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残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第三章 対峙

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第19話 この身を捨てても

虚ろな僕がいた。


もう、君はいない。

そんな思いでいっぱいだった。


枯れ果てた僕の心だけがあった。

涙すらでなかった。


由香里さんと過ごしたあの幸せな日々が

浮かんでは消え、浮かんでは消えた。


日の光すら明るく見えなくて、

町をさまよい歩いていた。


次第に町の灯りが消えていった。

気がつくと僕はベンチにたたずんでいた。


もう、すみれの花はなかった。


僕は公園へ毎日のように足を運んだ。

いつか、そこに由香里さんがいるような気がした。

面影だけが僕を支えていた。


ある日のことだった。

ベンチに座っていると、背後から声がした。


「拓真さん」


振り返ると、見覚えのある人だった。


「どうしましたか?」

「実はお嬢様のことで、お話したいことがあります」


男性は佐藤と名乗った。


彼はしばらく何も言わなかった。

ベンチのすみれの跡を見つめていた。

ぽつりと呟いた。


「……お嬢様は、すみれの花が好きでした。いつも花を眺めて、

この公園へ向かっていたのです」


「私はお嬢様が小さい頃から見守ってきました。

どうか、お嬢様を助けてあげてほしいのです」


「由香里さんはどこに?」

「場所はここです。ここに行ってなんとか救い出してほしいのです」


「今、どうしているのですか?」

「お嬢様は婚約されましたが、その方とは別居しています。

拓真さんのことが忘れられないのです。

幸い、その方は強引に求めてはいませんが、いずれは……」


「どうすればいいですか?」

「婚約者はしばらく仕事のために、家を空けることになります。

その機会にお嬢様を連れ出してください。

本来ならば、私はこのようなことをお伝えすることはできないのですが、

いつも、うつむいているお嬢様を見ているとほっておけないのです。

私はお嬢様の元を去る覚悟で参りました」


佐藤という男は、僕に事情を話した後に寂しそうに帰っていった。


相手はあの……

今までのことを考えると、命の危険すら感じた。


身震いがした。

正直なところ、恐ろしかった。


でも、僕はそれ以上に、

由香里さんに会いたかった。


僕は決めた。


由香里さんを救い出す。


この身はどうなってもいい。


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