女騎士には…エロ装備を? (挿絵)
「ブヒヒーン! ブルッ ブルッ!」
改めて皆が、招かざる珍客を見やる。
ソルは、馬など馬車を引くずんぐりとした馬か、もしくは、滅多に見る事しかないが、騎士などが乗る馬くらいしか見た事が無かった。目の前に現れた黒馬は、美しく大きかった。今までの馬とは、まるで違う生き物に見える。馬に乗ってきた主も周りに見当たらない。
恐る恐る近づいてその鼻ずらを撫でてみる事にした。
「カプッ」いきなり肘まで咥えられてしまった。まじかで、ギンと鋭い眼差しが光る。
「うひ~っ」ソルは、慌てて涎塗れの腕を引き抜いて後ずさる。
「ダメ! ダメ! お馬さんは怖がっちゃ駄目なんだよ。 乗る人の気持ちを読むと言うよ。ソル兄、此処はあたしが、お手本をっと。」
小春が、小さな体で馬の前に立ちはだかる。ふんすっ!と鼻息荒く腕組をすると黒馬を睨みつけた。
黒馬も、なんだこのチビと言わんばかりに、仁王立ちする小春を睨みつける。
重たい沈黙と立ち上がる一人と一頭のオーラがその間でバチバチと火花を散らした。
「ズーン、 ズバアアーアー」いきなり立ち伸ぼるオーラと共に、黒馬の額から黒光りする一本の角がのびる。
小春の出方を伺うように威嚇する。
「ブアッサー」その背中からは、漆黒の翼が皆を覆い隠すほどに大きく広がった。辺りには、翼から飛び散った羽が舞う。
「ムッ! 魔物か! 皆さがれ!! こんな魔物にイザークは乗っていたというのか?」
ガルフは。黒馬と小春たちの間に割って入ろうとする。小春は、手を上げると笑ってそれを拒むと、また黒馬に向き合った。
周りの闇に溶け込むかのような黒い馬体に広がる翼。その瞳だけが爛々と輝き「どうだ」とばかりに、小春を覗き込むように見下ろした。周囲を異様な空気が包み込む。まるで、皆を魔界にでも誘う悪魔の使途でも現れたかのような様相を見せる。
「ユニコーン! 黒いユニコーン」エレナが声をあげる。長命種族のエルフに伝わるおとぎ話を思い出す。「天界を追われた邪神ロキ、追われた際に邪神を乗せて地上に降りたった黒馬ユニコーン」黒いユニコーンはその伝説を思い起こさせた。
小春は、全く物怖じすることなく言葉を紡ぐ。
「フン! 冒険にはこの程度の演出あってトーゼン! 黒のユニコーンよ! 我は天空の聖女小春。 我に集う者の末席を与える。我の眷属となれ。我の足となり働くをお前の喜びとするがいい」
その邪悪な存在に言いたいように言ってのける小春。
「ドン」と小春の背後にオーラが立ち昇ると、その中に甲冑を着た巨人の女の姿が幻のように現れた。しばらくの間、睨みあいが続いた後、角が縮み広げられた翼がシュルシュルと消えていった。黒馬は、醸し出していた強者のオーラをすっかりと消し、前足を折りたたんで、小春の前へと座り込んでしまった。
「ブルルルッ」小春が勝ち誇ったように笑顔でその背に乗る。
(フンっ! 勝った)
「フォッ フォッ フォッ 分かればいいんだよ。お馬ちゃん! 分かれば」
目を見張る皆の視線を集めて、馬の背中で勝ち誇ったようにWピースサインでドヤ顔をして見せる小春。
黒馬は、人が見ても分かるくらいにイヤーな顔をすると、首を小春の方に向け、その襟首を咥えて「ひょい」と地面に下ろしてしまった。
