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残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第三章 対峙

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第24話 偽り

議員会館――その言葉を聞くだけで、震えが止まらなかった。


でも、僕には向き合わなければならないものがあった。

そういう思いで向かった。


議員会館の中は、妙に静まり返っていた。

磨かれた床には外の光が鈍く映り、

行きかう職員たちの足音だけが乾いて響いていた。


僕は、ここが自分のような人間が来る場所ではないと、

十分すぎるほど感じた。


それでも、由香里さんのために引き返すわけにはいかなかった。

僕の足音だけが、廊下に鈍く響いた。


倉沢のルームを見つけた。

中へ足を踏み込むと、僕は驚きを隠せなかった。

そこには、愛しい人、由香里さんがいた。


由香里さんの表情が一瞬こわばった。

壊れそうな声で、僕に話しかけてきた。


「ど、どのようなご用件でしょうか……?」

「由香里さん、どうして、ここに……」


由香里さんは受付の職員として雇われていたようだった。


「ごめんなさい……」


由香里さんの表情が沈んでいくのが、はっきりと伝わった。

僕は心を強くして、彼女に伝えた。


「倉沢さんに、会わせてください」

「少々お待ちください……」


すると、部屋のドアが開いた。

中から倉沢の声が響いた。


「お通ししなさい」

「先生、わかりました……」


僕は息を飲みながら、部屋へと入った。


「君は確か、拓真君だったかな? どういったご用件だね?」

「由香里さんを解放してあげてください」

「由香里さん? 誰のことかな?」

「助けてあげてください」


僕は強く訴えた。


「ああ、受付の彼女のことかね。彼女に聞いてみなさい」


倉沢の落ち着いた声が部屋に響いた。


「由香里さん、帰ろう」

「どちら様ですか……」

「由香里さん……」


「どうしたかね? 拓真君」

「いえ……」


僕はなすすべがなかった。

呆然と立ちすくんだ後、逃げるように部屋を出た。


しかし、彼女の気持ちは十分に伝わってきた。

本心でないことはわかった。

でも、僕は何もできなかった。


そんな僕が情けなかった。

議員会館を後にした。


数日が過ぎ、僕は公園のベンチへと足を運んでいた。

ベンチにはすみれの花がそっと置いてあった。


僕はさらに強い気持ちで立ち向かう勇気を得た。


茜色に染まった空が、やけに僕の胸をうった。


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