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第18話 面影
僕は抜け殻から抜け出せなかった。
一通の手紙が届いた。
拓真さん
もう、何も言いません。
駅に来てください。
それが私の願いです。
せめて
それだけの手紙だった。
けれど、僕にはすぐわかった。
駅に向かった。
僕は何度もこの駅で、
由香里さんを見送っていた。
微笑みが僕には眩しかった。
いつもは聞こえない、汽笛の音が響いた。
その音が、胸の奥に沈んだ。
これが最後になる予感がした。
覚悟はしていたつもりだった。
それでも――
涙はなぜか出なかった。
駅に着いた。
見慣れた姿が一瞬目に映った。
隣には、影も映っていた。
僕はその姿を追った。
走った。走った。
真冬の吐息がつらなった。
プラットホームで立ちすくんだ。
彼女が窓から身を乗り出し、手を振っていた。
雪が静かに降っていた。
遠くなる姿をいつまでも追った。




