第15話 月に抱かれて
僕は流木に腰かけると、その場を離れることができなかった。
海に溶け込んでいる月を眺め続けていた。
遠くに見える漁船の灯りが気になって仕方がなかった。
灯りが僕と由香里さんの楽しかった時の記憶を、
まるで映し出しているようだった。
もう一度会いたい。
もう一度会いたい。
由香里さんが振り向いた時の笑顔が、
映画のスローモーションのように僕の胸に流れた。
潮風を感じると、
由香里さんの髪をなびかせている姿も、目に浮かんだ。
寄せては返す波の流れが、一瞬止まったように感じた。
波の音が、ふっと遠くなった。
その時だった――
背後から温かい風が吹いてきた。
「拓真さん……」
胸の鼓動の高まりを感じた。
僕は振り向くと由香里さんが立っていた。
彼女の頬に、涙が光っていた。
思わず、僕は由香里さんを抱きしめた。
由香里さんは、しばらく何も言わなかった。
僕の胸に顔を寄せたまま、動かなかった。
由香里さんの髪が潮風に揺られていた。
気づくと、僕の頬からも涙がこぼれていた。
月明かりが彼女の髪を静かに照らしていた。
僕は、彼女を抱きしめることしかできなかった。
時は月に抱かれたままだった。
前回から、投稿の文字数を400~1000文字程度にしています。
今は物語が大きく動き始める段階なので、少し短めの形で更新していこうと思っています。
ご了承ください。




