表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第三章 対峙

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/35

第25話 願い

僕は家に帰り、どうすべきかを考えた。

すみれの花が、ひどく痛々しく見えた。

けれど、誰が置いたかはわからなかった。

由香里さんが直接置いたとは考えにくい。

執事の佐藤さんだろうか。

結局のところ、確かなことは何もわからなかった。


いずれにしても、僕は何らかの行動を取らなければならなかった。

でも、僕に何ができる。

由香里さんが、倉沢に囲われた檻の中にいることだけは、間違いなかった。


思い悩むうちに、数日が過ぎた。

ふと、倉沢はどうしているのだろうかと思った。

何気なくテレビをつけると、倉沢が予算委員会で答弁していた。


倉沢が不在の間に会いに行く――

そんな考えもよぎった。

けれど、それでは逃げるのと同じだった。

そんな弱い気持ちでは、由香里さんを救い出すことはできない。


そう思っていたとき、先日のすみれの花が目に留まった。

その瞬間、僕の中で一つの気持ちが固まった。


僕は、すみれの花を由香里さんに渡そう。

それが、答えにならないかもしれない。

それでも、今の僕にできることは、それしかないと思えた。


由香里さんを救い出す。

そして、彼女の楯になる。

僕は倉沢のように決して強くはない。

でも、僕は由香里さんを愛している。


だからこそ僕は、静かに心を決めた。


そして、行動に移す日が訪れた。

僕は強い足取りで議員会館へ向かった。

倉沢の部屋に入った。


由香里さんの姿が見えた。

僕はすみれの花を渡した。

彼女に想いを伝えた。


「由香里さん、思い出してください」


彼女はうつむいて何も言わず、僕を見ることはなかった。

そして僕は、議員会館を後にした。


僕は由香里さんの本当の気持ちを信じた。


だが、その日のうちに、僕のまわりの空気は変わり始めた。


僕が行く先には、いつも人の気配があった。

誰かに囲まれているようなのに、何もされない。

それが、かえって怖かった。


家に帰ると、買った覚えのない物がいくつも届いていた。

電車に乗って座ると、空席は目立つのに、

いつも誰かが僕のそばに腰を下ろした。


でも、僕は退かない。

そう心に決めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