届け!…異世界からの援護射撃
森を抜けると、巨石の立ち並ぶ渓谷へと出た。
谷を割る様に渓流がながれる。
「ここだ!」
(今度はなんだよ、魚か?ワニか?)
「いや、縮歩を使う相手をするのによく似た魔物が、わんさかといるぞ。
気を付けろ、喰われるぞ」
ジャッファは、隼人が見えない敵に対して魔力を使って隼人がどの程度の対応力があるのか知りたかった。何処まで、自分で対応できるのか、又は手助けが必要なのか、自分のパートナーとしての即戦力を図りたかった。これからの村の為に役立つ男と感じていただけに期待したい処であった。
「岩トカゲの群れが暮らす岩場だ。奴らは、擬態が上手い。魚を取ってきた後には、陽当たりのよい岩場で体を乾かしているから、その時に僅かな魔力で周囲と同化している。魔力を感知しながら、探してみろ」
隼人は、そう言われても近づかない事には魔力の感知などできはしない。
高台から見下ろすと、大きな岩がゴロゴロしているばかりで、トカゲなど一匹とて見当たらなかった。
その時、岸際の水面がゆらめいたと思うとトカゲの形をした水の塊が岸へと這い上がってきた。まるで大きな一升瓶に手足の付いたような姿が陸地を歩いている。一歩、歩くたびに色を変え地面の色を取り込むように変化していく。
其のうちに、滴る水とその濡れた足跡だけが砂の上を進んでいるかのように見えた。
(あれが、岩トカゲか、カモフラージュの怪物だな。どうやって倒す)
AIイージー、
(水から上がったばかりの個体は体温が低く、サーモには青く表示できますが、すでに岩の上で体温を温めて周囲と同じ温度の個体は、動き出すまで感知できません)
(近づけば、漏れだす僅かな魔力を掴めるのですが。動き出す瞬間をとらえて、攻撃するか退避するかの選択が必要です)
ジャッファは、隼人が岩トカゲにどう対峙するのか腕組をして眺めている。
「お手並み拝見と行こうか」
(体を乾かすと言ったら日当たりのよい所だろ。此処ら辺りかなッと)
隼人はおもむろに大岩の上に9ミリ弾を一発打ち込んだ。
「よーしよし、あたり~。尻尾だったか」
3メートルほどもある岩トカゲがたまらず偽装を解いて尻尾から血をまき散らしている。飛び散った血は近くの岩の上にトカゲの形に血液で形を浮かび上がらせた。
「よし、もう一匹みっけ! パン! パン!」
幸先よく、あっさりと二匹のトカゲが銃弾の餌食になった。
(ふん、陽当たりのいい岩の上に弾丸をばら撒けば、何かしら当たるんじゃね。こりゃ~楽勝だよ)
のたうつ2匹の頭部に弾丸を打ち込むと白い腹を見せてひっくり返った。
静けさが戻ってくる。此れだけ銃撃の音と、暴れるトカゲが居たのにもかかわらず2匹が大人しくなると又最初の静けさに戻ってしまった。
偽装を武器に生き残ってきた岩トカゲ達には、動いたらカモフラージュの効果がなくなることを解っているかのように、多少の事では動かずにピクリともしない。隼人は、又当たれと言わんばかりに岩の上をグロッグで乱射する。
無駄に岩の破片が飛び散った。
(くそっ 無駄に弾丸を使うことになるな。何か方法はないのか?)
AIイージー、
(隼人、此処では、材料のあるモノならは、無限収納内で私が構築と共に作り出しますが、弾丸などは、創り出せないです。今は、現代地球から取り寄せるしか補充が出来ないのです。無駄うちは控えてください。弾切れになります)
岩場に弾丸を打ち込む。「チュイーン!!」二発の弾丸が、一瞬のオレンジの盾に弾かれて跳弾した。
(なんだ! 今のは、岩の上に盾が出たぞ)
AIイージー、
(隼人の使う盾の魔法と同じ種類のものです。魔力を魔法に変換できる岩トカゲが潜んでいます。気を付けて)
同じ場所に立て続けに撃ち込む。岩の破片が飛び散る。
(すでに静かに移動したようです。私でも関知できませんでした)
(やはり、接近してから魔力感知で所在を探るか? イージー、サーチを頼むぞ! 突入する)
隼人は、瞬きをすると谷底へと駆け下りていった。麗らかな陽射しが、小鳥のさえずりが、川のせせらぎが、この平和な風景で偽装している魔物の巣窟。
しかし、今の隼人は意識を周りの気配に集中する。トカゲの形をした赤いラインに一点のポイントの付いたものが、ジワリと近づいてくる。目の前に鋭い牙の並ぶ口が開かれた。
(うおっ! あぶねえ)
「パパン!」グロッグを打ち込むと偽装を解いた一匹がのたうつと静かになった。
(危ない隼人! 後ろです。飛んで!)
