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とりあえずの側近を作ろうか

 私が作った塔型ゴーレムが魔の森に近づく。

 余りの巨大さに、魔物も襲って来ないようだ、つまらん、つまらん……。

 では、魔の森直前で一回停止しよう。

 この塔型ゴーレムの中には、守備兵十人、牢獄の監守十人、世話係の女性が一人詰めていたはずだが……。

「お嬢様!」

 そう声を掛けてきたのは、幼い頃から私の世話をしてくれた侍女のサラ。

「サラ、貴女がなんでここに居るの?」

 私の問いにサラは、

「お嬢様の世話は私がします。旦那様にお頼みして、配置替えさせてもらったのです」

 という事だった。

 うん、ありがたいねえ。

 でも、そんな良い人を悪い私の巻き添えにしてはいけない。

 私は塔にいた者を集めると、やっぱり一回言ってみたかった台詞を吐く。


「逃げたくば逃げるが良い。追いはせぬ。帰って公爵に伝えるが良い。戦場で会おうとな!」


 うわあ、カッコイイわぁ! 我ながら決まったと思う。

 君たち、真っ青になっているけど、このカッコよさは分からないのかなあ。

 とりあえず兵士十人のうち九人は、退去すると申し出た。

 でも……、

「自分は残ります。自分はマリアお嬢様が立派な人間と聞いています。

 そのお方の警護を申し付かった以上、最後まで努めます」

 と言っている兵士が一人だけいる。

 私が立派だから残るって? それなら許可しましょう! 見込みがあるじゃないの!

「あなた、名前は?」

「はっ! オベルジュ村のヤンと言います」

「提督?」

「え? 何ですか?」

「いや、なんでもない。ごめんね」

 そう言えば、海軍がないイスカリオ王国では、提督(アドミラル)と言っても通じないんだった。

 とりあえず、良い名前のこの兵士と、

「私が残らなかったら、誰がお嬢様にお仕えするのですか!」

 と言ってきかないサラは残し、残りは魔の森の奥地に入らない段階で開放した。

 城まで結構な距離にはなるけど、武器は持たせたし、歩いて帰れるだろう。


 そして……、

「牢獄にはお嬢様以外に三人の囚人がいました」

 との事。

「まず部下を訓練と称して殺していた元兵士長です。

 次に薬師と称して怪しげな薬を飲ませ、村人を殺した男がいます。

 そして三人目はブルジア公爵領を荒らしていた盗賊の首領です」

 そうヤン兵士が罪状を伝えてくれた。

 父(パパ)もちゃんと治安活動してくれていたようね、知ってたけど。

 そして、被害者が出ている以上、こいつらは使い捨てにしても心は痛まない。

 私はヤンに、三人の所に案内するように命じた。

「その前にお伺いしたい事があります」

 ヤンが居住まいを正して尋ねてくる。

「お嬢様の目的は何なのですか?」

「え? 悪の秘密結社を作る事」

「それで何をなされようとしているのですか?」

「フフフフ……この世は王国も魔界もぬる過ぎる!

 私という悪の巨魁が立つ事で、この世を地獄に変えてやるのだ!」

「お嬢様……」

 私の自分でも分かる中二病な振る舞いに、サラがツッコミを入れて来た。

「私はお嬢様が小さい時からお世話していますから、恰好つけているのが分かりますからね!

 どうか本心を聞かせて下さい。

 ヤン兵士も、お嬢様が本当は凄い事を考えていると思って、信じて着いてきているのですよ」

「その通りです、お嬢様。どうか、我々にだけは本心をお話し下さい」


 ちょっと面倒くさい二人が残ったかもしれない。

 でも、まあ本心を話しても良いかもしれないね。

 腹心ってものはどうしても必要だもの。

 私は、私が目指す真の目的を話してみた。

 すると……、

「お嬢様はそんな素晴らしい事を考えていらっしゃったのですね。ああ、着いていくと決めて正解でした……」

「流石はサラが幼い時からお慕いして来たお嬢様です。感激で涙が止まりません……」

 とこんな感じで泣いてしまった。

 なんて大袈裟な!

 恥ずかしいから、私がこれから行う中二病な作戦については話さない事にするわ!


 こうして私に心の底から従う二人を連れて、囚人の容れられた牢を訪ねる。

 そこは、わずかだが日の光が差し込んだ私の牢とは違い、日の当たらぬ湿った石牢であった。

「あんた、何者だ? と聞きたいが、その前に質問がある。

 なんでこんなに揺れ続けているんだ?」

 盗賊の首領が聞いてきた。まあ、そうなるだろうねえ。

 そこで私は、とりあえず何をやっても許してくれる二人を従えながら、

「我が名は悪の秘密結社・名称考え中の大首領マリエルである。

 俗世間での名前は、マリア・ド・ブルジア、領主の娘であった」

「なんだって? あんた、ブルジア公爵令嬢か?」

 私の事を知っていたようで、そこは褒めてあげる。


 あ、私の名前だけど、色々考えた結果、悪魔っぽくマリエルにする事にした。

 最初マリ男爵(バロン)にしようかと思ったけど、なんかラバー衣装でヘルメットをかぶらないといけない気がしたから、やめました。うん、後々女優として出世はしそうなんだけどね。