「アッハハハッ どうやら敵対はしないものの小春殿に屈するのは嫌なようだの」ガルフが、その様子を見て笑う。
「え~、あたしの家来じゃないの~。 誰かのってみなよー。精霊使いのエレナ姉さん、いってみよ~」
「え~っ 私は、森を歩きなれているから、乗らなくてもいいんだけれど……」
しぶしぶ、エレナが近づく。黒馬は、スレンダーなエレナを一瞥したものの全く無関心でエレナが乗っても立ち上がりもしない。
オルスタインも何事かを感じる様に無表情だ。(ちがう。おしいが此れは違う)
「まるで置物? 無視なんだけど…………」
小春は、「ぎろり」ともう一人の女を見る。
「えっ! わたしっ……ムリ、ムリ、ムリ、ムリこんな魔物みたいな馬」
ローズは手を振って尻込みする。
「つーぎ! 巨乳騎士!」
「やめよ! その呼び名。……えーい、私も武勇の名門と謳われたエアハルトの騎士。ユニコーンとて馬は馬! 一頭くらい乗りこなして見せるわ!」
ローズが恐る恐る近づく。黒馬の目が「クワッ」と見開かれると、ローズの全身をまるで嘗め回す様に見回した。
「ブハッ!」「フンッフンッフンッ!」(乗れっ またがってみろ)
白い鼻息があがる。
「い…いやっ! なんか別の意味でいやっ!」顔を逸らして、横目でじっと見る馬にいやいやながら跨った。鐙に足を入れ、手綱を軽く引く。
それまで、置物のように動かなかった馬が、すっくと立ちあがると、
「ヒヒ—ン!」(すんばらしーっ)とイナナキの後に勢いよく走り出した。
「ぎぃいや~っ」ローズの叫びと裏腹に、月明りの街道を、馬は喜びの気持ちも露わに軽快に走る。
「ブアッサッ!」大きな黒い羽根を広げると、夜空へと舞い上がっていく。
「うわーっ だれか~ おっおろして~」月明りの空にローザの悲鳴が高らかに響き渡った。
満足したのか黒馬は、月の光を一瞬大きな翼で遮ると、また小春たちの元へと舞い戻ってきた。
「はあ~はあ~ ゼイ ゼイ」その背中から、荒い息のローザが崩れ落ちる様にして降りてくる。
ガルフが、そんな姿をからかう。「オオッ 此の邪神の使途の如きユニコーンを手懐け、乗りこなすとは、さすが武勇の名門エアハルトの騎士であるな! ローザ殿 ふふ」
ローザは、キッとガルフを睨みつけると、
「クッ! オオヨ! 私の手綱さばきにかかれば、この程度の馬などこのようなものよ。ははっ はははははは……グエッップ」
ローザは、言うだけ言うと船酔いでもしたかのように、地面に屈みこむとゲロゲロと吐いてしまった。
黒馬は、気に入った(背中に当たる尻の感触)主人を見つけたと、しきりにその顔をなめまわし、すっかりと懐いてしまった。
女騎士と黒馬のそんな光景を見ていた小春に、悪い笑顔が浮かぶ。
「うんっ いいよ! いいよ~。巨乳騎士とユニコーン。絵になる組み合わせだよ。雄々しい黒馬に、巨乳騎士なんて世の男たちのエロ目線を独り締めしそうだよ。折角だから、巨乳騎士ローザにも私(天空の魔女小春)の恩恵を与えよう。ニヒヒヒヒッ」
小春は、ローザと黒馬の前に進み出るとおもむろに片手を空に突きあげる。
なぜか何処からともなく円錐上に小春にスポットライトが下りてきた。
(うん! いい演出だね!)
