第21話 ベンチの灯り
僕は自分の無力さを感じながら、
気づくと、足はいつもの公園のベンチへ向かった。
人影はまばらで、風だけが冷たく頬を打った。
あのベンチだけが、まだ僕を受け止めてくれる気がした。
ベンチに座ると、由香里さんが静かに笑った日のことが浮かんだ。
あの時の笑顔は、いまは遠い光のように思えた。
そこへ、倉沢という男の存在が、僕の胸に重く迫ってきた。
あの冷静な態度が、かえって恐ろしく思えた。
そして、由香里さんの言葉は本音でないように思えた。
むしろ、追い詰められているのが手に取るように伝わった。
僕にできることは何だろうか。
その思いばかりが脳裏に駆け巡った。
助けられる方法とは何だろうか。
どうやって、彼女の心に灯りをともすことができるだろうか。
僕は彼女と会いたいという気持ちより、
助けたいという気持ちが大きくなった。
そのためには手紙を書くしかないと思った。
由香里さんに届くかどうかすらわからない。
けれど、それしか僕にできることはなかった。
僕は震える手をおさえながら、手紙を書いた。
由香里さん。
無理しなくてもいいです。
どうか、生きてください。
僕はあのベンチで待っています。
僕は信じるしかなかった。
手紙が届くことを信じるしかなかった。
手紙を送ってから、僕の周囲に異変が起きた。
覚悟はしていた。
いつも、お読みいただきまして、ありがとうございます。
このあたりから物語の流れが大きく動いていくため、
短いですが、一つひとつ大切に書いていきたいと思います。