「ガチンッ!」背後で牙の噛みあう音が響く。隼人は、後ろも見ずに前方へと跳躍した。暴れる一匹に気を取られた隙を突いて背後に詰め寄られていた。
しかし、その前にも偽装を解いた二匹が全力で詰め寄ってくる姿。
「チッ!」隼人は、舌打ちと同時に空中に現れた盾を蹴り飛ばすとその反動で後ろのトカゲの背中へと飛び移った。その頭に一発を打ち込むと、その背を蹴って元の高台へと走り出す。
(ダメです! 回り込まれています。先ほど、魔法を使った特異体質が来ます!)
隼人の目前にそのバケモノは姿を現した。全長6メートル、ごつごつとした体は体高も盛り上がり、トカゲと言うよりも地竜を思わせた。
(くそ! バケモノか! 此奴ら妙に連携がいいじゃないか)
(トカゲに、集団での狩の習性はありません。ほかのトカゲの動きを予想してこのバケモノが動いたのでしょう。気を付けて)
隼人は、コルトバイソンに持ち替えるとメタルジャケットの弾丸をぶち込む
「チュチーン!」力強い魔力のこもった分厚い障壁は、一部を砕いただけにとどまり怪物に届かない。
(ダメか!!)「ジャッファーッ!!」
隼人は、堪らず高台に居たジャッファを見ると、いつの間に駆け下りていたのか周りを囲まれて大剣を振り回すジャッファがいた。
(だめだ! 此奴の相手は俺がやるしか)
前方の大トカゲばかりに油断したのかうしろの二匹が飛びついてきた。隼人は、慌てて二匹を仕留める。前方の地龍モドキもその隙を逃さない。
猛然と襲い掛かってくる。
「カチ! カチッ!」
無情にも、コルトバイソンが弾切れの空打ちの音が響いた。よりによってグロッグも同じタイミングで全弾使い切ってしまった。
「くそ! こんな時に」地龍モドキが大口を開けて突っこんでくる。
隼人は、盾を出現させるが圧倒的な力で盾ごと吹き飛ばされた。
土煙を巻き込み転がる隼人。
更に、地龍モドキが倒れる隼人に追撃してくる。体中を打ち据えながらも、隼人は盾で防御するが、馬鹿でかいその頭で盾を打ち壊そうとぶつかってくる。
強化した体が地面にめり込む。支える盾にもヒビが走った。
(まっ不味い!)
その時、ヒビの入った盾越しに周りの大気が揺らめいていくのが見えた。
上空の空に、オレンジの雲が一瞬で沸き起こると渦を巻いて辺り一面薄暗くなった。一瞬の変化に、地竜モドキも上空を見上げる。
AIイージーが、(来ます! 隼人)
隼人も最大のピンチを何とか切り抜けられるのかと(何が来るんだ! 何か手立ては!)
上空を巻いていたオレンジの雲が、まるで台風の目が出来る様に中心に明るい青空を残して広がっていく。
(きます! 異世界からの援護射撃が来ます! 衝撃に備えて、最大の障壁を張ります。…………3…2・1)
青空に十字の閃光が走る。
高周波の音と共に其れは、目の前の地龍モドキの頭の上に細い光が差したかのように見えた。顎の下に小さな穴が一瞬開いたかと見えたその時、その巨大な頭が爆散する。
飛び散る血肉が盾を覆う。
「ヅガアア——————ン———ン」
一瞬遅れて隼人の数歩先に、頭蓋骨を貫通したなにかが、爆音を引き連れて地面に直径5mほどのクレーターを作りだした。爆風に巻き込まれた隼人は盾を絡ませながら転がる。同じように周りには巻き込まれた岩トカゲが衝撃で吹き飛んだ。
「チュ—ン! チューン! チューン!」地龍モドキを爆散させた閃光は、その威力を落とし、隼人の周りの岩トカゲの頭を次々と打ち抜いていく。
それでも、近くの隼人は、岩トカゲの爆散するたびに右に左にと成す術もなく巻き込まれ転がされる。
「…………」最後の一匹が殺されたのか、辺りが静かになった。
(終わったのか? 何だったんだ今のは。…ハッ! ジャッファは?)
