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S.A.K.U.R.A.~蒼の魂~  作者: 猫人間
【第弍章】武士櫻の闘い
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その玖―温もり―

 固く冷たい地の感覚。

 氷のような地の冷たさが、しんしんと全身に伝わってくる。


(僕はどこにいるんだ……?)


「…………り……ゆ……のり……!!」


(断片的な声だけが頭に響く……)


「…………のり……恭徳……恭徳……!!」


(ん?なんだろう……微かに聞こえてくる……僕を呼ぶ声……)


 地に横たわっていた恭徳が、薄らと目を開けると、


 そこには、ぼやけて見える二つの人影――


「おい! 恭徳!! 大丈夫か? しっかりせいや!」


(この声は……健二郎さん?)


「恭徳!! 聞こえるか? 恭徳!!」


(それに……この声は英莉衣さんだ……)


 恭徳がゆっくりと目を開けると、そこには、健二郎と英莉衣の姿――


「良かったぁ!! 気がついた〜!!」

「おい! お前ぇ〜!! 心配さすなやぁ〜!!」


 ――英莉衣さん……健二郎さん……

 良かった……お二人とも無事だったんだ…………

 ん? そういえば、なんだか右頬がほんのり熱いような…………? ……なんかジンジンする――痛


「痛っ!!!!」


 突如、強烈な痛みを感じ、恭徳は飛び起きると右頬を抑えた。


「あー、だから叩きすぎなんだって……」


 そらみろという目で健二郎を見つめる英莉衣。


「だっていくら呼びかけても、返事がないけん! 俺、もう怖なって! 必死やってん…………」


 その横で必死に弁解する健二郎。


 二人の様子から、この右頬の痛みの訳を察する恭徳。


「ありがとうございます。健二郎さんの魂の叫び、僕の元にしっかりと届きましたから。お陰で僕、なんとか踏みとどまることができました!」


 恭徳はしっかりと健二郎を見て言った。


「おう! そうか! さすが健ちゃんやろ!」


 自画自賛し、うんうんと頷き右拳に親指を立てる健二郎。

 やれやれ、と苦笑いを浮かべる英莉衣。


(きっと今、僕の顔見たら、もの凄く腫れてるんだろうな……)


 そんなことを思いながらも、くすりと笑いが零れる恭徳であった。


「よし! ほんじゃそろそろ行きますか! 恭徳、歩けるか?」


 健二郎の問いに恭徳は、立ち上がろうとするが、足の骨が抜かれたかのように、ふらふらと倒れ込んでしまう。


「おい? 大丈夫か?」


 慌てて英莉衣が恭徳を抱える。


「しょうがないやっちゃな〜、ほら!」


 そう言って健二郎が屈んで背中を向ける。


「えっ?」


 戸惑う恭徳に、健二郎が言った。


「おぶってやるけん、乗りや」

「でも……」

「ええから、早う乗りや!」


 恭徳は英莉衣に支えてもらいながらも、健二郎の背中にもたれかかった。

 健二郎がよいしょ、と立ち上がり、歩き出す。


 健二郎の背中はとても温かかった。


 温かくて大きな背中。これは幼い頃味わった感覚だった。


「父さん…………」

「おいおい、俺はお前のおとんちゃうで!」


 そう言って振り返ろうとする健二郎を慌てて制止する英莉衣。

 人差し指を口に当て、背中を指さす英莉衣を訝しがりながら、今度はそっと振り向く健二郎。


 そこには、健二郎の背中で心地良さそうに眠る恭徳の姿。


「ったく、こいつは……何、人の背中で寝とんねん……」

「まあまあ、健二郎。そのままにしといてやれよ……よっぽど疲れたんだろう」


 英莉衣の言葉に健二郎が頷く。


「ああ、分かっとるよ。俺もそこまで鬼やないし。それにあの軍勢を一人で倒したんや……こいつは大したやつやで」

「そうだな……」


 いつも恭徳とは何かとやり合っている健二郎だが、実力のほうは認めているようだった。


「それにしても、こいつ……重うなったな〜」

「健二郎、まるで父親みたいだな」

「英莉ちゃんまで、止めてくれや〜」


 そんな会話をしながら、恭徳を背負った健二郎と英莉衣は、歩みを進めていった――

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