瞳子⑪
あの日、レターパックが届いた日、彼に届いたというメールを送ったのに彼から返信が来なかった。
わたしたちはあまり連絡をとりあわないのだけど、こちらが送ったメールをスルーすることはない人だったので、妙に気になった。届いたばかりのレターパックを開けたものの入っていた原稿の一行目を見て、それ以上読むのを躊躇ってしまったこともあって、彼と連絡がとれなかったことがどうしようもなく気になり、わたしは珍しく追いメールをした。でも返事はなかった。
彼は新聞社に勤めていて、今は海辺の小さな街の支局長だった。
彼は、左遷だよ、飛ばされたんだと笑っていた。私はよくないとわかっていたけれど支局の電話番号を調べてかけてみた。でも誰も出なかった。
動揺しながらいろいろと検索してみて、そして事故の記事を見つけた。郵便局の前で居眠り運転の車が歩行者をはねた交通死亡事故。被害者は彼だった。
日にちから考えると、多分だけど、レターパックを出しに行った時にはねられたのだと思う。
人は、自分のために手を汚すことは躊躇してしまうけれど、でも、誰か人のためなら、誰かのためという大義名分さえあればどんなことでもできてしまう。
普通ならしない行動でも、いつもの自分とは違うという自覚をしつつ、それをこなせてしまう。
彼のためだったからやれたのだと思う。
でも彼のためと言いつつ実は自分のためでもあった。
彼の書いたものをなるべく多くの人に読んでもらい、楽しんでもらうことがわたしにはどうしても必要だったから。
それがわたしにとっての免罪符で儀式だった




