↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BC5xxx年、超古代文明は富士の地にあった……てか興した  作者: 枝垂みかん
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
13/31

カタカナ


「午前中、陽が真上に昇るまでは三人一組に分かれてもらいまぁす。あたし、オヒトくん、スオウさんはここで拠点づくりとお昼の支度」


 そして火守ノ彦、山辺ノ彦、川渡ノ彦は、それぞれ二名ずつを連れて、三方の山を見てまわることに。


「特定のなにかを探してほしいわけじゃなくって、でもたぶん、ここらへんは石材の宝庫だから。もし役に立ちそうな物を見つけたときは、その位置を覚えておいてほしいのと、サンプルは持ち帰ってね」

「「「……さんぷる⁇」」」


 そうなるよな。


「おそらく巫女さまは『すべてを持ち帰らずともよい』と仰ったのでは。どこになにがあったのか知ること自体を主な目的とされていて、そのなにか(・・・)にあたる物を『さんぷる』と呼んだ。つまり、一欠片で構わないと仰れたのかと』


 だいたい合ってます? と巫女さまに目を向けたら、


「……なるほどぉ。オヒトくんはそういうふうに巫女リンガルしてたのかぁ」


 ひとりで納得されてしまった。


「ふむ。見つけた物を持ち帰るのはよしとして……」

「残るは位置かぁ。なら、進んだごとに貝殻チョークで印をつけていけばいいんじゃないか?」

「だな。とりあえず今回は二〇歩くらいの間隔ってことでどうだい」

 

 彦らは頷き合い、組ごとに山へ向かう。

 それが見えなくなると、


「巫女さま、我らは柵を組むのであったな?」


 周防ノ彦が手順を確かめた。

 昨日のうちに見つけておいた岩穴に、運んできた煮炊きの道具など置いておける物を隠しておくんだ。

 柵は、動物に荒らされないよう入り口を隠すために使うそうだ。


「材料は新しめな倒木を集める方向で。多めに持ってきてここで乾かしておけば、次に来たとき、薪にも資材にも使えるから」



 フルセキに拠点づくりをはじめてから——およそ二か月。

 このころには、二日ほどでミサカ山地を越えられるようになっていた。


 これまで向こう側のカヒの地(巫女さまはコウフと呼ぶ)との行き来には、セノ海西側の山々を越えて、大きな川沿いを進まなければならなかったと聞く。

 巫女さまが描いてくれた地図を見ると、どれだけ遠回りしていたかがよくわかる。

 ただ、


「たくさん運ぶ場合は、川を使える身延ルートの方が便利かな」


 とも言っていた。


 ちなみに東西南北の方角と併せて、『時』についても教わった。

 時は、年、月、日、時と分けられるそうで、三〇日で一か月、一二か月と正月五日で一年なのだそうだ。


 近ごろは、童でさえ日時計カレンダーを見て、朝昼夕の時の移ろいを理解している。すごいことだ。


「それもこれも時任(ときとう)さんがこまめに記録をつけてくれてるおかげだよ。正午がわかれば、あとは一二等分するだけだもん」


 しかしまだ、いまが一年のうち何月なのかはハッキリしていないとのこと。たしか「たぶん夏」とも言っていたか。



 そういえば最近、集落にいる日でも巫女さまの(むろ)へ行くことが減った。というのも、


「またですか」


 だいたい広場で食を済ますからだ。

 僕が言うのもなんだけど、


男弟(おひと)どのからも仰ってくださいな。せめて食は室でなさるようにと」


 この側付きの言い分もわからなくもない。ことあるごとに五〇段の登り降りは、しんどいのだろうからな。

 だからか、このごろ僕への当たりがさらに柔らかくなった。


「ゴハンはあったかいうちに食べた方が美味しいでしょうが。それとも毒見がいる?」


 そうか。わざわざ巫女さまが離れた場所で食をとるのは、そういう理由もあったのかもしれない。


「必要かもしれませんね」

「ですよね、ねっ、男弟どの!」


 なんだか巫女さまの調子が側付きに移ってきているような……。

 それはきっと二人が、僕の知らないところでそれだけ多くを話しているということなんだろう。


「あたし、みんなを疑ったりなんかしてないんだけど。あと恨まれるようなこともしてないし」

「しかし食あたりもありますので」

「……最近、暑くなる一方だもんねぇ」

「はい。いままでは僕が先に食してから届けていましたから」


 これも僕の役目の一つ。

 なのでこれからは室で、と口にする前に——


「じゃあ、これからはオヒトくんもいっしょにゴハンを食べよう。これで解決っ」

「「え」」


 僕と側付きの声が重なった。


「なにげに名案かも。いろいろと解決しそう」


 巫女さまなら僕の側付きに対する苦手意識くらいわかっていそうなのに、あんまりだ。


「ソバツキさんも、引きこもってばかりは健康によくないって。階段の登り降りでヒップアップヒップアップ、もっとメリハリボディになっちゃわなきゃ」

「——な、なにを仰りますかっ」


 そんな恥ずかしげにこっちを睨まないでくれ。僕はなんとも思ってないぞ。

 あと巫女さま、手つきがはしたないです。


「ダ、ダメだからねっ。ソバツキさんはオヒトくんには年上すぎるって。あたしそんなの認めないしっ」


 二人してなんなのだ……。


「あの、側付きの肉付きになんか興味はありませんけど」

「上手い! でも言い方ひどぉ」

「ぐ、ぐんぬぬぬっ——わかりました!」


 なにが?


「今後は室ではなく、こちらで食をとりましょう」

「ホント!」

「ええ、まことです。して、巫女さま」

「ん?」

「さきほどの、登り降りが身体の線に及ぼす効き目について、詳しく!」

「ああ、ダイエットが目的かぁ」 


 そういうことか。

 だいたい僕にもわかっ……ってことはだ、側付きを焚きつけたのは僕ってことにならないか⁉︎

 こっちを睨んでるから、たぶんそうだ。


「せっかくソバツキさん『カタカナ』を覚えてくれたんだし、これからは降りたついでに、みんなにも広めといてね」


 なにやら巫女さまが重要そうなことを言っている気がする、するけど、いまはそれどころではない!

 久しぶりに浴びせかけられた側付きの冷たい眼差し、細められた垂れ目に、僕の肝は縮みっぱなし。

 一見すると優しい顔つきなだけに、余計に苦手……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。