わたしの幸せ(後)
前回テントを、オリジナルに捏造したアイテムとして書きました。お金に余裕のない頃の娘や貧乏な先生が持つにはあまりにも高級なテントでした。言い訳設定として、娘は冒険者時代の父から譲り受けた物、先生は手厚く応援してくれる教会からの支援品とか・・
教会と言えば、献金100ゴールドは大金でした。闇落ちする娘の家じゃ、お金が無いから因業も消せなかったのですね。シビアです(汗)
この度私宮本洋子は、12星座宮の神々から頼まれた『プリンセスメーカー2』のヒロインを、幸せに導く役目を無事終える事が出来た。
最初は同情から始まった依頼引き受けだったけど、一緒にいるうちに、可愛いヒロインと喜びも悲しみも共にするうちに、大切な娘の様に愛する存在になっていった。
これらの出来事は、けして夢ではないと思っている。証拠はなにもなく私の記憶だけなのだが、私は絶対に忘れないように、今思い出しながら書きとめている。
そうそう、この件は報酬を求めず引き受けたのだが、私は素晴らしいご褒美を神様から貰った。
なんと、アリアちゃんの結婚式に、あの世界に私自身顕現させてもらって出席できたのだ!
あれは本当に素晴らしい体験だった。
今まで知っていても話す事も出来なかった人達と話し、笑い、共に式を祝福する事が出来たのだから。
その素晴らしさを今すぐ書きたい所だが、まずはこの世界に関わった経緯をもう一度振り返ってみたいと思う。
☆~~☆~~☆~~☆~~☆
そう、あの日の夜私は、寝てる間に不思議な空間に招かれていた。
そこで12星座宮の神々と少女に出会ったのだ。
ところで、12星座宮と言ったが、それを司る神々は10柱である。何故なら、女神ビーナスと女神マーキュリーは、それぞれ2つの星座宮を司っていたのだから。
金牛宮と天秤宮を女神ビーナスが、双子宮と乙女宮を女神マーキュリーが守護していたのである。
さて、泣きじゃくる少女は、子育ての下手な勇者によって、最低の人生を何度も送ったせいか、存在する事自体に絶望していた。少女は、神々の地上における人の生の実験体だった。
神々は、少女のリセットした新しい人生の度に、浄化と記憶抹消をしたのだが、と首を傾げていた。
だが、記憶抹消したという少女は、どうも記憶を覚えているらしい。
実験の始めの頃は、消えていたようなのだが、人生を繰り返すうちに、徐々に記憶が戻るようになり、最近では天界から降りるとすぐに戻り始め、そして今回、まだ地上に降りる前の天界にいる段階で、全ての記憶を蘇らせてしまったというのだ。
しかも最低なのは、記憶を思い出したと言っても勉強や修行などの能力の記憶はなく、攻略の手順も記憶なく、また思い出せても父であるライトさんの指示で送る生活という強制力にて、アリアちゃんの好きには動けなかったそうだ。
ホントに禄でもない記憶だけはたっぷりあったのだ。最低だ。
これは、最大の心配案件だったが、なんとか精霊の助言を得る事にて解消する事が出来た。
良かった。そんな記憶があったら、良い人生なんて送れる訳がない。
ところで私の世界では、この世界はまんまゲームの世界そのものである。そしてそれを、神々もアリアちゃんも知っていた。
何故なら、ゲームをやる者達の『声』が、時々聞こえたからだそうだ。
え?、やだ、私の声も聞こえたのかしら? うん、聞こえたそうだ(汗)
私がこのゲームをやってた時、私は妊娠中だった。体調が優れずげっそりしてた私に、まさ君…いや旦那が買ってきたゲームがこの【プリンセスメーカー2】だった。
絵が可愛いし、子育てゲーだからという理由で買ったと言っていた。しかし、蓋を開ければ、数々のセクハラまみれな上、イケメンはマーズ様だけという残念仕様だった(汗)
まあでも、ヒロインには好感を持った。真面目で健気で可愛い♡
だから、不幸になんてしたくなくて、ひたすら上を目指すうちに、『女王エンド』の常連になっていた。だって、最高職業だし。
ちなみに旦那は、始めてすぐにヒロインを病死させてしまってプレイするのを止めた。
あの人に子育て系や好感度系は向かない。もともと海外のRPG専門にプレイしてたのだ。そもそも昔のRPGゲームは設定も雑でバグも多いものが多々あった。加えて人の好感度なんてものは無いものが殆どである。旦那がよくやってたのが、仲間を雇い、雇った人の装備お金一切を取り上げてから解雇するということを連続でやっていた。まあでも、それをやっても犯罪にもならず、批難もなく、皆がよくやるお約束の合法だった。
