↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
32/37

番外編:狙われない王国

ギャグ回です。

 イスカリオ王国。

 戦いなら良いが、政治を任せたら馬鹿な事しかしない王子ハインツを追い出した国王シュナイデルは、落ち着いた気分で執務をしていた。

 とりあえず戦闘には使える王子は、勇者として外征をしている為、敵の目はそちらを向いている。

 敵の侵入が、無い事は無いが、とりあえず落ち着いた感じだ。

 そんな事もあり、国王は政治に専念出来ている。

「ハインツは戦いは強いが、馬鹿が治らない。

 いっそ、我が妹の子であるジグムントを政治上の後継者とし、軍事とは分けようかな。

 実際、性格が穏やかで戦いよりも民政に前向きなジグムントを推す声も多いしな」

 国王はそんな事すら考えていた。

 廷臣の多くは、

(陛下が余りに頭部への打撃をし過ぎたから、王子が残念な頭になったのでは?)

 と思ってはいるが、口には出せずにいた。


 そんな折、シュナイデル国王が口に含んでいた紅茶をブーっと噴き出す事件が起こる。

「王族のジグムント公が、広場で裸踊りをしています!」

 馬鹿王子であるハインツですらしない大失態。

 噴き出したワインで汚れたテーブルを片付けさせつつ、シュナイデルは直属の部下を派遣して、奇行の甥を回収させた。

 そしてそれは、驚くほどあっさり終了する。

 裸踊りを終えたジグムント公は、そのまま倒れ、スヤスヤと寝入ってしまったのだ。

 回収された王宮にて目覚めた彼は、何も覚えていないようである。

「人格が安定し、政治的にも中庸なお前が、何故あのような事をした?」

「あのような? 何のことですか、伯父上」

「お前、王都の広場で全裸になり、『シ〇ゴー、〇ンゴー!』と叫びながら裸踊りをしていたんだぞ」

「は? 何ですか、それは!」

「事実を言っておる……」

「私は何も覚えていないのです……」

 目を見る限り、嘘は言っていないようである。

 そんな国王の元に、急報が入る。

「陛下! 議会前において庶民院議長が裸踊りをしています」

「……何なんだ、立て続けに。まあ、王宮の目と鼻の先だ。わしも出る」

 そして駆けつけてみると、堅物で有名な議長が「ぞーおさん、ぞーおさん」と言いながら裸踊りをしていた。やめさせようとするが、驚くべき力で踊り続ける。

「まるでキ〇ガイのようだ」(1967年当時は伏字なしで大丈夫だった)

 ひとしきり踊ると、彼は力なく倒れ、何もなかったかのようにスヤスヤ寝息を立てていた。




 魔獣攻撃パーティ「MAP」の司令部にて。

「陛下、ここ数日で突然裸踊りをする事件が多発しています。

 いずれも真面目、実直、地道、有能な人物が突然裸踊りを始めるという共通点があります」

「ふむ……。つまり、最初から馬鹿な奴の様子は変わらないのだな?」

「左様です」

(馬鹿息子がこんな時に傍にいたら使えたかもしれんな。

 だが、追い出したのはわしだし、文句を言う事は出来ん)

 しかしMAPの中でも事件は起こる。

「陛下! ヒンメルバウム隊員が裸踊りを始めました」

「なんだと! どこでだ?」

「中央作戦室でです」

 隊長して国王は急行し、鳩尾に重い一撃を加える。

 MAPという魔獣・怪獣と戦う隊員である、いかに「どうせ効果無いもんな」と言っていても、武器を扱い民衆を助ける隊員は、王族や議員よりも力が強い。国王でないと、鎮圧するには時間がかかっただろう。

