↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BC5xxx年、超古代文明は富士の地にあった……てか興した  作者: 枝垂みかん
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
12/31

無自覚


 日のあるうちに、目的の『フルセキ』に到着した。

 巫女さまの言っていたとおり、ここは山間(やまあい)にぽっかり開けた土地で、二俣の川も流れている。


 さて、どこに腰を落ち着けるのか?

 これについては巫女さまと、


「ヒノモリさん、雨は大丈夫そう?」

「はい」

「でも念のため」

「そうだね。カワタビさんの言うとおり。川から離れた高めの場所にしようか。あのあたりとか、どう?」

「「よいかと」」


 火守(ひのもり)ノ彦と川渡(かわたび)ノ彦との短いやり取りで決まった。

 と、そのとき、山辺(やまのべ)ノ彦が鹿を見つけた。


「あっ、親子で川の水飲んでるぅ。可愛い〜い」

「巫女さま、お静かに」


 一言告げるなり普段は穏やかな目がスッと座る。

 山辺ノ彦は無言で弓を手にし、狙いを定め——放たれた矢は子鹿を射抜いた。


「……え⁉︎ なんでっ」


 こちらこそなんでだ。どうして巫女さまは困惑している? 親鹿の方が肉が多く取れるから⁇


「鹿がいなくなったら困りますんで」


 山辺ノ彦の説明に、


「逆でしょ! だったら残すべきは子鹿じゃん」


 巫女さまは珍しく食ってかかった。


「まぁ、なんとなく気持ちは察せます。媛なら余計にそういうふうに考えるってのも。でもです、あの子鹿を残したところでおそらく生きてはいけない。それに親鹿の方は身重でした」

「……そっか。そういうこと。ごめんね、大きな声出しちゃって」

「いえ。こちらこそ驚かせちまったみたいで」


 やはり山辺ノ彦は媛の心の機微をよく知ってるようだ。僕にはどうして巫女さまが動揺したのか、ぜんぜんわからなかったのに。

 それよりも謎なのは、


「——よっし! こういうのは『美味しくいただくのが一番の供養』ってことで、カワタビさん」

「数名連れていきますが、いいですかい?」

「うん。お願いしまぁす」


 巫女さまの切り替えの早さだ。まったく理解が追いつかない。


「なにその目ぇ。まるでサイコパスでも見たような目は」


 さいこぱ……⁇ ってなんだ?


「あたしだっていろいろ考えたうえで、いま深く考えちゃうとマズイなって」

「考えるのをやめたと」

「そう!」


 それがいいのかもしれない。ここは僕も巫女さまに倣って、あれこれ考え込むはやめよう。


「ふふっ。オヒトくんにはムリだと思うなぁ」

「……なにも言ってませんが」

「ほら行こう! もうみんなキャンプ準備はじめてるよ。今夜は鹿肉バーベキュー!」


 日暮れまで、もうすぐ。



 夜間は火を絶やしてはならない。


「身体を冷やさないようにするのと、野生動物が寄ってこないようにするため。ついでに乾燥ヨモギを焚べておけば虫除けにもなる、と。うんうん、すごく合理的っ」


 だからといって、巫女さまが火の番を申し出ることはないと思うけど。


「一〇本で交代って決めたんだから、もういいでしょ」


 僕は返事の代わりに枯れ枝を焚べた。


「そんなに早く寝かせたい?」

「巫女さまは華奢なので」

「ねぇ〜。やっぱりなにかしら運動の習慣をつけたほうがいいのかなぁ」

「ではオニごっこをしてみては?」

「ちょっと微妙。ていうか、あれはオヒトくんの育成計画で考えたやつだし」


 僕? 童ではなく?


「——違う違う、子供扱いしてるんじゃないってば」

「ではなんです」

「オヒトくんはボディガード的な感じだし、だから目的は対人特化(・・・・)! ほら、強さにもいろいろあるでしょ」


 あるのか?


「あるってば。今日もたくさん見たと思うよ。ヒノモリさんの火の扱いとか天気予報とか、カワタビさんの川の知識もそう。わかりやすいのは、ヤマノベさんの弓の腕と判断の早さ」

「それは、強さなのですか?」

「強さだよ。ぜんぶ生きるために欠かせないことでしょう」


 まだ納得いかないが、いまの話をそのまま飲み込んだとすると……。


「巫女さまが最も強いことになりますね」

「——なんでそうなるのっ」

「行ってもない土地のことを知っているなんて、他の誰にもできませんので」

「それは知識チート的なやつだから。前にも言ったでしょ、誰でもマネできるって。それに……」


 いったん口を閉ざし、巫女さまは枯れ枝をパキリと折る。それを焚べると言葉を紡ぐ。


「知識と実際は違う。土台になる知識だって、思い込みとか現代的なバイアスがかかってるし」


 相変わらず常世の言葉は難しい。

 だけど、細かい機微まではムリだけど、巫女さまが落ち込んでいるのだけはわかった。

 だから僕は、


「今夜も、月が綺麗ですね」


 話を逸らしたんだ。考えてもどうにもならないことから、少しでも目を背けてもらうために。

 なのに巫女さまはどういうわけか、


「……お、ぉおう」


 とか、


「無自覚系男子、こわわっ」


 などと思ってもみない態度をとった。


「わかってるわかってる、わかってるもん。偶然でたまたまで、深い意図なんてないって知ってるし」


 口も手も落ち着きない。

 パキパキパチパチ忙しなく、枯れ枝を折っては次々と焚き火のなかへ放り込む。だからか少し煙たい。

 その結果、


「……お楽しみのところ悪いが」

「さすがに焚べすぎだ」


 山辺ノ彦と川渡ノ彦に咎められてしまった。半分ニヤつき半分の訳知り顔でだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。