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二、軍長と少女
少女はたった1つある窓を見上げていた。何が見える、というわけではないが、牢の中の彼女にはそれしかすることがない。
すると遠くから足音が近づいてくるのに気づき、彼女はそちらを見やる。
彼女の牢の前に来たのは軍長だった。
「今日も少々帰りが遅かったな」
軍長の言葉に少女は顔色を変える様子がない。一瞬だけ軍長の顔を見ると、またガラスのはめられていない窓を見つめる。
「まあいい。お前の仕事っぷりには感謝しているんだ。」
軍長のこの言葉を少女は何度聞いただろうか。少しばかり相手が多いときは彼女がたった一人で戦いにでる。軍長はそのことを皮肉をこめて言っているのだ。
軍長がそれを言い始めた当初は、少女も多少の反応を示していたが、近頃はそれさえも面倒になるほどの頻度であるのだ。
「本題を忘れるところだった。明日も今日と同規模の戦がある。当然お前だけで行け。」
これも聞き慣れた言葉だった。隣国の玖穩国と少女の国は数日おきに戦を交えている。
特段おかしなことではない。
少女は特に反応を示さない。拒否をしても自分の意見など聞き入れられないのだから。
用件を伝えに、否、命じに来た軍長はすぐに去っていく。少女は彼が少しばかり笑んでいることに気がつかなかった…




