その参―猛犬と烏―
武士櫻の裏手、櫻門北広場――
(む、今度は……)
恭徳が直感した途端に、突如――
闇の幕が裂け、鋭い太刀風と大兵の男が、矮軀の恭徳を押し潰さんばかりに襲いかかった。
ぱっと、恭徳の体が変わる。
二の太刀を振りかぶった大男が、微かに呻き、打ち込みかねた様子だ。
見るからに頼りなさげな容姿と見て、必殺の一撃を送りこんだのに、これを事もなげにかわした恭徳に大男は驚いたらしい。
しかし驚いたが、もはや引込みもつかぬ。
「やあ!!」
大声を発し、猛然として掬い切りに斬りつけて来た。
さっと恭徳の矮軀が沈み、同時に相手の胴目掛けて、一刀を叩きつけた。
大男は刀を落とし、恭徳を見つめたまま、がくりと膝をついた。
糸のように細い目に邪悪な光を宿す男だった――
そして、男の身体は勢いよく横転した。
恭徳は刀を引いた。が、背後に忍び寄る殺気を感じたのは、その瞬間だ。
恭徳は体をひねり、背後に迫るものを斬った。
敵の一人がどさりと呻き声一つたてることなく倒れ伏した。
しかし、間を置くことなく、次の敵が恭徳を襲う。
この戦場の真っ只中、息をつく暇などなかった――
***
櫻門屋根の上――
龍二はすっと柄に手をかける。
二人の覆面の男も龍二を見据えたまま身構えている。
――シュッ!!
覆面の一人が隠し持っていた手裏剣を投げつける。
龍二は素早く刀を抜き放ち刃先で弾くと、敵の胴を目掛けて振りかぶり薙ぎ払った。
――ドサッ!!
敵が屋根から落ちていく。
その直後――
「うぉおぉおぉ!!!!」
もう一人の敵が勢いよく刀を抜いて龍二に猛然と迫る。
――ガキンッ!!
金属音が響いた。
龍二と覆面男はお互いに刃を交わし、押し合いながら均衡を保つ。
触れ合う刃はカチカチと震え鳴く。
しかし力は相手の方が上だった。
龍二は徐々に押され始める。
「さぁて……」
龍二の口元に笑みが浮かぶ。
――カキンッ!!
龍二は男と交えた刃を弾き、がら空きになった腹部に狙いを定め切っ先を振るった。
敵が倒れ視界から消える。
素早さならば龍二の方が上だった。
龍二は地を蹴り出し烏の如く宙を舞い、その下の黒い群衆の中へと身を投じた――




