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うるさい…拾い物

「何か、物音がする!」


 其処だけ、洞窟の壁に誰か魔術を施したのか僅かな明かりを灯す魔石がうめこまれて、視界を保っている。

 ゴブリン達にとっては、お宝に思えたのか、ごちゃごちゃと錆びた剣や古びた兜などガラクタの山が重なっていた。

 と、いきなり其のガラクタの兜が起き上がってくる。


「グギイギギイッ!」


 ガラクタの防具、兜、錆びた大剣を身に(まと)うオークとも見まごうほどのゴブリンの長が一匹、剣を振りかぶってきた。


「ギン!」


 ウルが鞘から抜けきらない大剣で受ける。


「ガッシャーン!」


 すかさず,前蹴りでゴブリンの鎧を蹴り飛ばすと又ガラクタの山へと吹き飛んでいった。


「あーっ 魔力が発動しないよ~。魔力切れ~お休みしないと駄目みたい」


「どれ、(わし)が替わろう」


 ゴブリンの長が立ち上がり、其れに対峙するように無手でガルフが前へと出る。


「ガウー!」


「来い! ドゥランダルフ!!」


 ガルフが、走り込みながら無手のまま腰を落とし、右手をまるで得物を突き立てる様に伸ばすと、そこには戦斧ドゥランダルフが現れた。


「グエッ!」「ダーン!」


 オークほどのゴブリンの長を突きさしたままドゥランダルフは伸びていき、洞窟の壁へとゴブリンを突き立ててしまった。

 暫く縫い付けられたまま()()いていたが、やがて動かなくなる。


「ふむ、どうやら此れで最後みたいだな。ゴブリン共が集めていたものもガラクタばかりじゃ。帰ろうかの」


「むう————ん、むう————む」


「!…………」


「…どれ、帰ろうかの……」


 ガルフが呻き声を無視して帰ろうとする。


「ガルちゃん! 誰かいるよ」


 ウルが、ガラクタの山の先、洞窟を進むと鎧に兜の人物が縛られて転がっていた。


「ウムっ まだゴブリンめが居ったか! ウル殿縛られておるゆえ、悪さはなかろう、このまま(ほお)って置いても良かろう。さあ、帰ろう」


 ウルが、兜を外すと金髪の長い髪がファサリと現れた。

 口には、猿ぐつわをはめられた女騎士だった。

 猿ぐつわを外す。


「ウムッ 女のゴブリンであったか、さあ帰ろう」


「ちがうわ! このドワーフ! 人間の女だよ! ゴブリン共に掴まったなど騎士の名折れ! くっ! 殺せ!」


 猿ぐつわを外された途端に女が喚きだした。


「…………」


「そんな目で、縛られている私を眺めて、嫌らしい事をきっとするんだろう! くっ! 殺せ!」


 美しい金髪に紺碧の眼、年の頃は27.8と言った所の女、美しい容姿に似合わず何とも騒々しい。

 縄を、解きかけていたウルがガルフを見る。

 ガルフは口をへの字に結ぶと首を傾げた。


「……ガルちゃん……どうする?」

「めんどうじゃの~」

「めんどうだね」

「帰ろうかな」

「…そだね…」


「なんだとー! 此の武勇の名門エアハルト家の騎士ローザを捨ておくつもりか! くそ、平民ども不敬だゾ!」


(なんで武勇の名門なのにゴブリンなんかに掴まっているのよ)


 縛られているのも忘れて騎士の身分を前に出して(わめ)きだす女。


「…………」


「……なんか、嫌らしいねえ……」

「じゃろう~」

「めんどうだねえ~」

「帰ろうか」

「そだね!」


「あーっ! 待て待てっ いっいや待ってください。お願いします!! 先ほどの言葉は、取り消しますから助けてください! お願いします」


「!! あっ! ドワーフのお主、ドワーフ領の騎士.ガルフ.ガンダルウスではないか。知っているぞ。なんでそのような恰好で此処にいる」


 やっと自分の立場に気が付いたのか言葉遣いも変わってきた、更にどうやらガルフを知っているらしい口ぶり。


「儂は、こんなうるさい女など知らんわ」


「いやいや、私はよく知っているぞ! オーク集落の討伐に我が騎士団と共に軍事訓練も兼ねて参加していたではないか。あの時のドワーフ領の百人長の騎士ガルフ.ガンダルウスではないか。なぜ平民の様な恰好で子供たちを連れておるのだ」


「…………」


「…ああっ何となく思い出したぞ。フン! 知り合いに呪われながら死なれても目覚めが悪いわ。たしかあの時もオークに掴まってひん剥かれる寸前で、助けられて、やっぱり今みたいなセリフを喚いていた女がいたな。お主だったか」


「ウル、残念だが縄を解いてやれ。ゴブリンの殲滅だけでも良しとしようか」


 ウルが縄を解くとやっと安心したのかヤレヤレとした顔を見せる。


「さて、帰るぞ」


 ウルとソルもガルフに続いて洞穴を出た。

 ウルの落とした光る紙切れがうすぼんやりと来た道を灯している。

 三人は、黙って歩く。


「ぐうーっ」 「はあぁ」


「…………」


「ぐううーうっ」 「はああぁ」


 ローザの腹の虫が盛大になる。

 ついでとばかりにため息まで。


「うるさいわ!!なんで附いてくる。好きなところへと行くがいい。儂らは関係ないだろう」


「いや、供の物ともはぐれて道もさっぱりわからん。助けてくれたついでに何か食べ物を持ってはいまいか。まるで二日も口にしておらんのだ」


 ソルが、収納袋からナマケモノの魔物の干し肉を取り出すと。


「おおっ ありがたい。少年、感謝するぞ!」


 言うが早いか、ひったくる様に受け取ると其の干し肉にかじりついた。


「うっ、クサイ! 酷い匂いだ。うっ不味い。なんて固いんだ」


 ローザは、ブツブツと悪態を吐きながらも其の安い肉をかじり続ける。

 ソル達もあきれて黙って歩き続ける。


「カシャコン、カシャコン、カシャ」


「…………」


「カシャコン、カシャコン」


「うるさいわ! なぜこんな森の中を全身鎧で歩くんじゃ。静かな夜に魔物どもが寄って来るわい」


「いやいや、従者どもと逸れて馬もおらん。着替えも従者が持っておるゆえ,しょうがなかろう」

 ウルが、気の毒に思ったのか。


「ソル、あたしの貫頭衣出してあげなよ」


 ソルが、麻の貫頭衣と編み上げのサンダルを出す。


「おおっ何から何までかたじけない。便利な収納袋を持っている様子。ついでに鎧も頼む」


 そう言って、鎧を脱ごうとして。


「見るなよ」


「「「見らんわ!!」」」


 ローザが、ウルの貫頭衣に着替えると元々子供体系のウルの貫頭衣。

 出る所は出てなかなかの体の女にはサイズが小さ過ぎたのか、太腿まるだしで胸もはち切れそうな姿になっている。

 太腿を隠そうと下に引っ張ると胸が零れそうになる。

 慌てて、胸元を隠そうとずり上げると太腿があらわになった。


 ウルが、横目で、


「なんか……いや。このお姉さん、いやらしいね」

「…………そだね。……まっしょうがないよ。ウル」


 ほんうに嫌そうなウルと、そうでもない年頃のソルが微妙な会話で後に続く。





 ネット回線工事の為、10月25日までお休みします。


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