そして自分が動かすプレイヤーも、食事も休憩も与えず虚弱状態になっても、それを通り過ぎると元に戻っているバグを発見してから、ⅯPを回復する以外休憩食事を取らないという鬼畜ぶりを発揮していた(汗)
さて話は戻るが、私が助力したこのゲームによく似た世界だが、改めて振り返ると、今世が最後ということもあって、ゲーム、いえ、世界の強制力はなくなり、育成を助けてくれるような人達もわらわら現れた。
お助けキャラと呼ぶにはあまりにも能力、人間性の高いチートキャラばかりで、ちょっと気になっている。
アリアちゃんの仲の良い人達の殆どが、その面々である。
それどころか、今回結婚する事になった人も、その中の一人である。これはなんだろう?と、不思議に思う。
強制力と言えば、身分、種族も緩くなっていた。王様の求婚もあっさり断れるし、魔王もギャグキャラみたいに脅威のきょの字もないし、ドラゴンもお財布要員と化している。ひたすらヒロインに都合の良い世界となっている。
だから、アリアちゃんとファーモス先生の結婚も妨害される事もなく無事式を挙げたのだった。
そうそう、アリアちゃんにとっては8年間だが、お助けする私は1年程でその期間が終わった。
一晩で1日しか経たない事もあれば、一晩で一か月過ぎる事もあるし、時々マーズ様とデート‥もとい、ミーティングをやる時もあったりで、時間はバラバラだ。しかも、毎晩呼ばれる訳でもないので、思ったより長くかかったと思う。
和君・・、いや息子が朝ニヤニヤしてる私を見かけては、生温かい目で見ていた一年でもあったっけ(汗)
では、長々と雑記及び今までを振り返った訳だが、そろそろ待望の思い出を書き記そう!
この世界の将来が決まる18歳、ゲーム的にはエンディングの結果は?
『ファーモス先生の花嫁』
そう結婚である!職業は強いて述べるならば主婦である!
一番最初の画面が花嫁衣裳の支度最中のアリアちゃんの姿。
そして、なんと私は、アリアちゃんの目の前に、この世界の住人として顕現していたのだ!
「え? 洋子さん?!!!! 」
アリアちゃんがビックリしている。私もビックリだ(汗)
鏡を見せてもらったら、40代位の品の良いお金持ちの夫人風になっていた。顔もちょっと東方人風だけど、この世界に違和感無い顔になっていた。わたしゃホントは50だ・・ いえ、なんでもない(汗)
いやぁ、すごいわ。
アリアちゃんと、きっと神様のご褒美だねと、笑い合って抱き合ってお互い感謝をしていた。
それにしてもと、改めてアリアちゃんの花嫁衣裳を見ると、ゲームでよく見た、王子と結婚する時の衣装だった。
長袖で首も詰め襟の、肌をあまり見せないデザインである。それはとても似合っていた。古風で気品があり、それでいて愛らしく初々しい純白のウエディングドレスだった。
相手は王子ではないけど、アリアちゃんにとっての王子様はファーモス先生だ。
ひとしきり喜び合ってから、まだ支度の最中のアリアちゃんと別れて外に出た。
教会の入り口には大勢の人達が二人を祝福すべく詰めかけている。モブである街の人達だ。その人垣の奥には、ちょっと不審な者達もちらほら見える。
あ、あれ辻試合を仕掛けてくる常連達ね。辻試合と言えば、街の警備隊長であるカロンさんによって禁止され、今では無くなっているのである。なにしろ罰金が洒落にならない額なので、破る馬鹿は今では居ない。
あいつらなんなの? ま、いっか。
はよ始まらんかとワクワクしてたら、目の前にライトさんとキューブが現れた。え?なに?
「貴女があどばいざー殿か?」
恐る恐る尋ねるライトさん。
「あ、ども、こちらでは初めまして、洋子です」
ペコリと挨拶したら、何故か引き攣る二人である。解せぬ。
「ええと、ヨウコ様ですね。式に参列して欲しいとお嬢様が願われております。出席して頂けますか?」
キューブに言われて勿論と即答した私は、教会内に案内されて一番前の家族席、ライトさんの隣に座った。嬉しくて二人に色々喋り掛けていたのだが、こいつらずっと引き攣ったままである。なので、娘の晴れ舞台でしょ?しゃんとしなさいっ!と喝を入れておいた。
そうやって和んでいると、何故か次々と列席者が私達に挨拶に来たのでビックリした(汗)
あら~、この人達、現実で見ると感慨深いわ~
仕立屋のレアさん、雑貨屋のハーシェルさん、料理屋のメルさん、武器屋のユピテルさん、あらあら、占いのルナさんもいるわ。みんな何故か初対面のはずの私にも、にこやかに親しく話してくれた。いや~、感激~ 嬉しくてひとしきり喋ったら、第二陣が来た!