「ん? なんだこれは?」

 胃に一撃を食らった隊員が吐き戻したものの中に、見慣れぬ食べ物があった。

「陛下! 今度は医務室でオールドブリッジ隊員が裸踊りを始めました」

「次から次へと……。だが、原因解決につながるかもな」

 そう言って現場に急行、再び重い一撃を胃に打ち込み、彼もまたリバースをさせる。

 すると同じ食べ物が吐しゃ物の中にあるではないか。

「錬金術班、ただちに二人の胃の内容物を調べよ!」


 やがて意識を回復した二人は、一様に同じ事を言った。

「市場で新しい屋台がありました。そこで『おでん』とか言うものが売られていました。

 ペリシ共和国連合で流行っている、海外の料理だそうですが、まだどんなものか分からないだろうからお試しで無料で良いです、とただで御馳走になりました」

「無料試供品という事か」

「はい、行列が出来ていました。私も、ものは試しといただきました。

 直前で食べていたのはそれだけです」

 この証言に加え、胃の内容物から麻薬のような物質が検知されたという報告も入る。

 原因は突き止められた。

 その屋台の者を取り押さえないと。

 MAPに加え、王国騎士団も動員され、城門を封鎖し逃げられないようにした上で、屋台主を捕縛に向かう。

 命令を下すと国王は自分の執務室に戻った。

 だが様子が違う。

 部屋の前で既に変な感じがした。

 中からは『あーっとハル、四球を選びました。ここで満を持して二番ハインツ登場だ。おっとベースボール仮面、ここで投手交代です』という中継音声が流れてくる。

「何者だ!」

 戦闘態勢で自室に突入する国王。

 だが、そこは彼の執務室ではなかった。

「待っていたよ、シュナイデル三世。いや、こう皆がいう『赤いあいつ』……」

 直後、会話にならずその頭部がやたらデカい怪人はタコ殴りにされた。

 しばらくして……。

「お前は何者だ?」

 落ち着きを取り戻した国王が問う。

「……対話の前に暴力とは、これだから人間種は野蛮なのだ」

 ちゃぶ台が置かれた部屋の中で、痛む箇所をさすりながら怪人が答える。

「その言いよう、お前は魔族か?」

「如何にも。だが安心したまえ。今回はただの実験だ」

「実験だと?」

「人間種はおかしな生物だ。本能にまるで忠実でない。心の奥底に情動がありながら、それを抑えつけて生きている。だから私は考えたのだ。それを解き放ってやれ、と」

「それがあの麻薬成分か?」

「え? 麻薬? 私はそんな野蛮なものは使っていないぞ。

 あれは魔界に生えている香辛料で、性欲増大に効果があるものだ。

 堅物の癖に禁欲主義というのは魔界でも問題になっていてね、子供が欲しい夫婦が相方に処方している」

「……えーっと、魔界の食べ物が人間種で変な効果になるとか考えなかったのか?」

「だから実験だと言ったじゃないか! とりあえず実験は失敗に終わった。

 人間種が本能に目覚め、猿のように情愛行動にかまけていたら、魔界を攻めようとは思わなくなる。

 そう思ったのだが、全くの見込み違いだったよ」

「帰れ! だが、もう一個聞きたい事がある。この部屋は何だ?」

「ここは私の部屋だ。空間魔法を使って、貴殿の部屋と臨時に入れ替えさせてもらった」

「この異国情緒、これが魔界の流行なのか?」

「いや、これは私が同盟相手である悪の秘密結社アクジャネカのマリエル大首領から教えてもらったものだ。

 なんとなく気に入ってしまった。

 そして、今度の実験について相談したら、詳しく作戦を立ててくれたのだ」

 古びた昭和の六畳一間のアパートに、ちゃぶ台が置かれているのは、私の趣味ではないが、そうすべき部屋であろう。

「……令嬢が関わっていたのか」

 国王は事態が呑み込めて、溜息を肺腑の底から吐き出していた。

「空間魔法もあの方が使ってくれたのだ。

 先ほど私に帰れと言ったが、帰るのは貴方の方だ、国王。

 この部屋は間もなく元の魔界に戻る。

 君は一回外に出て、空間が元に戻るのを待ってから入るが良い」

「分かった。お前は見逃してやる。もう二度と関わるな」

「言うまでもない」


 そうしてしばらくすると、部屋は元の国王執務室に戻った。

 結局、屋台はどこにも見つからず、事件は迷宮入りとなる。

 そして共同王位にジグムント公を推す声は激減してしまった。

 裸踊りの件は高くついたようである。


「報告します、マリエル大首領」

 私の元に連絡が入った。

「はいはーい、実験はどうだった?」

 その返答は暗いものだった。

「ダメでした。奴ら、自分の配偶者の寝床ではなく、衆人監視の中で服を脱いでしまったのです」

「あらあら~」

「人間種ってダメですね。もう狙うまでもない。

 建前で性欲よりも仕事を優先するなら、千年後には彼らは滅亡するでしょう。

 我々は何もする必要はない。ただ彼らが滅びるのを待てば良い」

 長命種の多い魔界の住民らしい結論に、人間種である私は苦笑を禁じえなかった。

特撮パロ好きなのに、普通の異世界ファンタジーに傾いていたので、ギャグ回を挟みました。

シナリオ展開上、ギャグ回だけじゃ進みませんが、ギャグ回がないと書いてて発作(ギャグを入れないと死んじゃう病)が出るので。

今後も同じように番外編を、章と章の合間に入れようと思っております。

次回は通常パートです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。