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永遠の存在

 黒い光が、放射状に急速に広がる。

 

 闇の空間が、一瞬にして約半径40mを包み込む。


 空間の外から、アカネとメアリーの声が聞こえる。


「なっ……ゼノアなんだそれは!?」


「この魔術……凄いわ……!」


 空間の中を無数の闇の光線が蠢く。


 これは、言うなれば結界のようなものだ。


 俺を中心として展開された魔術領域。


 その中では、無数の閃光が、生き物のようにして範囲内に居る外敵を排除する。


 空間を縫うようにして放たれたそれらは、的確にキメラたちの心臓を狙う。


「ギエアアアオオオオオ!」

「ヴォオヴォヴォヴォ!」


 必死に逃げ惑うキメラたちだが、その攻撃から逃れることは出来ない。


 自動フルオートの追尾攻撃。


 この空間内において、立っていられる者はいない。


 俺が敵意を向けた存在は、皆等しく死を迎える。


「何この特殊空間……すごい……」


 俺の後ろで、シリカが唖然とした表情を浮かべる。


 黒い閃光は、シリカを避けるようにして空間を這っている。


「あまり俺から離れるな。魔力に当てられて立っていられ――」


 と、その時、シリカの目が緑に光っていることに気付く。


 この眼……エルフの目か……!


 今なら感じる……今シリカは完全にエルフ族の特性を発揮している……!


「おいシリカ、今の体調はどうだ?」


「体調? ……なんか、わからないけど……魔力が溢れてくるような……こんな感じ今までなかったかも……」


 やはり……。


 高密度の魔力に当てられて、完全に血が目覚め始めている。

 身体の奥深く、血の中で眠っていたエルフの魔力適性が、開花しようとしている。


 なるほど、シリカにエルフの力を操作させる…………これは案外容易いかもしれん。


 さっき頭痛を訴えていたのは、このダンジョンの六層の魔力の濃さによるものか。


 本来人間は魔力を感じられないが、恐らく今のシリカならば感じられるのだろう。


「その感覚を覚えておけ。きっと役に立つ」


「? 役立つ?」


「あぁ」


 そうこうしているうちにも、俺の閃光ノヴァは攻撃を続け、自動的にキメラたちを殺戮する。


 最後の一体が高速で逃げ回り、空間の外に出ようとするが、この領域から外に出るのはたやすいことではない。


 そして、最後の一撃が、キメラの心臓を貫く。


 直後、空間内に敵対反応なしと判断され、その領域は霧散するようにして解除される。


「ふぅ……。こんなものか……」


「これ、今の魔術が……」


 目の前には、無数のキメラの死体。


 全ての生命活動は、終わりを迎えている。


「何が……起こった?」


 アカネが、その手を止め、俺達の方を振り返る。

 

 ほぼ一瞬の間に起こったその不可思議な現象に、アカネも驚きを隠せないでいた。


「うふふ……ふふふ! 予想外、予想外すぎるわ。何が起こったのか計測すらできなかった……何よあの領域! あの領域内は完全に隔絶されていた……第三界以上の高等魔術……!」


 ゆったりとした口調だったはずのメアリーは興奮気味にそう語気を荒げる。


「私のペットを一瞬でこんなに……酷い、酷いわ……永遠の美しさを持った生命の輝きたちが。――でも、素晴らしいわ。こんな魔術を使う生徒がいるなんて。私と同等……いや、それ以上かもしれないわ」


 光悦とした表情を浮かべるメアリー。


「はっ、御託はいい。これで三対一、勝ち目はないぞ、メアリー」


「どうかしらね」


 メアリーはアカネに切り付けられた腕を抑えながら、俺達から距離を取る。


 対するアカネも、地面から生える手の猛追を何とか掻い潜り、横なぎに切り捨てながら、俺達に合流する。


「はあ、はあ……一対一で決着がつかなかったのは不本意だが……三対一なら勝機はある! さすがは十二英傑が一人。序列以上の実力者だ」


「あなたもよ、アカネちゃん。刀一本にしては良くやっているわ。切らせてあげた腕もひりひりして何だか痛いわ。上手に切れたこと、褒めてあげる」


 まだ余裕を持った笑みを浮かべるメアリー。


 だが、ここからはそうはいかないだろう。


「器候補としては十分。そっちのあなた……シリカちゃんも悪くないけれど、やはりゼノア君、君しかいないわね」


「器……どういう意味だ!? 答えろ!」


「アカネさん、もう察しはついてますよ」


「何だと?」


「器……。メアリーは魔獣を使ったキメラの研究をこのダンジョンの六層で行っていた。その結果、この階層にメアリーが作ったキメラ以外の魔獣は存在しない」


「!?」


 アカネの目が見開かれる。


「そんな馬鹿な……いや、だが確かに見てはいない……。君たちが戦っていたところにある死体もどこか奇妙だ。あれが全部キメラだと?」


 俺は頷く。


「そして、魔獣と魔獣の融合、それを達成したメアリーの行きつく先は簡単です」


 その時、アカネがハッとする。


「まさか……!」


 シリカも察したようで、そんな……っと、僅かに言葉を漏らす。


「そこまでわかっちゃうのね。さすがよゼノア君。……そう、私は永遠が欲しいの。永遠のものが好き。いつまでも美しさを保ち続けるその在り方に惹かれるのよ」


 そう言って、メアリーは太ももに括りつけた笛を取り出す。


「私の生涯最高傑作。永遠を手に入れた麗しき親友。私の一族の魔術の極致に至った、歴史と研鑽が生み出した美の化身」


 メアリーは笛を吹く。


 美し音色が、ダンジョンに響き渡る。


「ふふ、いらっしゃい、私の可愛いかわいい親友」


 ズズズっと何かを引きづるような音が、奥の暗闇から聞こえてくる。


 恐らく、尻尾を引きずる音。


 ドシンドシンと、響く足音は明らかに魔獣のそれだ。

 ――だがしかし。


 涎を垂らし、目はぎらつき、辺りをキョロキョロと見回している。


「いらっしゃい……そう、こっちよ」


 それは、メアリーの方へと寄っていくと、腕の中へと抱かれる。


 茶色い髪が、ふわりと揺れる。


「さあ、初めての出番よ、《《サラ》》」

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