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わたしの幸せ(前)

古いゲームで記憶違いも多々あり、『雑貨屋』を小物屋とか小間物屋とか今まで表記しておりました。

他も多々あろうかと思いますが、流して頂けますと幸いです。


貨幣の基準も曖昧です。1Gは2千円くらい?と考えて書いてます。違うかな?

昨夜はドレスを着たまま走り続け先生の元に辿り着いた。

色々気が急いていて心配もあって、いつ寝たのか分からなかった。


そして、朝目が覚めると先生が、お腹すいた? と聞いてきた。


聞かれたとたんグゥーと、お腹が鳴って恥ずかしい。カッコ悪くて俯いていたら、


「俺もペコペコだよ」


そう言って優しく笑ってくれた。先生の顔はちょっと無精髭があって新鮮だ。初めて見るかも。


いつも教会や、たまに病院で会うくらいだったから、こんなにずっと居るのも初めてだ。


私なんで必死になって此処に来たんだろ? ううん、分かってる。私先生がずっと好きだったってあの時気付いた。

ダンスコンクールの会場で、ふと聞いたあの話を耳にしてから、私覚えてない・・・




『ねえ聞いた? 病院ずっと休業になってるって』


『嘘、あたし手荒れが酷くていつもの軟膏貰いに行こうと思ってたのに』


『うん、お母さんが言ってたけど、もう2週間以上帰って来ないって。先生また薬草採取に行ったみたい。いつもなら3~4日で帰って来るのにね。なんかあったんじゃないかって心配してた』


『ええ~っ、それ大変じゃん』


『そうよね。安くて腕の良い先生がいなくなったら困るってお父さんも言ってたよ』




(先生が薬草採取から帰って来ない? 怪我したの? 先生護身術ならバッチリって言ったじゃない! いいえ、それより、先生冒険者に依頼するって言ったわよね?)




『あ~あ、先生狙ってたのに』


『あはは、分かる々、ちょっと地味だけど、よく見ると素敵だしね』




(え? 何? 狙う? 先生を? 誰かが先生と結婚しちゃうの?・・・)




『でもさ、先生長生き出来そうにないかも』


『なんでよ?』


『これお父さんもお母さんも言ってた。良い人過ぎて、働き過ぎて、ボロボロだって。最近顔色悪かったから、あれで、薬草取りに、あの危険な東の森に行ったら、モンスターにやられちゃうんじゃないかって』




(!!!!!!!!! やだ! 先生になんかあったらやだ! 

先生ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!)




あの後、無我夢中で東部森林地帯に向かったんだっけ(汗)





「アリア、身支度しておいで」


そうだ、汗臭いかも。トイレも行きたいし。

冒険者のテントの性能はピンからキリまである。先生のテントは私のテントより一つ下のランクだ。私のテントはモンスター除け、入り口鍵機能、亜空間ルーム仕様、簡易ベット、トイレ、台所、シャワーが付いた最高級品だ。


先生のテントはシャワーはないけど、トイレ、台所があるから助かるわ。

身支度を整え、ついでに先生に髭も剃るように促し、準備万端。先生はお医者だから、衛生観念的に身体を拭いたり髪を台所で洗ったりは毎日やってたみたいだけど、髭剃りは面倒くさくてサボってたとのこと。


携帯食料を食べてから今回の事を改めて聞いた。




「うん、資金を貰って冒険者に依頼をしてたんだけど、今回いつも受けてくれる者が居なくて、でも急ぎで欲しい薬草があったから、自分で来たんだ」


「で、怪我したんですか? 護身術ならバッチリって言ってたのに」


「いやそれが、具合の悪そうな山猫族の子を見かけて、診断しようとしたら暴れられてさ・・ なんとか宥めて手当てしてたら、後ろからモンスターに襲われて大変だったよ」


何、ニコニコ大変だったよなんて言ってんのよ。心配したんだからね(怒)


「逃げてる最中どうも足を骨折してしまったようで、様子みてたんだ。幸い携帯食は大量に寄付としてシスターから頂いてたし、あの山猫の子も悪いと思ったのか時々木の実をテント前に置いてくれたし、なんとかなった。アリアも来てくれてありがとう」


のほほんと笑った先生を見てたら、怒るのが馬鹿らしくなってきた。




先生の骨折は、例の冒険者用アイテム【治癒丸】で治った。これ、雑貨屋さんで売ってるのよね。

万能治癒アイテムだけど、貧乏な先生や一般の街の人達には、おいそれと買えないアイテムだ。30Gって安いかって? 一か月20Gあったら暮らしていけることを思えば、庶民には高価な物だって分かるはず。


