブルには俺専用の食事と他の人達が食べる為の食事が配置されている。
椅子もすれずれ各方向に2個ずつ置けるほどの広さで、中山を角で挟めるように桃山と鳰入、俺とアカが台所から左側の席に並んで座った。お袋は台所を背にした椅子に座る。
「今日は賑やかな食卓になるわね」
お袋の第一声。と言うのも、俺は大体、ジム内で食べるか自宅でも必要最低限を食卓で食べるかだけなので、親父とともに食べる機会すらない。
俺は別にいいが、お袋は毎日寂しい思いをしているようである。
時々、夫婦で一緒に食べる事もあるので、そこまで寂しいと言う事はないとお袋は言っているが、実際はどうか分からない。
お袋の料理が美味しいのか、みんな食べ終わるまで、一切口を開かなかった。
しばらくして、料理を全て完食した俺達は、
「「「ごちそうさまでした」」」
同時に手を合わせて、お袋に笑顔で伝えた。
お袋も笑顔になり、
「ガクだけだと、鶏肉とオレンジジュースしか食べないから、作り甲斐があるわ」
新しい家族が出来たみたいに喜んでくれた。
そして、まず桃山が話しかけ、
「ガック、いつも食事制限してるの?それでよく、お腹がすかないね」
傍から見ると、ダイエットメニューにしか見えないようだ。
「普段から空腹と戦い続けないと、佐藤さんみたいに苦しむ事になるから気を付けてるだけだ」
俺は佐藤さんを例にして答えると、アカ達は一斉に目をそらした。
アカがポケットに入れていたスマホに軽く手を添えた。それを見た3人も例の動画を知っているらしく、顔が引きつっているようだ。
「まあ、隠し撮りしている人達の動画は、広告収入の50%を内のジムに割り振ってくれるから、実質許可済みの動画撮影とも言えるんだが」
俺は隠し撮り後の収入の流れについて、軽く答える。
「それを許してる時点で太っ腹だね、普通は肖像権で訴訟を起こすはずだし」
鳰入が通常の流れがどうなるかを俺への言葉に返した。
「佐藤さん自身が許してるのもあるけど、住坂ジムにとっては大きな収入源にもなるから、雑には扱えないし、今まで不利益な情報を漏らすような真似も確認できなかったから問題ないと思うぞ」
「へえ、でもジムに収入の一部が行くのって、もうジム公認なんじゃない?」
俺の説明に桃山が質問をしてきた。
「半公認と言ったところだな。面白おかしくしてるだけに見えるし、あの騒動でマイナスになる事ばかりで、デメリットがほとんどゼロと言う事も大きいんだ」
以前の練習生が何十人も来ていた事を思い出し、俺は遠い目をする。
「つまり、隠し撮り勢が副収入を生み出して、ジムに提供してると言う事?」
鳰入が気になった事を聞いてみる。
俺はしみじみとしながら、鳰入の質問に答える。
「そうだな、七見一族の暴挙に耐えて来られたのも、半分は隠し撮りしていた人達のおかげと言える。通常とは違う追加収入のおかげで、このジムが生き永らえたと言ってもいい」
中山は神妙な面持ちとなり、
「これが解決すれば、俺達は全員。七見一族の理不尽な脅威もなくなると言う事か。今月末までは耐えるしかないな」
「ああ、音羽たちの成功を祈って、今はその時を身を守りながら待つだけだ」
俺は七見と言う単語を聞いて、顔が眉間にしわを寄せて言った。
ここで、決め事を思い出し、
「部屋の割り振りなんだが、中山と桃山、鳰入は俺の部屋で寝ていいぞ?」
「ガックの気持ちは嬉しいけど、本当にいいの?」
桃山は俺に気を遣おうとする。だが、俺の提案は他にも理由があって、
「正直、中山が生殺しなのはかわいそう。と言うのはあるが、それ以外にあの部屋は音羽の監視内だから、最も安全な部屋として使える。だから、3人であの部屋を使ってくれると俺としては助かるのが理由だ」
俺は続いて、補足の説明に入る。
「俺の部屋の窓の右側の押し入れにはティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品が入ってる。窓の左側の押し入れは布団や俺の使っているベッドのベッド幅を拡大する為の補助道具などが入っているから、必要な時は使ってくれ。後、朝は諸々の片付けは絶対にする事。これが俺の部屋を使わせる条件だな」
3人は俺に申し訳なさそうな態度でこちらを見た。
アカは当然、部屋割りを言ってない為、
「僕たちの寝床はどこになるの?」
「俺とアカは親父の部屋を使って、布団を敷いて寝る事になる。これで、部屋割りは終わりだ」
俺は全員分の指示を終える。
ここから、みんなで食器類を片付けてから、俺達は各々の部屋へと入っていった。
少ししてから、風呂を桃山と鳰入に使わせる。次にお袋が使う。次はアカと俺だが、アカ、俺の順に入り、シャワーだけを使って、風呂場から出る。
今日から俺とアカは親父の部屋で寝る事になり、押し入れと向かい合うようにアカと横並びになるよう、布団を敷いていった。
俺達は寝床につき、眠るまでの間、話す事にしたのだが、ふと、俺達がまだ、小学校低学年の時は二人で俺の部屋に泊まり、他愛のない話をしながら寝ていたのを思い出した。
「こうやってアカと寝泊りするのって、本当に久しぶりだよな」
「あの事件以降、ガク君は狂ったように練習ばかりしてたからね、しょうがないよ」
アカは当時の騒動を覚えていて、今も忘れられないらしい。
俺もその事件がきっかけで、大半の記憶を失った。今、ジムに居る長平さんや佐藤さん達の事は覚えている。いや、普段から居るから新しく関係を構築していると言ったほうが正しいだろうか。
あの騒動で、ジムから離れた人達の事は一切覚えていない。
透子。いや、透乃の事を思い出したのも今日の事だが、あの時にジムで親父に透乃の事を話すといきなり、拳骨をして激怒されてしまった。
「透乃のお嬢ちゃんを悲しませる事をしてんじゃねえ」と言う事だった。
その時に透子が桃山と同一人物だと言う事が初めて分かったのである。
「桃山さん、今まで良くガク君に素性明かさずに我慢できたよね」
アカは高校に入り、再開してた時点で彼女の事は分かっていて、俺に悟られないように話をしていたらしい。
「ああ、そうだな。俺が覚えてなくても、嫌な顔を一つもしないで、よく笑顔で会話できたよな」
俺は桃山の事を改めて考えると、暗い気持ちになってしまう。
「そんなに落ち込むのは桃山さんの前ではやめたほうがいいと思う。彼女もきっと、望んでいないだろうしね」
アカはなるべく悟られないようにするべきだと俺を諭す。
「もう寝るか、余計な事を色々考えても仕方ない」
「そうだね、夜更かしは体に毒だから。僕も寝る事にするよ。おやすみ、ガク君」
「ああ、おやすみ」
今後の事を少し、考えながら寝る事にしていたが、数秒ほどで寝ていたらしい。
今日は色々な疲れが重なったのだろう。




