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スマホ チュウニュウ~デスカ!?

 



 上司のトラブルに巻き込まれるように決まってしまった射撃訓練と同時に行うサバイバルの訓練の事を思う。


(訓練も近いというのに今頃手術って、そんな簡単な手術何だろうか? あのマークさんが立ち会うんだ、なんか不安しか湧いてこないんだけど……)


 隼人は、研究所内にある医務棟のクリーンルーム手術室の前の車椅子に腰かけている。

 手術のための麻酔が効くのをぼんやりと待ちながら残念な週末の事を考えていた。


 そこへ、薬品会社からの出向社員マークさんが現れた。


(うわっ 来たっ)

「どうだい隼人、部分麻酔の具合は? 瞼を動かしてみてくれ」


 意識はあるが目の周りが動かない。

 口もうまくしゃべれないので黙っている。

 マークさんは眼球の動きを確かめるように見る。

 車椅子を押してクリーンルームの前のエアシャワーを通り抜けた。


 マークさんが手を洗いながら話しかけてきた。

 反対側には年配の執刀医の先生が対面する。


「僕が、助手をしながら手術の説明をするよ。簡単な手術だから1時間もかからないはずだよ」


(うっ嘘だ! ぜったいにウソだ。この人が笑顔の時には大体、ひどいことが平然と行われているんだ)

 隼人は、この研究バカのマークの笑顔の訳をわかるようになったところだった。


 左目に点眼液をさされた。

 執刀医のメスが目に入り込んでくるのが見える、世界が二つに分かれていく。


「新しく開発されたコンタクトレンズタイプのモニターだよ。有機物で出来ている。君の体内に蓄積されつつある異世界のエネルギー物質と定期的に注入を続けている(ファージ)の作用ですぐにでも君の体に馴染むはずだ」


「モニターのサイズに角膜を切り取りその内側にこれをセットする。最初は見えないだろうが、ファージがすぐに仕事を始めるはずだ。角膜と一体化してすぐに見えるようになる、推定で2日と見ている。まるで生まれた時から付いているように自分の体の一部分のように馴染むはずだよ」


(ええええええ—————っ! ほらやっぱり————い。なんでモニターが目に移植されるんだよ~! 聞いてないよ)


 麻酔のせいで、意識はあるものの口も動かず言葉も出てこない。

 隼人は、心の中で抗議の声を上げた。

 真っ暗だった左目に、うすぼんやりとすりガラスの様な明かりが戻ってきた。


「ほら、角膜を戻したよ。今は充血で見えないだろうが、明るさは、感じるだろ? 目の手術はこれで終わりだ」


 最初の説明どおり、あっという間に手術は終わったようだった。


 非難の声を上げたところで、異世界という全く未知の世界へと向かう隼人たちの為の準備であることは、分かっている。

 並大抵の準備では足りない事ぐらい、やりすぎて困るという事などないことぐらい隼人にもわかっていた。

 耳の後ろにチクりと太い注射針の感触がする。


「ううん?」

(今度はなんだ?)

「何か打ちました?」


 いきなり首筋へ注射されたのを驚いて尋ねる。


「そうだね、10ミリにも満たないチップを耳の後ろに挿入した。モニターへ信号を送り動かす、パソコンのCPUみたいなものさ。これも(ファージ)と同じ性質を持った物質でできている」


「君の神経細胞に根を伸ばし体の動きを助けてくれることを期待して作ってある。君の全感覚器官の情報をデジタル化数字としてそのモニターで視覚することもできるようになるだろう」


「もちろん外部情報、君の意識にまで届かないような微細な体の感覚まで取り込み、君の体の全細胞組織をめぐる電気信号をまるでインターネットのように使って情報を蓄積し解析するコンピュータの様な働きが期待出来るようになるだろう」


「それは、君の使い方と環境で次第に育成されて体に馴染み体の一部として成長してどのように発展し、どういった機能を作り出していくかは今後の様子を見ながら、調べて行こう」


 一気にしゃべり切ったマークさんに隼人は今更ながら聞いてみた。


「ちなみに、この被験者って僕で何人目ですか?」


「……世界がきみに続くだろう…まっ携帯型端末から進化系内蔵型端末へって所かな。ちなみにスイッチのオン.オフは、左目三回の瞬きだ。覚えておきなさい」


(…………)

(…………ほらね…って、やっぱり俺が人体実験一号かよ! 今までのマークさんの研究の成果を全部俺で実証するつもりですか!? …………というか、俺しかいないよな。異世界人の体を持っているのは。俺が最も研究として適合しているってことか。此方から頼み込んだこともあるし、新たな体を手に入れたくらいに…………ポジティブにって…………はあ~)



 ジョニーさんに送られて車の中にいる。

 首筋に絆創膏、左目に白い眼帯、翌日は休んで良いとの事だった。

 術後2時間ほどだったが、眼帯のなかで薄目を開くとすでにうっすらとガーゼの網目が見えた。

 鎮痛剤さえ渡されなかったが、麻酔がきれる頃には痛みさえ感じてはいなかった。

 体調もすこぶる良い。


 毎日異常なほどの食欲があり肉を中心に食べている、それ以上に驚くほどの排便の量が毎日出る。

 マークさんに話すと、おもしろがって採取キットを渡されて毎日研究所への提出が義務づけられてしまった。

 体はだんだん細くなってきて、さらになぜか目線まで少し下がってきたような気がする。


(わずかだけど若返っている?)

 肌艶が中学生のようにきめ細やかになり血色もすこぶる良くなった。



 コンドミニアムの前に着いた。

 降りようとして、ふと開け放られた玄関から受付が見える。

 スーツ.スカートの二人がキャリーバッグと共に受付に居るのが見えた。


(アッ 母さん! キャッシ―も来てたんだ。助かった。今日からやっとマトモナ飯が食べられる。)


 ほんの僅かな日数ではあったが、一人で異国の地で過ごしていたことが、ジェットコースターにでも放り込まれたように、目まぐるしく止まらない時間を過ごしていた。


その事でやはり寂しく心細かったのだと、秋絵の姿を見て改めて実感した隼人だった。

 ただその姿を見つけただけで、隼人の心にほっとするような安心感が広がっていた。


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