先生もこんな高価な物をと躊躇ってたけど、強引に使った。


ところで私、治癒丸をなんで持ってたんだろ? て、覚えがなくて不思議に思ってたら思い出した。会場を飛び出す前に、カロンさんが何か寄越してきたのを無意識で受け取っていたと・・・・


カロンさん、なんで入り用になるって分かったの? 相変わらず謎の人だわ。


年齢にはとても見えないくらい若いし美形だし地位もあるけど、趣味嗜好が不明だし、居たと思ったら居ないし、ぼんやり見えるけど驚くほどなんでも知ってるし。街の憧れの人なんだけど、不思議と身内のような親しさしか感じないのよね。それこそ歳は離れてるけどお兄さんみたいな。


先生の場合は、小さい頃は私にとってもう一人のお父さんみたいに思ってた。最近ではやはり兄みたいに思ってたと思うんだけど・・・


多分、会った時からずっと好きだった・・・

今まで気が付かないのが不思議なほど好き・・・


そう思い返していたら、




「アリア、覚えてる?」


先生がいつもとちょっと違う、優しいけど怖い表情でそう言った。


「えっ?・・」


「昨夜、俺と結婚するんだって言ったの覚えてる?」


「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


あ~~~~、言ったわ、言った、言った!どさくさに!! 夢中でつい、いろんな事駄々漏れで口走ってたーーー!!


「俺はね、それを聞いて俺もアリアが好きだと気付いたよ。ずっと可愛い妹分だと思ってたのに」


嘘っ、せ、先生も私が好き? 


「ん? アリア、顔が真っ赤だな」


「ちょっ、もう、先生の馬鹿ーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!!」




それから、恥ずかしいやら照れで怒りたいやらでまた一悶着したけど、結婚の約束をして無事仲良く街に帰る事ができた。






そして、その後は、早送りのように日々が目まぐるしく過ぎていった。




ともあれ、まずキューブに謝った。


キューブがいきなり素敵な大人になって、好きだと言われて、嬉しくてドキドキした。私も好きだと思ったから、二人で出かけたり、気を持たせてしまったから・・


でもキューブは分かってたみたい。私の気持ちが恋に恋してただけだって。そのまま気付かなければいいと思ったって寂しそうに笑ってる。ごめんね、そう私は気付いてしまった。そんな私に、キューブはいつもの笑顔に戻ると祝福してくれた。ありがとう、貴方は私の大事な家族よ。


「お嬢様、幸せになってくださいね」


「嬉しいわキューブ」





次に先生と一緒に、お父さんに結婚の許可を貰いに行った。


反対されるかと思ったら、物凄く喜ばれた。


「ファーモス先生のような立派な先生に娘が嫁ぐ事が出来るなんて夢のようです。ありがとう、ありがとう!」


「はあ、フェザーさん、そんなオーバーな・・ うっ!!!」


感極まったお父さんが、勇者の腕力でガシッと手を握ってる。やだ、先生の手が折れちゃう。そのお父さんの腕力より強い腕力で私が引きはがしてあげたら、何故か先生が遠い目をした。解せぬ。


それにしてもお父さん、よっぽど嬉しかったのね。まあ、今まで禄でもない人ばっかり来たから無理もないわ。





そうそう、私の中に一緒に居る洋子さんは、全てを見てきた訳だから勿論知っている。先生には紹介出来ないけど、洋子さんが喜んでくれているのは分かってる。


「アリアちゃん、おめでとう! 良い人と一緒になれてよかったね。もう何も心配ないよね」


「洋子さんありがとう! でも、まだ居てくれないと駄目だよ」


「え、でも・・ わかった、エンディングまで見届けるよ。その変わり、二人のデートの時は帰るからね!」


確かに、それはそうした方がいいかも(汗)

洋子さんは私にとってこの世界のお母さん。とても感謝してる。ありがとう。





日々が夢の様に過ぎていく。目まぐるしいと言ったけど、とても幸せ。



あれから、シスターと私は二人がかりで先生の仕事を見直す事を説得した。今までのやり方じゃまた過労になってしまうから。これから結婚するというのにそれじゃ困る。


一つ、お金は寄付を遠慮なく募ること。ちなみに私は自分が稼いだ今までのお金を持参金に提示した。ちょっと多かったみたいで、先生の顔が青ざめている。国家予算規模がどうとか言ってるけど何言ってるのかしら。


二つ、先生だけじゃ手一杯だし、腕の良い医師をもっとこの街に呼び込む。これは先生の師匠にあたる人に紹介してもらってきてもらった。病院が3軒に増えて、過剰な患者が分散された。


