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残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第四章 新たな世界へ

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第33話 思惑

遂に倉沢が動き出した。

僕はそう思った。


想像していたとおり、由香里さんの父親から連絡があった。

当然ながら、婚約の破断を言い渡されるものだと思った。


由香里さんの家に到着した。


中に入ると、由香里さんの父親と倉沢がいた。


倉沢が重い口を開いた。


「拓真君、僕は君には勝てないよ。それに僕は立場というものがある。僕の周りには敵が多くてね。ここはお互いのためだ。君は賢い、わかるだろう」

「どういうことですか?」


すると、父親から意外な言葉が飛び出した。


「君たちは今までどおり、交際を続けなさい。伊豆の別荘で二人暮らすといい。その代わり、今回のことは口外しないように。それが一番だ。これ以上大事になると君も」

「まあ、お父さん、それは言い過ぎというものです」

「ああ、先生、つい私の口が、まあ先生も人が悪い」


僕はようやく、事の重大さがわかってきた。


伊豆での生活が始まった。

しかし、それは監禁に近いものだった。

外出は禁じられ、仕事さえ許されなかった。

別荘の中では自由は認められたものの、常に監視役の人物がいた。


「拓真さん、ごめんなさい……」

「いや、大丈夫だよ」


すると監視役の人物の低い声が響いた。


「よかったよ。君たちは、始末されても不思議じゃなかったからな。ただ、先生もな……」


そう言いかけて、口を閉ざした。


そうして、1年が過ぎた。

倉沢の疑惑報道もすでに過去のものとなっていた。

ようやく、自由の身になった。


しかし、僕は監視人の言葉がいつまでも耳に残っていて、

倉沢の名前を出すことはなかった。

それは由香里さんも同じだった。

あまりに、倉沢の存在が大きすぎた。

今までのことを考えると怖かった。

怖くてたまらなかった。


ある日、再び、由香里さんの父親から連絡があり、家へと訪れた。


「拓真君、もう、そろそろ猿芝居はお終いだ。君ももうわかっただろう」

「どういうことですか?」

「由香里と別れなさい」

「お父様、どうして?」

「由香里に紹介したい人物がいるんだ。倉沢先生の秘書の小林さんだ」

「お父様、嫌です」

「拓真君、君のおかれている立場もわかるだろう。ここは身を引きなさい」

「どうして、今更」

「それはだな……まあ、こればかりは仕方ないんだ。世の中は力が支配している。それにな、桐沢財閥には倉沢先生の力が必要なんだ。倉沢先生に尽くしなさい」

「まさか、お父様。嫌です、もう倉沢さんのそばは嫌です」

「だから、秘書の小林さんがお相手だ。十分不足はない。だが、由香里は先生のために……そこまで言えばわかるだろう。お前もいつまでも子供じゃない。由香里、家のために生きていきなさい。それが、お前の幸せでもある。もういいだろう。拓真という男は。こいつは金も力もない」


「お父さん、それは話が違うじゃないですか」

「君も社会勉強をしただろう。私の知り合いでも紹介してやる。今度会ってみなさい」

「お断りします」


「そうか、仕方ないな……」


由香里さんの父親はぽつりと言った。

その意味は十分に伝わってきた。

僕はなすすべがなかった。


僕は由香里さんと別れるしかなかった。

しかし、そこに一人の男性が僕の元を訪ねてきた。


「拓真さんですね。ある方からの指示で動いています。理由は今はお伝えできませんが、少しご同行願えませんか。悪い話ではありません」


僕はその男に連れられて、ホテルの一室へと向かった。


そこにはテレビでも見慣れた政治家がいた。


「はじめまして、あなたが拓真さんですね。私は里岡と言います」


僕は驚きを隠せなかった。


「どうして、僕に?」

「実は倉沢という人物の後を追っていましてね。あなたも関わった、不適切関係の件ですが」

「それが、どうしたのですか」

「いや、まあ、政治は表も裏もあるのですよ。私に協力してくださればいいようにしてあげますから、あの事件の真相を教えてもらえませんか」

「いえ、それは……」

「その点はご心配なく、あなたがおかれている立場はすでに私の範疇(はんちゅう)内でしてね。まあ、簡単にいえば、倉沢と私はいい関係ではないのですよ」

「どうすればいいのですか?」

「さきほども、申し上げましたが、真相を教えてください。そうすれば、倉沢もしばらくは表立って動けませんから。あなた達にもすぐに身の危険が及ぶことはありません」

「それじゃ僕たちは……」

「大丈夫です。ご心配ありません。例えばですが海外へ行かれるのはどうですかな? そっちが私にとっても都合がいいのです。そこでの生活も保障しますよ。彼女とも別れたくないでしょうから」

「どうしてですか?」

「それはまあ、いろいろあるのですよ。心配しなくてもいい、私が全て手はずを整えますから。私もその程度の力はあります。何より君たちの身を考えてごらん。それがいい。国内じゃ倉沢の息がかかっているからね。そのうち彼も黙っていないだろう」


僕は神にもすがる思いだった。

そして、僕は真相を話すことにした。


そして、僕たちは逃避行という道を選ぶしかなかった。

ここから物語は、いよいよ核心へと入っていきます。

この先はより緊迫した世界が広がります。

お楽しみにしてください。

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