おお、シスターパラス神々しい、イナンナ先生美しい~、カロンさんも美しい~、もう、興奮して何喋ったか忘れたわ(汗)
その後も、ファーモス先生の恩師のダイモン師やそのお弟子さん達が家族席から挨拶をくれた。
そして最後に、ファーモス先生本人が式の始まるぎりぎりに挨拶に駆けつけてくれた。
まあ、先生、健康になったらイケメン度が増したじゃない、いいわねぇ、誠実で優しくて地味だけど中々イケメンで。うん、私も結婚するならこういうタイプがいいと思うわ。先生にアリアちゃんをよろしくねーと、肩を叩いたら、よろけ乍らも幸せにしますと笑顔をくれた。いや~、良い人だわ、安心した。嬉しくて涙が止まらない。見かねたライトさんがハンカチを貸してくれたわ。ありがとう。
ライトさんはその後、娘のアリアちゃんをエスコートするべく着替え部屋まで向かって行った。
いよいよね。
祭壇に一人立つファーモス先生。そしてライトさんに手を引かれアリアちゃんが現れた。
アリアちゃんのダークブラウンの柔らかな髪は艶々で、天使の輪どころか、宝石のように艶やかに光っている。同じくダークブラウンの瞳は星のように煌めき、純白のドレスとベールと花、そして真珠の首飾りが映えて、眩いばかりに清らかで美しかった。
見つめるファーモス先生の瞳が驚きと喜びが瞬時に入れ替わる。あまり気に留めてなかったが、先生の髪もダークブラウン。そして青い瞳だ。あれ?何処かで見たっけ? まあいいや。綺麗な瞳ね、気が付かなかったわ。
向かい合う二人はお似合いだ。先生は地味なのに、不思議とアリアちゃんに見劣りせず、美しい対になっている。
宣誓し、軽くキスを交わす二人に盛大な拍手と祝福の声が挙がった。
嬉しそうなアリアちゃんの瞳から真珠のような涙がぽろぽろ零れている。
良かったわ、本当に良かった。
あれ、
そこまで見た時、意識がふっと遠ざかり、私は上空から俯瞰して続きを眺めていた。
教会から外に出る新郎新婦に花びらが、まかれている。
街の人々が、闘技大会並びに辻試合の挑戦者達が、ダンスコンクールの挑戦者達も、ライバル娘達も、ドラゴンの爺孫に、人間に化けてるつもりのドンくさい魔王が、祝福をしている。
何これ、嘘みたいね。でも、これで良いのよ。
おめでとう、アリアちゃん! 幸せにね! ・・・・
そして、そのまま気を失い、気がついたら朝だったのだ。
エンディングは終わったけど、アリアちゃんはその後も幸せになったのよね?
ここまで書き留めたけど、その後のアリアちゃんの人生ってどうだったんだろうって、ふとお節介な事を考えてしまった。ううん、大丈夫よ、幸せエンディングなら、幸せ人生よ。
『確認したいか?』
「え?・・・」
何? いや、この声は? これはマーズ様の声?
『そうだ、それでアリアのその後を確認するか?』
嘘、私今起きてるのに、連絡が来るなんて!
『驚くのが(そこ)なのか?(汗)』
「ええ、重要です。これじゃ白昼夢だわ。あ、でも確認したいです」
『わかった。では再び招こう』
うわ、何此処? 白い世界?
『用意するまで、しばし待て! そうだ、此処は次元の一つ上の世界、もし会いたい者があれば会えるだろう・・・ 』
次元? 訳が分からず惚けてたら、目の前にいやに懐かしい顔が現れた。
「よ、久しぶり。どうした?ヨッコ」
この府抜けた声と顔は間違いない、謝れっつったのに最後まで俺悪くないもんとか抜かして勝手に死にくさった大馬鹿野郎だわ!!!!!
「相変わらずカリカリしてんなぁ、怒ると眉間の皺深くなるぞ。・・ったく、泣くなよ・・」
「泣いてなんかないわよっ、あれ? 目から洪水? 止まんない・・・
あの世で会ったら文句言ってやるって思ってたんだからね! んん?、此処あの世?」
「はは、お前、(そこ)? 」
「っ笑ってんじゃないわよ」
「うん、御免」
「御免じゃないわよ、御免なさいよ」
「御免なさい。一人で苦労掛けて御免なさい。突然居なくなって御免なさい。ホント御免」
「もっと、もっと謝んなさいよ・・・う・・ 」
「御免なさい、それから、和君を一人で育ててくれてありがとう」
気がついたら旦那の胸の中で文句垂れながら大泣きしてた。旦那は、私に言われてずっと御免とか、ありがとうとか言ってた。
泣いて泣いてずっと大泣きしてたら、すんと、スッキリして暖かいものに包まれてた。
ああ、・・突然分かった、私愛されてたんだって・・・
もう、旦那の影も形もないはずなのに、この暖かいものが旦那だってわかる。
ごめんね、私こそ意地張ってごめんね。
まさ君ありがとう。私も幸せだったよ、ありがとう。
マーズ様、此処で待たせてくれてありがとう。
アリアちゃん、私も幸せだよ。さあ、最後に貴女の人生を私に見せて。
次で終われればと思います。ありがとうございます。




