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BC5xxx年、超古代文明は富士の地にあった……てか興した  作者: 枝垂みかん
第一章

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19/31

巫女さまレポート②


推定「憑依転生現象」当該地における技術体系および周辺地理調査ノート


調査対象:

 フシの大山北麓・セノ海湖畔の集落、およびその北方の御坂山地・甲府盆地・金峰山


調査目的:

 広範囲における既存技術を再調査し、新規導入を予定している技術との親和性を確認する。

 あわせて、調査の過程で生じた不可解事象および調査者自身の所感を記す。


調査者:

 巫女/私立F大学 文学部考古学専攻2年 柵山さくら


調査期間:

 セノ海周辺フィールドワーク開始より、古関における銅精錬確認まで。およそ二か月強。


調査地:

 セノ海湖畔集落/精進/古関/甲府(カヒの地)/金峰山(黒平・水晶峠)



1.既存技術と発見物


丸木舟

 セノ海にて運用済み。調査者の見落としにより、初期の移動計画に組み込めていなかった。


孔雀石・黄銅鉱・緑柱石・褐鉄鉱

 金峰山の黒平および付近の洞窟にて確認。

 いずれも自然鉱物として産する。

 現状、褐鉄鉱は扱う技術がなく放置。



2.新規導入技術


記録系

 日時計カレンダー、貝殻チョーク、土器黒板、カタカナ五〇音表。

 いずれも子供でも運用可能な設計とした。

 カタカタは、時任ノ媛・ソバツキ・カワラケノ彦への伝播を確認済み。

 またカワラケノ彦は、上記の道具を複合的に使用し、簡易的な業務日報を作成。


生活・建材系

 再焼成土器。シャモットを加えた粘土を使用。

 レンガの型枠。スズ竹と麻紐により均一なレンガを再現する枠として作成。

 再焼成レンガ。上記の二つの組み合わせ。

 木炭。より用途に応じた代替品も検討中。


冶金系

 炉、精進産レンガを使用。古関に建設。

 吹子は革袋を板で挟み、アコーディオンのような形状で作製。

 上記の組み合わせにより、孔雀石より銅の精錬に成功。

 一部、黄銅鉱よりヒ素銅の精錬を確認。再現性は低く、偶然の産物である。

 緑柱石の鉱床にて発見した銅鉱石から、ヒ素銅よりも硬質な変化を示す金属を精錬。ベリリウム銅に近い合金ではないかと推測する。詳細は以下にて。



3.不可解な事象


文字

 現地少年のオヒトは、文字という概念を認識していた。しかし読み書きまでは至らず。

 彼の出身集落(河口湖周辺)に由来する可能性あり。

 集落自体は現存せず、検証は諸事情への配慮により保留中。

 また、現地女性のソバツキもカタカナ習得の速度が際立っていた。※注1

 


ベリリウム銅

 金峰山の黒平から水晶峠へ向かう道中の洞窟内、緑柱石の割れ目に染み込む形で原鉱石を発見。

 AD20xx年代においても、自然界での発生例として前例はない。※注2

 火山活動による銅の溶融・浸透が原因と推定するが、確証はない。極めて希少な素材なので、用途の検討中。詳細は所感にて。


※注1 これらの件は調査者の主観や憶測が多分に混じるため、どちらも参考程度に。

※注2 調査者の地学(鉱物学・鉱床学)の知見の低さによる誤解の可能性あり。



4.全体所感


 結論は前回レポートと変わらず、当地の物質文化や風俗は縄文時代後期の特徴を示している。

 しかし今回の調査での重要な発見として、織物など製作技術もフシの地(調査者が所属する集落)との交易に頼るものだった。

 伝播の過渡期ということで説明もつくが、違和感を覚える。


 別視点で、当地の風俗において「ヒメヒコ制」はスタンダードではないようだ。フシの地特有の統治形態であると判明した。

 甲府の集落には同様の制度が見られず。

 また、住民の行き来や入れ替えなども珍しいことではない点も、今後の参考にするべきだろう。


 併せての気づきとして、古関を経由地に甲府へのルート(精進道)を開拓したが、これまで利用していなかったのが不思議なほど不便は少なかった。

 セノ海西側、身延方面から富士川を北上するルートは未調査だが、なぜこちらばかりを利用していたのかは調べてみる必要あり。


 木炭や再焼成レンガの製作から銅の精錬まで、従事者の知見や技量に助けられ、その進捗は想定以上だ。

 しかし留意するべき点も見つかった。

 偶発的に精錬されたヒ素銅は有用だが、精製段階においてヒ素の毒性に注意しなくてはならない。

 よって、従事者の安全のためローテーション制または任期制の導入を検討。

 技術の有用性と安全性のバランスを取る仕組みが、今後さらに必要となってくる。


 締めくくりに、今回最大の成果物であり違和感でもあるベリリウム銅(推定)の使い道についてを。


 実はもう決めてある。

 緑柱石の洞窟を綿密に再調査すれば、まだ他に見つかるかもしれない。だが、おそらくそれほど多くは手に入らないだろう。

 なので、銅製品を普及させるうえで最も象徴的な扱いにしようと考えている。それにはやはり、剣が最適ではないか。

 基本的に、弓や斧など当地の武器は狩りの道具なのである。しかし剣に至っては祭具なのだ。対人用とは考えられていない。

 そういった儀式的な意味でも、住人に新しい物を受け入れてもらう土壌としても、剣は有効ではないか。


 長々と理由を述べたが、ここであえての言及を。

 この決定は調査者の個人的な感情によるものではないと断言しておく。

 強調しておくけど、けっして『オヒトくんをナイト扱いした』とかそういう浮ついた考えじゃない。ないったらない!



[巫女メモ]


 今回の調査とは直接関係ないけど、オヒトくんから重要な指摘を受けたので、メモっておく。


 名付けについて。


 これまでも子供に対しては配慮してきた。まだ衛生面もなにも生活環境を変えてない以上、慎重になるべき。

 もし子供に何かあったとき、母親が受けるメンタルのダメージを考えたら、無責任に名前をつけてなんて勧められない。


 それとは別に「巫女という立場からの名付け」について。

 言われてみれば、私がどれほど都合よくそれを使ってきたかを思い知らされた。

 これはオヒトくんが言いたかったこととは違ってそうだけど。


 もしかしたら想像以上に、みんなの、役目と名前に対する意識は強いのかもしれない。

 だって、これまで実質4時間未満の労働が当たり前だった人とは思えないくらいのモチベーションで働くんだよ。

 もちろんAD2000年代の労働倫理に触れるほどブラックな働き方じゃないけど。それにしたってだよ。


 いまになって、指摘の前にあった「ローテーションを組むか任期制にするか」という文脈を振り返れば、よくわかる。

 別の人に仕事を任せるってことは、その人の自尊心をキズつけることになりかねないんだって。

 いくら「健康が理由で、失敗とか関係ないよ」と説明したところで、そのままは受け入れてもらえず、たぶん周りの目も気になるはず。


 そんなつもりじゃなかった、なんて言い訳にならないよね。

 かといって、いまさら取り下げるわけにもいかないし。

 だったら全員公平にとも考えたけど、さすがに私の認知力がキャパオーバー。あと語彙も足りてないか。


 わかってる。責められてるんじゃなくて、あたしが気づいてないから教えてくれただけ。それはわかってるんだけど、なんかちょっとヘコむ。

 でも、これもオヒトくんなりの「守ってくれる」だったり? もしくは役目? たぶんそっちだ。だってかなり役目オバケなところあるし。


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