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彼と彼女の儀式  作者: 葉月スピカ


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瞳子⑩

最初は、何かの賞への応募を考えていたけれど、彼の言う通り、彼の作品は枚数が中途半端で、なかなかこれという応募先がなかった。


数少ない賞に応募してみても、何の連絡もないままだった。

わたしはどうしても、彼の作品を、表に出したかった。読んでもらいたかった。


わたしの短歌はSNSで公開していて、長年続けてはいるけれどフォロワーは微々たるものだ。それに小説は文字数があるからSNSは向かない。小説投稿サイトで発表してみたら少しは手応えがあるかと思って、彼の筆名でアカウントを作って投稿してみたけれど、ほとんど読んでもらうことはできなかった。別のアカウントを作って宣伝まがいのサクラっぽいことをしてみても、感想一つ、評価一つもらえなかった。


ジャンル的にも流行りものではないし、題材も地味な彼の作品を読んでもらうには何かが必要だと思った。話題にならなければ目にとまらない。ポジティブなことで話題になることはいろいろと考えてみたけれどどう考えても難しかった。


比較的容易なのは、スキャンダルだと思った。


わたしのアカウントが特定されるきっかけとなった掲示板の書き込みのいくつかは、わたし自身が書きこんだものだった。わたしのアクセサリーやバッグ販売用のサイト、わたし個人のインスタ、わたしの短歌のアカウント、そして彼の筆名での小説投稿サイトのアカウントはつながるようにしてあったので、掘っていけば、小説投稿サイトにつながるのは自然な流れだった。

でも、だからといって作品を読んでもらえるのかは自信がなかった。


だけど、小説投稿サイトへのつながりが掲示板で書き込まれた途端、ページビューは跳ね上がった。

わたしの短歌用のアカウントのインプレッションも凄い伸びだった。

小説のほうのページビューは跳ね上がったけれど、メッセージは来るものの評価はほとんどもらえなかった。評価がついても悪意による低い評価や、罵詈雑言のメッセージばかりだった。

でも、それは辛くはなかった。それが当然な反応であることはわかっていた。それでも誰かの目に触れて、読んでもらえて、いつか誰か一人でも彼の作品を好きだなと感じてくれたら、何かが報われる気がした。


わたしは複数作っていたサブアカウントで、小説投稿サイトのリンクを貼って、これが例の女の小説らしいと何度もポストし続けた。そのせいか、ページビューは一時だけの跳ねではなく、数日たってもなかなかのアクセス数を見せていた。そんな中、少しずつ、高い評価をつけてくれる人や、ちゃんとした感想を書いてくれる人、DMに優しいメッセージを書いてくれたり面白かったと言ってくれたりする人も現れた。心底、救われた気がした。


でも、まだだ。

一番期待している欲しい連絡はまだ来てない。


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