三つ、治療代は正規に戻し、無料みたいな診料を改めた。その変わり、余裕のない者は教会に申し出て、治療券を発行してもらう。これは、寄付や国からお金を出させるという形だ。

そんなこと可能かとも思ったけど、あの例の王子様はそう考えてるとシスターが教えてくれた。そう、あの人は確かに善良な人だった。父親の王様とは大違いだと思う。


四つ、3軒ある病院の他に、もう1軒、夜間専門を請け負ってくれる医師を呼び込み、昼開業医師の休息をとれるようにする。あと、3軒の方も休日問題として、休日をお互い違う日にして確実に休めるようにした。ところで夜間専門だけど昼夜逆転で大変ではないかって? その代わり患者は少なくて楽だし、例え患者がいなくても最低限の金額を国から定期的にもらえるように図る。そうしたら、研究を主にしてる年配の医師が喜んで来てくれた。



それからは、随分余裕が出来て体調が良くなった先生を引っ張り出して沢山デートをした。

勿論、洋子さんはデートと聞くと帰って行った(汗)




そんなにお金をかけなくても、公園に行ったり美味しいものを食べに街歩きしたり、すごい幸せ。


今日はお弁当を持ってピクニック。日も暮れて家に送ってもらったけど、名残惜しくて庭のテラスで二人でお茶を飲んでいたら、


「アリア、ちょっと手をだして」


言われて出した左の薬指に、すっと指輪がはめられた。アンティークみたいな古風で繊細な指輪には、綺麗なダイヤが一粒付いていた。石は大きいけどブリリアントカットみたいな立体的でも煌めくカッティングでもないので、落ち着いたシックな指輪に見える。


「これは昔、母から貰ったんだ」


先生の両親は居ない。親族も遠い地に居るそうで、事故で両親を失った先生は、成人になる前に一人になってしまい、今まで続けていた医師の勉強をする事ができなくなったそうだ。けれど諦めず、引退した師匠の扉を叩き、師事を仰ぎ医者になったって聞いた。



「素敵な指輪ね。派手ではないけど品があって、服も場所も選ばないで付けられる。ありがとう、先生」


そうお礼を言ったら、先生がちょっと悪い顔で囁いてきた。



「アリア、ずうっと『先生』って呼ぶの?」


「え、だって・・ 」


「アレンって呼んで」


「あ、あれ・・ ァㇾ・・・」


「ん、聞こえないよ、もう一度」



もう、先生の意地悪!悔しくてお返しに大きな声で言ってやった。


「アレン!」



やった、と思って先生の顔を見たら溶けるような笑顔で見つめられていた。そして、顔が近づいたと思ったら、唇にそっと唇が重なってきた。


温かい? キス? 動揺する前に顔が離れた。



「先生?・・」


「アレンだよ。そうだ、『先生』って呼ぶ度にキスをしよう」


そう言ってもう一度そっと触れてきた。


「もう、先生!・・・って、あ!!」



またキスされると思って身構えたら、軽くハグされて頭を撫でられた。


「ちゃんと練習するんだよ」


優しい声でそう囁かれる。本当はビックリしただけで、全然嫌じゃなかった。実はちょっと期待してしまっていたから尚更恥ずかしい。でも嬉しい。

そっとじゃなく、もっと強く抱きしめて欲しくて、自分からギュッと抱きしめたら、「愛してるよ」と、また笑いながら囁かれた。


そして、もう一度キスして欲しくて先生と呼んだら、


先生、ううん、アレンは、そっと軽く唇を落とすと、後はずうっと抱きしめられた。


いつの間に、頭上に月が輝いていた。

二人で月明かりを浴びて、ただじっとしている。彫像になったみたいねと言ったら、今度は頭の上にキスを落とされた。くすぐったい。思わずクスクス笑ったらアレンも笑ってまた頭にキスされた。



暖かい、幸せ。


「アレン、愛してるわ」


顔を上げて真っ直ぐそう言ったら、驚いたように目を見開いている。


そして、今度はちゃんと『アレン』と呼んだのに、また優しくキスされた。

嬉しくて裡から光が溢れるような喜びが沸き上がる。




幸せだ、わたしの幸せが今此処にある。

この夜の事を、わたしは生涯忘れないと思う。



それから私とアレンは、キラキラ輝く月明かりの中、幸せな姿の彫像の様にずっと動かず身を寄せ合っていた。



ヒロインの幸せの為に先生のブラックな過労問題も解決しました(汗)

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