 本名のマリアのままだと、「戦うトレンディードラマ」戦隊のリーダーの恋人でありながら、誘拐されて洗脳されて敵の幹部になった人物と同じだから、それもやめた。

 こんな風に、自分の名前を考えていたから、秘密結社の正式名称をまだ決めてない。

 濁音連発の名前の方がカッコイイと私は思ったけど、

「私は『マリア様友の会(悪)』が良いと思います」

「自分は『悪い子はいねえがぁ帝国』が良いと思います。お嬢様は本当は神様寄りなので」

 とおかしな意見が出て来たので、ここに来るまでに決まらなかった。


 さて、話を戻しましょう。

「この牢獄は、今や秘密結社の拠点となって、移動要塞として使っている。

 歩いているから、揺れているのだ」

 と質問に対する返答をしてあげたのに、

「え? なんだそれは? 信じられない、どういう事? 何が起きているんだ?」

 とパニックになっている。

 教えてあげた甲斐がないったらありゃしない。

 そんな囚人を、精一杯見下ろしながら、私は冷酷に告げる。

「お前、処刑されたいか? それとも私に下って悪の一員となるか?」

「え? 公爵令嬢が悪? なにそれ? 頭大丈夫?」

 失礼な!

 私は重ねて告げる。

「お前は処刑対象だ。だが、私に従うならば、死ぬまでは生かしておこう。どうだ?」

 ようやくパニックが収まった盗賊の首領は、

「死にたくないし、悪の手先になろうじゃねえか」

 とやっとちゃんとした答えを返して来た。

 よろしい。

 私は他の二人についても同じ質問をする。

 その前に、なんで揺れているのかを聞いてくるから、同じやり取りを二回繰り返す事になってしまった。

 そして、やはり二人も悪の手先になるとの事。

 うん、悪党はやはり使い捨てにするわ。

 もし悪の手先になるのが嫌だと言ったら、公爵領に一筆、反省しているから罪一等を免じて欲しいと持たせてやったんだけどね。

 まあ、捨てても惜しくない駒を手に入れたから、残酷な事をしてあげますわ。

 いえ、残酷ではないです、彼らは大幅なパワーアップをする事になるのですから。


「なんで我々を柱に縛りつけている? 処刑しないのではなかったのか?」

「悪の手先だと言うから乗ったのに、騙したのか?」

「わしの頭脳は使い勝手が良いぞ。今からでも処刑は無しにして、わしだけは救わんか?」

 三者三様に何かを言ってくる。

「処刑なんかしないわよ。

 せっかくだから、実験台になってもらうだけよ」

 そう言うと、三人とも私を罵って来た。

 私にはスキル「世界の真理(ブラフマン)」があるから、実験しても失敗はしないのよ。

 ではあるが、悪党一々教える義理はない。

 私は魔法陣を描くと、そこに動物を配置した。


「錬成! 合成獣人(キメラ)!」

 私は魔法陣にエネルギーを流す。

 私はスキルにより、絶対失敗しない錬金術、エネルギーの効果的な循環法、そしてこの世界の空間から無限のエネルギーを得る能力を取得した。

 だから、合成生物の錬成は問題なく成功。

 柱に縛りつけた鎖を外してやる。

 彼らは、変わってしまった自分の見た目に混乱していた。

 無理もないけど、ここは話を先に進めないとね。


「まず元兵士長、貴方の名前はコボルト男だ!」

 拾ったコボルトと合成された者に名づけを行う。

 一回やってみたかったんだ、これ!

「エセ薬師、お前はイカと合成したから、これからはイカデーモンと名乗りを改めろ!」

 かなり不服そうだが、無視する。

「盗賊の首領、お前は蛇と合成したから、ヘビヘビンダと名付ける」

 四人目がいたら名付けたい怪人名もあったけど、その材料となるヒルはいたが、カメレオンが見つからないから断念した。

 とりあえずこの三人を部隊長としてこき使う事にする。


 そして、不満そうな三人にも私の方針を告げないとね。

「お前たち、いつでも私の首を狙って良いぞ。

 悪の組織たるもの、部下から寝首を掻かれるくらいで丁度良い!

 私が狙いのは、デ〇ザー軍団のようなギスギスした実力者集団なのだ!」


 三人が呆気に取られていたのは、実に残念の極みです。

 悪なんだから、もっと覚悟が決まってないとね!

ヤンは姓の楊や梁だけでなく、ヨハネに由来する名前として東欧やオランダとかにいますので。

ヤン・フスとか、江戸時代のヤン・ヨーステンとか。

この世界にヨハネがいたのかって?

そこはご都合主義の世界なので、ご容赦を。

(世界の成り立ちは後の方で書く予定)

19時にも更新します。

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ポーランドのヤン大帝とか。
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