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残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第三章 対峙

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第28話 激動

消えていい。そう思った。

海面に僕の顔が映っていた。

波に揺れて、輪郭さえ頼りなかった。

暗くて情けない顔だった。


僕は本当に弱いのだろうか。

そう思うと憤りがこみあげてきた。


じゃあ、どうすればいい。

このまま、結婚するのを黙って見ていていいのだろうか。

由香里さんの本心だと思えない。

けれど、それは未練にすぎないのかもしれなかった。

そっとしておくべきなのかもしれなかった。


僕はよくわからなかった。


ただ、海面を見つめているうちに、

死の影がいつの間にか消えていた。


答えはやはり公園のベンチにあるように思えた。

そして、いつも通り向かった。


何度ここに来ただろうか。

でも、今回は違う。

弱い僕に別れを告げるため、ここに来た。

しかし、そこにはすみれの香りさえなかった。

あったのは虚しい僕の影だけだった。

あの頃と同じ場所のはずなのに、もう何もかもが違って見えた。


翌朝、何気なく開いた新聞に、僕は目を疑った。

社会面に大見出しで書いてあった。


倉沢議員に疑惑噴出

被害女性側関係者が告発――


僕はしばらく、その場から動けなかった。

紙面の文字がやけに冷たく見えた。

何かが大きく崩れ始めているのだけはわかった。


テレビをつけると報道が過熱していた。

カメラのシャッターの音が鳴り響き、

報道陣の駆け巡る姿と、倉沢の険しい表情が映し出されていた。


でも、僕は事件報道よりも、由香里さんの身を案じた。

倉沢はどうでもよかった。


世間がどう騒ごうと、僕にはそれより大事なことがあった。

由香里さんが、その渦の中でひとり傷ついていないか。

そればかりが気がかりだった。


報道は日ごとに激しさを増していった。

倉沢はもはや逃げ切れなかった。

しばらくして、政界から身を退くことになった。


倉沢は終わった。

そう思っていた。

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