ジャッファが居た辺りを伺うと岩トカゲの死骸に並ぶように倒れている。
「ジャッファ!!」隼人が、大声で呼びかけるとむくりと起きだした。
「ウウームッ 俺は、大丈夫だ。何が起きた。お前がやったのか隼人」
「いや、俺じゃない見ろ此のざまだよ」
隼人は、立ち上がると擦り傷だらけでボロボロになった姿をさらして見せた。
「ハハハハッ 確かにひどい姿だ。俺も似たようなもんだな。しかし特異体質のバケモノトカゲが、混じっているとは思わなかった。助かったぜ」
AIイージー
(隼人、来ます。 異世界からの3D映像が下りてきます)
オレンジの雲の合間に広がる青空から、一筋の青いレーザーが差してくると螺旋を巻いて回りだした。その中の空間に一人の女性の姿が浮かび上がってくる。
「ハーイ! 隼人元気にしてる? どうよ。異世界からの射撃の腕を見てくれたかな?」
「ソッソフィ―さん!! なぜあなたが?」
映し出す映像には、研究所の魔法陣の側にやぐらを組んで組み立てた狙撃銃を構えるソフィーの姿があった。研究員のマークの声が割り込んでくる。
「僕の方から補足するよ。彼女の、スポンサー企業の一つにうちの製薬会社が入っていたんだ。ジョニアスの話から此処の話を嗅ぎつけて売り込みに来ていたんだ。そんなときにジョニーがあんなことになったろ。隼人をサポートするのに都合がいい人材だと僕の方からも押して、チームに入れて貰ったと言う訳だ」
「異世界からの射撃に驚いたと思うけど、ガイアスさんが大量の魔石を持ち込んでくれた。魔法陣を新しく作り変えて、まるで隼人の周りを箱庭を上から眺める様に見ることが出来る様になったよ」
「隼人の情報端末イージーの許可が必要だけどね。更に隼人の情報端末から、常に位置情報が送られてくるようになったよ。だいぶ進化している様で、会う日が待ちどうしいよ」
ソフィーが声を改める。
「ジョニーのことは聞いたわ。私の仇よ。私も異世界からだけど其の魔術師を倒すために力になるわ。私がこの手で仕留めて見せる。そいつは自分が死んだ事も気が付かないうちにね。まさに天空からの女神の一撃でね。楽しみだわ」
「隼人の隣のその子も面白いわ。ふふっ 会ってみたいものね」
隼人が隣を見ると、ジャッファが膝間づいて手を組んでレーザーで映し出される映像のソフィアに祈りの姿で目を見張っている。
「ああっ 女神さま! 女神さまの加護に感謝します。助けていただき御礼の言葉も足りません。私目は、大森林に村を開くものジャッファ。我らを助けてくださった女神さまのお名前をお伺い願えませんか」
(はあ~っ?)隼人が、ジャッファの勘違いに目を見開いていると。
「よかろう、ジャッファと申したか其処の隼人と共に我の眷属として励むがよい。我の名はソフィア、美とすべてを射抜く稲妻を操る光の女神ソフィア・ペデルニコフじゃ。我の元に跪き、崇めるがよい」
「ははーっ、女神ソフィア様。 このジャッファにお眼を留めていただき感謝します。我が村の守り神として村人一同にてお祈り申します」
(はあーっ ソフィーさん悪乗りしすぎですよ! ジャッファおもいきり勘違いしてるじゃ、有りませんか)
「いいのよ、私からの指令が届きやすくなったわ。神様でもお大臣でも話が付きやすくなっていいじゃない。女神ソフィア良い響きね。フフフ」
隼人の思考内でのソフィアとの会話が、ただ立ち竦んでいる様に見えたのかジャッファに脇をこずかれた。
「隼人! なにを立っている! 女神様が降臨されているぞ。跪け。我らを助けてくださった女神ソフィア様だ」
隼人もしぶしぶ、膝間づき頭を垂れる、ついでに大げさに両手をついて女神に祈る。まさに、クーガーの時と言い今回の岩トカゲといい絶体絶命のピンチを2度も救ってくれた女神だ。
「女神ソフィア様、またしても助けていただき感謝します」
「ウム、お前たちの姿いつでも女神の眼で見守っておるぞ。お前たちの行いは常に我と共にあるぞ。その正すべき志を貫くがよい」
神様になりきったソフィ―さんは、適当なことを言うとレーザーの光を巻き戻す様に上空の青空へと演出宜しく舞い上がっていった。




