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がんばれー…ガルちゃん! (挿絵)

  挿絵(By みてみん)





「0.1パーセント!」




「1.2.3.…10パーセント!」


(隼人! 膨大な魔力を伴う何者かが、近づいてきます! 血の匂いを嗅ぎつけた魔物の可能性もあります。)

(騒ぎに乗じて脱出の可能性が出てきました)

 絶望的な死へのパーセンテージをカウントダウンしていたイージーの言葉が、一気に生へのアプローチを吹き返す


 ソルは、ライトボールが照らし出す黒馬にぶら下げられた男に気が付いた。

「ジャッファ!」


「何じゃ、此の貴族の馬車を襲っていた山賊風のあの二人は知り合いか? ソル殿」


 ソルは馬に咥えられて正体をなくしているジャッファを指さすと。「助けてあげて! あれは、兄弟子ジャッファなんだ。なぜこんなことに」


「ガオッ!」(ワシにまかせろ! 食らうてやる)


 異様な雰囲気を(かも)し出す黒馬に、マヌーも気が付いた。吹き飛ばしてやると重量を伴う黄色みがかった魔力の空魂を撃ち出す。気付いた黒馬も、驚いたことにジャッファを放り出すと、朱に染まった空魂をマヌーに向けて放った。

「ガンッ!」


 二頭の合間に見えぬ空気の塊がぶつかり合うと衝撃波が響き渡たった。ガルフは、ひらりと飛び降りる。ソルは、転げ落ちてしまった。

 二頭の争いを後に隼人とイザークの元へと走る。


「蒸着! メタルフォーゼ!」


 ガルフが一歩を踏み出すごとに鎧が追いすがる様にガルフに装着されていく。

「ザッ」

 二人の前に禍々しいオーラを放ちながら、角の付いた黒兜・漆黒の鎧のガルフが立つ。


「来い! 我が戦斧ドゥランダルフ!!」

「ダーン!」

 その前に轟音を響かせて、地面にクレーターをつくり戦斧ドゥランダルフが落ちてくる。


 イザークは、危険を感じて一瞬その場を飛びずさった。

(なんじゃ? 魔に染まりし黒鎧! ドワーフか? 魔術嫌いのドワーフが魔に塗れておる)イザークは、新しい敵に興味深そうに向き直る。


「なんだ? 今夜は、面白い奴が多いのお~。こやつらの仲間か? こやつには、少し興味が沸いたゆえ、儂が貰っていく。じゃまをするな」


 ガルフが、兜の合間からぎょろりと目を光らせる。「そんな奴は知らん。じゃが、そいつを知る者がいるんでな。渡すわけにはいかん」


 隼人は、イザークが注意を逸らした隙に、転がるようにしてその場を離れる。


 イザークは、黒鎧から放つ眼光を受けながら、「はて、どこかで会ったかな? ドワーフの騎士殿」


「フン! 儂など名もなき一兵の斧使いなれば、世に名を馳せた『イザーク・チアキ・フジワラ』の前に単騎で此の身を立てただけでも、武運が向いたものよ! (やいば)を合わせられるだけでも、武芸者のほまれ。問答は無用! いくぞ!」


「ブンッ!」ドゥランダルフが風を巻き渦巻く。

 枯葉や土埃が、舞い上がり二人を包む。


 初見の二人ながら、お互いに只ならぬ雰囲気を認め合い出方をうかがって居る。


 ガルフも、少しでも打ち込む隙は無いかとドゥランダルフで気を引き付け、地合いの訪れをみすごすまいと集中する。

 イザークは半眼に、目にも止まらずに回転する戦斧を見るとはなしに視界に納めている。


 一瞬。


 舞い上がった枯葉が、イザークの視線を(さえぎ)った。


 刹那っ! ギラリとした光を残して、老騎士の頭上に鉄魂が振り下ろされた。


「ギン!」老騎士の体も刀も動いたようには見えなかった。

 金属の打ちあう音だけが響いて(せん)(おの)は僅かに老騎士の肩先をかすめる様にその軌道を逸らされてしまった。


(なに、かわされた! まだだ!!)

 しかし、回転するアダマンタイトの柄の部分が追撃をかける。袈裟に振り下ろされる柄を迎え撃つように(はがね)の刀が振るわれる。


「ザッ!」

「ググッ」(ムッ アダマンタイトか?)


 断ち切れるはずの無かったアダマンタイトの柄に食い込んだ只の鋼の刀が、ググッと力押しするように食い込んでいく。


「ズカッ」(くっ! ドゥランダルフが)


「!……」切り飛ばされた柄が宙に舞う。(やいば)はそのままの勢い、ガルフの首を落とさんと迫るも、戦斧を手放した手甲でその刀を受けた。


「ガッ」青白い火花を散らすと、ガルフの鎧の手甲は、アダマンタイトの柄さえ切りとばした刀を受け止めてしまった。


(なにっ! 止めるだと)イザークの半眼だった両目が一瞬、見開かれる。

 しかし手甲の隙間から血が滴る。


 顔をしかめるガルフの内またを狙って、イザークの足がかかり、そのまま体当たりでもするように、肩をぶつけてくる。ガルフは、後ろになぎ倒される力に逆らわずに、自らもその力に脚力をくわえる。合わせる様に、後ろへと跳ね飛びトンボをきって宙がえりをするとイザークから少しの間を置いた。


