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彼と彼女の儀式  作者: 葉月スピカ


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瞳子①

「大丈夫だから心配しないで」と、雪乃先輩からのメールに返信して、一息つく。


あちこちにメッセージがいっぱい。

ほとんどが口汚い罵倒だけど全てに目を通す。それもわたしにとって一つの儀式。

期待したような内容はまるでなくて、覚悟していたけれど少し淋しい。

そういう淋しさを憶える時、覚悟していたなんて嘘なんだなとわかる。

わたしは多分、甘い期待をしていたんだなって。

人は自分自身にも嘘をつくらしい。


わたしは我ながらまあまあ愚かなのだけど、愚かなりに、やれることをやってみようと思って、今はその最中。そのせいか、誰か他の人の人生を歩んでるような不思議な浮遊感がある。

雪乃先輩もきっと、わたしらしくないと思ってるんだろうな、わたしだってそう思ってるしね。


これはどこから始まったストーリーなのだろう。

みんなそれぞれ自分なりのストーリーを持って生きていると思うのだけど、わたしにもささやかなわたしなりのストーリーがあって、一応起点らしきものもある。あの起点から、ifによって無限な樹形図を描きだすことができるかもしれない。


でも現実はそんなこともなく、あっさりとしたつまらない図でしかなかった。

少なくともあの時までは。


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