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残月の彼方――愛は欠けた月を満たす光  作者: 月原 悠
第二章 想い

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第16話 倉沢という男

僕と由香里さんは流木に座った。

彼女はようやく重い口を開いてくれた。


「拓真さん、ごめんなさい……やっぱり、拓真さんのことが忘れられません」

「僕もだよ。戻ってきてくれて嬉しいよ。ところでどうして別荘へ?」

「はい、あれから私は夜が眠れなくなりました。病院で診てもらったら、養生したほうがいいとのことで、伊豆の別荘で過ごすことになったのです。でも、父の管理下で外にも出られずに……ごめんなさい」

「いいよ。何度も謝らなくて、僕が力がないばかりに、どうすることもできなくて」


「早朝に父に黙って別荘を抜け出してきたのです。なんだか、拓真さんと会えるような気がして」

「大丈夫だよ。今日は別荘に直接出向いて、お父様に事情を話してみるよ」

「無理です、拓真さんが傷つくだけです」

「大丈夫、僕に任せて」

「はい……」


僕はなんとかしたくて、別荘へ出向くことを決心した。

でも、僕は不安でたまらなかった。

今までの経緯を考えると、会うことさえままならないように思えた。


そして、決心して、別荘へ向かった。

別荘への道のりが長く感じられた。


別荘には高い塀もなく、インターフォンを押すと執事が案内してくれた。

しばらくして、父親が現れた。

僕は今までの経緯を話した。

しかし、待っていたのは想像以上だった。

僕は由香里さんの父親と対面して懇願した。


「どうか、お嬢様と交際を認めていただけないでしょうか」

「何、朝から、何をふざけたことを言うのか。娘がどうしてもいいから会ってほしいというから会ってみたが、話にならん。ところで、君はどこの大学の出身だね」

「いえ、大学には行っておりません」

「拓真さんといったな。世の中は社会的地位、すなわち名声と金がすべてなんだよ。君みたいな薄汚い男と由香里はつり合いが取れないということだ、わかったら、速やかにでていきなさい。さもないと、今まで以上に痛い目にあうぞ」

「お父様、ひどい。やはり、お父様の仕業だったのですね」

「ああ、この男の素性はすでに調べてあるからな」

「どうか、由香里さんと交際を認めてください」


現実の厳しさはそれだけではなかった。


「ああ、そういえば、由香里も知っているだろうが、お前には婚約者がいる。有力国会議員の倉沢先生だ。あの方こそ、お年を召しておられるがお前にふさわしい。いや、もったいないくらいだよ」

「いやです。お父様、いやです」

「何を言うか」


そこに、一人の男性が現れた。

男は年配で優しい笑みを浮かべていた。


「おお、倉沢先生、ちょうどいいところに」

「ああ、今までの話はすべて聞かせてもらったよ」

「先生、大変失礼しました。おい、早く君は帰りたまえ」

「君はそういえば、以前、クラブで一度顔を合わせたな」

「はい……」

「あの時は失礼したよ。どうも、キャストの手前、あのように言うしか恰好がつかなかったのだ」

「いえ、大丈夫です」


「ここは少し時間を置かれてはどうですか。どうやら、二人は固い絆で結ばれているようです。私のことは気にしなくてもいい。ここは少し見守って差し上げたらどうでしょうか」

「先生、何をおっしゃいますか」

「大丈夫。二人なら、乗り越えるでしょう」

「そんな、先生……」

「それでは、私は失礼するよ」


「先生、待ってください……」


僕は奇跡が起きた、そう感じた、でも……

待っていたのは現実だった。


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