「ソル殿! 転移じゃーっ、 かなわん! 逃げるぞ!!」


 怒鳴るガルフの声を聴き、ソルが辺りに魔石の粉を振りまき、ジャッファと隼人を取り込んだ。魔法陣が立ち上がり、渦巻くオレンジの光を放つとガルフも堪らず飛び込んだ。

 老騎士は、逃げる者は追わずとその様子を黙って見ている。



「…………」(アノ小僧と言い、ドワーフの騎士。今まであった事もない魔力の質を感じた。それにしてもあの鎧の加護、異質なモノじゃった)



 争いの喧騒も落ち着いて静まり返り、残った怪我人の呻き声だけが僅かに響く。

「ふんっ」と一息、息を吐くと気持ちを切り替えたイザーク・チアキ・フジワラは辺りを見回した。

 何時(いつ)も近くに居るはずの黒馬の気配がない。


「…ありゃ?…………」



 小春たちのキャンプ地で、転移のオレンジの輪が収束していく。

 眩しい転移の光が収まり、ソルは皆の無事を確かめる様に声をかけた。


「ガルフのおっちゃん! 無事か? ジャッファとあの男は?」


「ううむ、 皆もも無事に逃げられたか。 ソル殿の知り合いも二人とも無事の要じゃ」


 ソルが、仕事を果たせたことに安堵のためいきを吐く。


「ブヒヒーン!」 「えっ?」


「ブヒヒヒーン」


「うわっ! くっ黒馬!?」ソルが、驚きながら振り向くと黒馬が、草をはみながらこちらを見た。


「うーむ、黒馬。コヤツまで一緒に巻き込んで転移して来たか。主がおらんと静かなものよ」ガルフが、面倒なことになったとしわを寄せる。


 女たちが、大きな馬に気付いて寄ってきた。「ガルフさん、どうしたの? その馬、それに倒れているふたりもいるわ」問うエレナの後ろから、小春も一緒に倒れ込んでいる二人を覗き込んだ。黒獅子のマスクを見やり、呻きながらこちらを見やる現代風の服装の男。


「うんっ!? おにい? お兄ちゃん?」


 小春は走り寄り、精悍さを増した隼人の顔を不思議そうに眺めた。

 隼人は、戦いの場から一転して小春が覗き込んでいる事に驚き狼狽する。


(なんだ、老騎士に切り殺されたのか? 死んだのか? とうとう小春の幻影まで見える?…………)


 あまりにもの怒涛の展開に頭が付いて行かない。亡霊でも見る様に呆然とする。その隼人の頬を本物だろうかと小春も指でぐりぐりと突いてみた。


「イテテッ、なにすんだよ! 春ちゃん痛いよ」


 失踪してから、何か月が経っただろうか? この異世界へと飛び込んでくる切掛けにもなった。その目的だった妹の小春の姿が目の前にあった。不思議そうに覗き込んでくるその姿は、まぎれもなく小春。あんなに心配していた妹がなぜか目の前にいる。理由など分からない。でも確かに目の前に小春が居る。


「お兄ちゃん? なんで?」


 薄目で呆然と眺めていた隼人は、眼を見開くと「ガバッ」と小春を抱きしめた。

 気持ちの高ぶりを抑えきれない。何時も何かと抱きしめていた小春。妹の匂い。柔らかなミルクの様な甘い匂い。紛れもない小春の匂いだった。

 こみあげてくる。


「こはる~っ!」


「グエッ! ぐっぐるじいい~、うっクサッ! 臭い はなせ~」小春がジタバタともがく。


「ゴン」ウルが、慌てて小春を捕まえた男の頭を大剣の鞘で叩いた。

 折角の再会の間もなく、又隼人は白目を剥いて伸びてしまった。 


「あーっ お兄ちゃん!」


 その言葉に、ウルはその男の顔を覗き込んだ。「あっ! この人は、異世界転移の時の小春ちゃんのお兄さん。師匠の息子さんだよ!」


「えっ! この変質者が小春ちゃんのお兄さん?」 覗き込んだソルもあった事はなかったが何となく面影が似ている。


「なんと、小春殿の兄者だと言うのか? この山賊の子せがれが?」


「………………」 


「「「なぜ? なんで? 此処に?? どうやって此の異世界に??」」」


 ソル、ウル、小春が揃って疑問の声を上げた。


「ウウッ」ジャッファも呻き声をあげる。


「ジャッファ」「ジャッファ兄さん!」


 黒馬に、いいようにぼろ雑巾の様に叩きつけられたジャッファも目を覚ました。ウルが、黒獅子のマスクを外す。其処には、懐かしいガイアスの屋敷で兄妹のようにともに暮らしたジャッファの姿があった。思わず自分の力加減も忘れて、力任せに抱きつき頬ずりをする。


「ぐえっ」 「あっ」


「ウル! 力を抜いて、そっと静かにこの薬を飲ませてあげて」


 二人は、マーマリアの薬でやっと正気を取り戻した。隼人は、気にかけ探し求めていた小春を改めて抱きしめる。


「こはる~っ 春ちゃーん! よかったよ、無事で」いつもの様にぐりぐりと小春の頭に(あご)を押し付ける。


 小春は、すっかりと異世界の楽しさに隼人の事をすっかりと忘れてしまっていた。隼人と違って再開の熱量が足りない。「……おおーう、ソダネ、お兄ちゃんも元気でよかったよ」


 隼人にとって地球上で起きていた魔物騒動の脅威より、何よりも一番の心配事だった小春が元気に居てくれたことが、何にも増してうれしかった。

 仕事として請け負った他の事柄など打ち捨ててすぐにでも家へ、秋絵の元へと返してやりたいと思うのだった。


 二人の再開を皆が見守る中、「ブヒヒーン!」黒馬が(いなな)き、ワシを忘れてくれるなとばかりにドンドンと足を踏み鳴らした。



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