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にゃろ~あったれー!

 

「パンッ……パンッ」


「手首の中心と銃の中心がずれて来てるぞ!手首を曲げるな、合わせろ!」


「パンッ……パンッ」


「銃口がぶれる!トリガーはじんわりと握れ。ゆっくりと落ち着いて」


「パンッ……パンッ」


「よし。トリガーから指を抜け、銃口は上に、セーフティをかけろ。ポジションとスタンスを最初からやり直せ」


 隼人、

(はあ~っ またですか~おんなじ事の繰り返しなんだけどな~。なんでこんなにズレてくるんだろ? 当たらんもんだな。バシッとど真ん中にあったれ~!)


 イヤーマフから射撃場の教官の指示が細かく飛んで来る。


 隼人たちは、街から50分ほども車で走った所にある射撃練習場に朝から来ていた。

 日本人の隼人は、銃など触ったこともなかった為一からの扱いの手ほどきをうけていた。


 もう銃を変えながら、50発以上は撃ち続けている。

 数えてなどいない。


 最初は物珍しさで喜んでいたものの、撃ち続けるうちに反動の衝撃が手のひらを叩き、骨身にしみて辛くなって来ていた所だった。

 楽しみにしていた射撃が、だんだん嫌いになってくる。


 同じ姿勢で、衝撃に耐えながら集中力を切らさずに射撃をつづけることがつらい。

 最初、ジャージの首元へ焼けた殻の薬きょうが飛び込んできて熱い思いまでした。


 ひと際の炸裂音が響き渡る。


「ドンッ ドンッ」

(うっわ すごい炸裂音! 腹にひびくわ。あれが45マグナムって奴ですか? 手いたそ~。俺じゃまともに撃てないんだろうな~)


 1区画パーテーションを隔てた隣のジョニーさんは的のほぼ中央に弾痕を集めている。

 使っている銃も大型のものに見える。


 隼人はというと、9ミリ弾を中心に使い、最初こそ4.5発中心に寄ったくらいで集中を切らしてからは弾丸の無駄使いもはなはだしかった。


「パンッ……パンッ」

(にゃろ~あったれ~!)


 グリップを隙間なくトリガー近くしっかりと握り、すこし斜に構えてボクシングでもするようなスタンスを取る、腕は軽く曲げ、銃の中心と手首の中心を合わせる、トリガーを銃口が動かないようにじんわりと。


「パンッ……パンッ」

(あったれ~。あにゃ)


 的の中心からだいぶ外れた。

 隼人は、セーフティをロックすると前のテーブルにゴトリと銃を置いた。


(休憩だよ! きゅうけい)


 後ろの長椅子に戻ってくるとイヤーマフと保護メガネを外して汗を拭く


 隣に年配の教官が座り、直すべき点を指摘してくる。


「boy。こんなに弾、使ってくれていいお客さんだな。初めてにしてもひどすぎるね。こんなに銃のセンスのないのは初めてだよ」


(……そっすね)


「ドンッ ドンッ」


「彼は、いいね。ぶれないし集中力も素晴らしい」


(……そっすね)


 ジョニーさんは様々な銃を取り換えては、楽しんでいる風だった。

 教官が、ジョニーさんの成績の的の束を持ってきて銃と弾丸ごとの特徴を説明してくれる。

 長椅子に広げるとほとんどが中心に集まっている。


「まあ、向き不向きって事もあるだろうが練習を重ねれば上手くなっていくだろう」


「君に向いた銃のチョイスを頼まれた。成績.姿勢.扱い方などを眺めていたが、君が今日扱った銃の中から選ぶとすれば、君に相性の良さそうなのは私が勧めるのはこれだ」


 黒いプラスチックの様な表面処理がされた一つを椅子の上に置いた。


(オオオーッ カッコイーッ これが俺の物に! おっさん! いいチョイスだよ。これは上手くならねば!)


「第5世代グロッグ17 口径は9mm、弾が9×19mmパラぺラム、マガジンに17プラス1発、有効射程50メートルといったところだ」


 寒冷地での使用に適し、プラスチック素材を多用して軽く作られている。

 バランスも程よくて跳ね上がりも少ない、連射にも向いているとの事だった。


 そこへ射撃を終えてテンションの高いジョニーさんが。


「ヤアッホ~ッ! 領収書切れてこんなに撃ちまくれるなんて最高だな! 隼人楽しんでるかー!」


(クッ!)

 隼人は、赤くなった自分の手とこのやたら機嫌のいいエセヤンキーの顔を見比べてため息をついた。


 ジョニーさんがニコニコしながらやってくると的の成績を広げて眺めている。


(マッタク、筋肉の塊のようなこの人には疲れるって事が無いのだろうか?)


「ジョニーさん銃が決まりました。これの登録をお願いします」


「おおっいいじゃないか。最新のものじゃないが信頼できるな。反動も少なくていいと思うよ」


 銃に満足したのか、自分の成績に満足したのかどちらにしろ満足そうな顔を見せて


「じゃあ、銃買ったらそろそろ帰るか」


 ショップの方に、二人して回るとお勧めの銃と弾丸を5ケース、手入れ用品それと同じメーカーのハンドガンという手のひらサイズのグロッグ26、弾丸も共通で使えてなにかと便利がいいというので一緒に購入した。


 購入したガンのケースを手に下げるとずしりとした重さを感じた。

 隼人は改めて思う。


(……こんなもので武装して自分の身を守らなくちゃいけない世界なんだな。危険な生き物だけじゃないかもしれない。人間も? その時俺は、撃てるだろうか。撃たないと俺が、死ぬのかな…………ひどい就職先だな…………)


 今の隼人には、実感も沸かず、まだわからなかった。

 悶々とした思いだけが、泥のように積もり溜まっていく。

 ガンケースの重さに、自分の行く末を感じていた。


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