「蒸着! メタルフォーゼ! アクトⅡ!」
大気がピンクの渦を巻き、小春を取り囲んでいく。眩しいい光が収まると、其処にはアニメの魔女っ娘のチープな衣装の小春の姿が現れた。
「我の足元に集う一塊の騎士、ローズ・エアハルトよ。此の世界に神がいないというのならこの我こそが、お前の神だ! 天空の魔女小春の名において『メタルフォーゼ』の恩恵を与える。我に仕え、我の進む道をその馬と共に歩むことを許そう」
ローザが困った顔で、いやいやと遠慮しますと小さく手を振る。黒馬もブルルとかぶりを振る。小春は、構わずに玩具売り場で仕入れたような魔女っ娘の杖を振る。ピンクの粉がローザと黒馬に降りかかった。淡い光の大気がローザを包み込み、渦を巻いていく。
黒馬は、ブルルルッと首を一振りすると其の粉と大気を振り払ってしまった。
ローザを包んでいた光が地面に吸い込まれていく。
其処には、肘までの手甲、エリの立った肩パッド、胸当てとミスリルの白銀が輝く。へそは丸出しで臀部を僅かに隠すスカートにミスリルが縫い付けられている太腿はあらわに白銀に輝くニーパットが絶対領域を強調するかのように膝上まで伸びて足を守っている。その上に深紅のショートマントを羽織った姿で現れた。
そのローザの手元に天空から螺旋を描いてゆっくりと采配が落ちてくる。
60cmほどのミスリルの杖に先端には親指大の金剛石が埋まり、煌めく白い房が風になびいている。
「いやーっ! なにこの恰好、露出がひどいわ。みっ見ないで~!」
溢れそうな胸元も下からミスリルの胸当てが押し上げ、なお更に強調する。
露出したムチムチした太腿をしめて腕をクロスさせると露わな太腿を隠そうと必死だ。
其処で小春が、「いやいや、このビキニアーマーと言えば、女騎士のトレンドだよ! ローザお姉さん。最先端の戦ファッションだよ。 誰もがそのりりしさ、ローザお姉さんの美しさにくぎ付けだよ。」
「そ、そおお~? ほんとに~?」男の目線をことさら意識するローザは、その言葉に反応する。
「それにその防具、露出の部分も含めて強力な私の加護で守られているからどんな攻撃も跳ね返しちゃうんだよ~。すんごいんだから」
「それにね、そういうファッションは恥ずかしがっちゃ駄目なんだよ。猫背に丸まっては貧相になるから、バーンと胸を張って勇ましさを見せつけてよね。よっ! カッコイイヨ! ローザ・エアハルト! 武勇の名門復活だーっ」
小春が煽てまくる。
ローザが、しげしげと装着した防具をみる。美しいと煽てられて、美しさに自己顕示欲も強いローザ、満更でもなくなってきた。
「それに、その采配。その馬さんに言う事聞いてもらえるように出来るから。馬の上でそれを、振りながら命令してね。 あっ、それから忘れてた。 これもついでにあげるヨ」
そう言うと、何処からともなく細い白銀の一本のサーベルを取り出すとローザに手渡す。
ローザは、受け取ると不思議なものでも見る様に「すらり」抜いてみた。
月光に輝き美しい輝きを見せるミスリルの細い剣。
アダマンタイトほどの希少金属ではないが、加工も難しく切れ味に優れたミスリルは、武具にするには高価なものとなる。貧乏貴族のローザには、手の出ない希少な業物に見えた。
「!! すごいミスリルだわ。 こんな高価な剣。…………美しい…………」金持ちの家の子供が収納袋ごと持ち出した家出少女だろうかと、いぶかいながらも、くれるというのなら貰っておこうと腰に差す。
ローザは、怪しみながらもその采配を持ち、黒馬に跨った。
その瞬間、黒馬の目が見開かれる。ローザの露出の多い太腿と薄い布地の臀部が馬の背中にダイレクトにその感触を伝えてくる。
「ブヒヒヒーン!」(小娘! やるではないか! 見直したぞ!)
オルスタインの眼が、小春に「グッジョブ!」と親指を立てている。
離れたところで、其れを並んで見ていたソルと隼人も二人並んで親指を立てた。別のモノも立てた。
「「グッジョブ! はるちゃん」」
気を取り直したローザが、黒馬の右手に采配を振るう。「進め!」
ガルフが、ローザに声をかける。「オルスタインだ。馬の名はオルスタインと呼ばれていた」
「よしっ進め! オルスタイン」その采配の前方に金剛石からニンジンの映像が映し出された。
「ブヒヒヒーン!」




