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サラの失踪

「居なくなったって……」


 シリカは額に汗を滲ませ、必死の形相を浮かべる。


「どうしよう……どうしよう!?」


「落ち着け、シリカ」


 俺はシリカの肩に手を乗せ、ぽんぽんとゆっくり叩く。


 シリカは少し目を泳がせた後、徐々に落ち着きを取り戻したのか深く息をすい、はく。


「――そうだね、ごめん……取り乱しちゃって」


「気にするな。で、居なくなったってどういうことだ? ゆっくり説明してくれ」


「うん……それが、私今日ゼノア君と合流する前にサラさんと少し会う約束をしてて、早めに研究室に来てたんだけど……」


「それで?」


 シリカは俺の目を見て続ける。


「約束の時間まで来なくて、少し寮の方も覗いてきたんだけど、特に何か知ってる人もいなくて……」


「ふむ……直接寮の部屋には行ってみたのか?」


 シリカは頷く。


「けど、留守みたいで……」

 

 なるほど、完全に行方をくらませたわけか……。


 どういうことだ?

 サラ自体は特に脅威のある上級生という訳でもない。


 考えられる可能性は……。


「ただ黙って出かけた可能性もない訳ではない」


「そうだけど、サラさんが私達に何も言わずに約束を破るってことはしないと思うんだ」


 それは同意だな。


「だとすると、何か事件に巻き込まれた可能性は否定できないな」


「そんな……一体何が……」


「メアリーを恨んでいる者による犯行という線も大いにあるだろうな。メアリーにとって唯一の親友……ないとは言い切れない」


「…………」


「それ以外にも、この学院はただでさえ無法地帯だ。何か全く無関係の事件に巻き込まれていたとしても不思議じゃない」


 俺のその言葉に、シリカの目が一瞬険しくなる。


「そんな言い方…………ううん、ごめんね。確かにそうだね……何かあってもおかしくないのがこの勇者学院だもんね」


 シリカの顔が暗くなる。


 あれだけ慕っていたサラが居なくなったのだ。


 心配で気が気じゃないのも当然か。

 俺としてはその対象がシリカじゃなかったことがせめてもの救いというものだが……。


 それにしても、一体何があったのか?


 少なくとも、サラが故意に行方をくらましたわけではないのは信じてもいいだろう。


 となると、やはり何かに巻き込まれたとしか……。


 ロイドが言っていた失踪が増えているという件か?

 それとも、メアリー関連か?


 いや、そもそも、サラ自身に何か隠し事があり、俺達の預かり知らないところで事件が起こっている可能性も否定はできない……。表ではいい先輩を演じているが裏の顔がある、という可能性も無くはないのだ。


「君たち、また来ていたのか」


 その声に振り返ると、そこにはアカネと、もう一人身体の大きな男が立っていた。


「アカネさん……!?」


 アカネは軽く手を上げ、俺たちに挨拶する。


 アカネ……奴がここに来たのは別に世間話じゃないだろう。

 とういうことは――


「サラ先輩が消えたのは……その様子じゃ知っているようだな」


「そ、そうなんです! アカネさん何か知ってるんですか!?」


 しかし、アカネは首を振る。


「何も。私も必死に聞いて回ってるんだが、何もわかっていない」


「そんな……」


 その言葉に、シリカが項垂れる。


「……そちらの男性は?」


「あぁ、この人は――」


 すると、その男はスッとアカネを制し、前に出る。


「俺はラウール、六年生だ」


 角刈りに、鋭い目つき。

 体格はこの学院で見た奴の中では一番と言っていいほど良い。


 制服の上からでも、その肉体が強靭なのが分かる。


「ラウール先輩は私の尊敬する先輩の一人だ。正義感が強く、弱い者に手を差し伸べる優しさと、それを完遂出来るだけの力を持っている。信頼していい」


「おいおい、大げさだ。そんなに褒めてもなにもでんぞ」


「いいじゃないですか、ラウール先輩。――で、二人にも話を聞きたいんだが……。サラ先輩が消えたことを知っているなら話が早い。何か知っていることはないか?」


「えっと……」


 シリカは今日の約束、そしてこれまでサラを探して動いてきた話をまとめて報告する。


 アカネは黙ってその話に耳を傾ける。


「――という感じなんですけど……」


「ありがとう、シリカ。参考になったよ」


「あの、サラさんは一体何に巻き込まれたんでしょう……?」


 恐る恐る聞くシリカに、アカネはきっぱりと言う。


「現時点では何とも言えないが、失踪したとみていいだろう。恐らくは誰かによる誘拐。勇者学院では日常茶飯事だ」


「日常……」


「だからと言って諦めるつもりはない。私はサラ先輩には特に恩がある。絶対に無事に見つける。そのためにラウール先輩にまで助けをお願いしたんだ」


 そう言って、アカネはぽんとシリカの頭に手を乗せる。


「安心しろ。私が必ず見つける」


「はい……」


 アカネは不器用ながらも笑みを浮かべる。


 アカネが頼るラウール……恐らくはかなり頼りになる男なのだろう。

 シリカが探すと言いかねない今、こいつらが代わりに探してくれるのはありがたい。


「私はこの研究室に何か手掛かりがないか調べる。二人は今日は寮に戻れ。ロイドたちへの攻撃、失踪事件、メアリーの黒い噂……今学院はいつも以上に混沌としている」


「そうみたいですね。俺たちは下手に動かない方がいいみたいですね」


「珍しく聞き訳がいいな、ゼノア。その通りだ。特に夜は危ない、くれぐれも用心してくれ。私もできるだけ見回りは続けるが、生憎私には目が二つしかついていない。見れないところもあるからな」


「はい……。あの、サラさんをお願いします……!」


「あぁ、任せておけ」

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