表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第四章 新たな世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/35

第32話 きっかけ

僕と由香里さんは愛を育んでいった。

何事もなかったように。


僕はこの幸せが続くようにと願っていた。

由香里さんの笑顔を見るたび、これまでの苦しさも、身分差のことも、

倉沢という男のことも、どこか遠くの出来事のように思えた。


けれど、それでも胸の奥には消えない不安があった。

静かな波のように、それはときどき僕の心を打った。


それが現実になったのは、ある日の職場だった。


「おい、拓真、週刊誌を見たか」


同僚が妙に深刻な顔で僕に声をかけてきた。


「どうしました?」

「これを見ろよ」


差し出された週刊誌を受け取った。

何気なく表紙を見た瞬間、僕の指先が止まった。


大きな見出しが目に飛び込んできた。


倉沢不適切関係疑惑に新たな事実

疑惑は倉沢の秘書と被害女性の婚約者による虚偽告発

被害女性には婚約者がいた


僕は目を疑った。

ページをめくると、そこにはさらに詳しい内容が並んでいた。

倉沢の不適切関係をめぐる疑惑は、秘書による個人的な恨みと、

被害女性の婚約者による感情のもつれから生じた虚偽告発だった。


そう書かれていた。


その婚約者とは、僕のことだった。


のどの奥が冷たくなっていった。

あまりにも話ができすぎていた。

まるで最初から、こうなるように筋書きが用意されていたかのようだった。


休憩室のテレビをつけると、報道は加熱していた。


司会者は神妙な声を張り上げ、コメンテーターはもっともらしい顔で頷いていた。

そして、画面に倉沢の姿が映し出されていた。


スーツ姿の倉沢は、報道陣の前に立っていた。

その顔には苦悩さえ浮かんでいた。


「申し訳ありません。秘書の偽りによるものとはいえ、

すべては私に責任があります。彼らだけが悪いのではありません。私の不徳によるものです」


低く落ち着いた声だった。

いかにも誠実そうな響きだった。


記者たちの前で頭を下げる姿は、まるで自分だけが被害者であるかのようだった。

いや、それ以上に、他人の罪さえ背負う度量のある人間として映っていた。

自らの潔白を証明するために、秘書にまで責任を押しつけた。

そう思った瞬間、胸の奥から強い憤りがこみあげてきた。


その日のうちに由香里さんから電話があった。


「ごめんなさい、拓真さん」

「そもそも、どうなっているの?」

「実は最初に告発したのは佐藤さんなのです。私のことを思って、勇気を出してくださったのです。それが、いつの間にかこんなふうにすり替えられて……このままでは拓真さんが……」


由香里さんは泣き崩れていた。

再び、黒い巨大な壁が立ちはだかった。


けれど、それは僕たちを新しい世界へと押し出すきっかけにもなった。

いつもお読みいただきありがとうございます。

今後は毎日更新にこだわらず、納得のいく形で丁寧に進めていきたいと思っています。

少し間が空くこともあるかもしれませんが、作品を大切にしながら続けてまいります。

どうぞよろしくお願いいたします。

詳しくは活動報告もお読みいただけますと、幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