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S.A.K.U.R.A.~蒼の魂~  作者: 猫人間
【第弍章】武士櫻の闘い
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その肆―相棒―

 櫻門西広場では、突如襲ってきた、豪雨が降り注ぐ中、健二郎とその周りの大勢の刺客が戦いを繰り広げていた――


 吹きつける横殴りの雨のせいで、更に視界は悪くなっていた。

 しかもこの豪雨はどうやら此処だけのようである。


 健二郎はほとほと自分の運のなさを恨んだ。


 そんな悪状況の中、敵の一人が抜き打ちに健二郎へ斬りつけてきた。

 健二郎は飛び退ってかわしたが、かわしきれず左の肩先を斬り裂かれた。


「たあっ!!」


 畳み掛けて、敵が二の大刀を真向から打ち込んできた。

 敵の打ち込みをはらいのけ、飛びちがって振り返りざま、健二郎は相手の左首筋を斬り払った。

 敵がどさっと倒れ伏した。


 その瞬間、敵に斬られた左肩に激痛が走る――電流を流されたかのような感覚に健二郎は堪らず傷を押さえた。

 この雨のせいで傷口が更に痛むようだ――まるで傷口に塩を塗り込まれているような痛みだった。


 ――くっ、ここまでかっ……!!


 健二郎が斬られた左肩を押さえ激しく喘ぐ。


「やあーーーっ!!」


 その時――健二郎の背後から敵が迫り来る。


 ――しまった!!


 健二郎は振り返るが、猛刃を防ぐのには間に合わない――


 ――キィィィン!!!


 突然、健二郎を襲った刀が止まった。


「龍二?」


 健二郎が突如、目の前に現れた長髪の後ろ姿を見て言葉を零した。


 瞬時に健二郎と敵の間に降り立った龍二が、敵の刃を止めたのであった。

 龍二は刀を弾くと、敵の右肩目掛け、振り下ろした。

 敵は前のめりに倒れ、そのまま動かなくなった。


「龍二、ほんまありがとな! おかげで助かったわ!」

「茂庭、その傷……」


 龍二が健二郎の左肩を見て言った。


「大丈夫や! こんなもん、ただの擦り傷や!」


 そこへ向こうから、敵を薙ぎ倒しながら、英莉衣もやって来た。


「健二郎!! 援護するぞ!!」

「おう! 英莉衣!! ありがとうな!!」


 そして、健二郎は龍二の方を振り向く。


「龍二! 此処はもう大丈夫や! お前は早う"あいつ"の元へ行ってやれ! もう随分と向こうに敵がなだれ込んどる! さすがのあいつでも、この数は相手しきれん!」

「ここは俺達に任せろ!!」


 二人の言葉に龍二は黙って頷き、その場を急いで立ち去った。


「よしっ!! それじゃ、いっちょかましましょうか!!」


 背後から龍二の気配が遠ざかっていくのを感じながら、目の前の軍勢を見据え、健二郎と英莉衣は駆け出したのであった――


 ***


 全身に叩きつける豪雨に耐え、途中、迫り来る敵の軍勢を薙ぎ倒しながら。

 心臓は破裂しそうなくらい激しく脈打つ。


 それでも龍二は走ることを止めない。


 ――急がねば! あいつの元へ――大切な"相方"の元へ――!!


 ***


 地に積もっている桜の花びらが真っ赤な血の色に染まっていく。

 それでも、この武士櫻を守る為、世界を守る為、致し方ないのだ。


 何百人、何千人倒しても、巣から這い出る蟻のように次々と敵は襲いかかってくる――


 さすがの臣でも疲れの色が浮かび始めていた。


 その時、一瞬の間も置かずに二人の敵が同時に斬りかかってきた。

 臣は男達の刃をはね上げながら、体を、沈めて二人の間をすり抜けた。


 だが、敵は油断ならない俊敏な動きを身につけていた。

 臣が振り向いた時には、敵はもう眼の前に迫っていた。


「くそっ……避けきれねぇ……!」


 ――仕方ない。片目だろうが両目だろうが、くれてやる!


 臣はそう覚悟した――


 しかし、臣の眼先にあった二本の刃は止まり、ぐえっという声と共に崩れ落ちた。


「おいおい、お前の美顔をそんな奴らにくれてやるなよ。それでも"最恐の侍"と謳われた侍か?」


 振り下ろした刀から顔を上げたその男――龍二が臣の方を見て言った。

 突如、現れた龍二の挑発に臣がいきり立つ。


「うるせぇ! そんなことより、お前ここで何してる? 作戦は?」


 その間にも斬りこんでくる敵を薙ぎ払いながら、龍二は少しずつ臣との距離を縮めていく。


「んなもん知らねぇよ!」

「はぁ??」


(あんなに念入りに段取りしたのに……)


 本来ならば、各自の強さに合わせて割り振りした場所で、敵が居なくなるまで闘い続ける予定だったのだが――


「いいから! お前は早く自分の持ち場に戻れよ!!」

「いや! 戻らねぇ!!!!」


 臣の言葉を断固として拒否する龍二。


 ――ったく、訳わかんねぇよ。


「なんでだよ?」

「仲間が大変な時に助けるのが仲間だろ!」


 龍二の言葉に臣は一瞬、言葉を詰まらせた。


 ――"仲間"か……作戦無視とは、こいつらほんと無茶苦茶なんだから……


 臣がふっと笑みを浮べる。

 龍二も臣の元に来て、二人は背中合わせになった。


「馬鹿が……せいぜい足引っ張らねぇようにしろよ!」


 口元に笑みを浮かべ、刀を構える臣。


「おう!」


 刀を構え、同じく笑みを浮かべ答える龍二。

 そして、二人は黒い敵軍を真っ直ぐに見据える。


『――うぉおおおお―――!!!』


 二人は腹の底から気合をかけ、敵軍の中へ駆け出していった――


 ――今の俺達にはもう、怖いものなどない。

 何故なら、隣には頼もしい"相棒"がいるからだ――

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