第8話 逆襲のダンジョンマスター
「では我々は開放されるのかね?」
「勿論です、日本政府に監禁されている所をアメリカに助けて貰いましたからね」
ダンジョンに帰った俺は直ぐにアメリカの封鎖部隊の隊長に話をしに向かった。彼等は地下2階層でスケルトン部隊に見張られて生活をしていたのだ。元々地下2階層は人間達の為に街を造っていたので、その中の宿屋に全員が軟禁されている状態だった。
「我々はどうなるんだ?」
「開放しますよ、でも日本政府には俺の私物を盗んで、俺を監禁したので仕返ししますけどね。其の後でなら開放しますよ」
「そうか~、まあ致し方無いか。しかしいきなり監禁とか酷いな、政府の連中は何を考えてるんだ!」
「あの手の連中が考えることなんて一つでしょう」
「ああ、出世と天下り、後は金と女だな」
アメリカの封鎖部隊のマッケンジー大尉との話し合いの後で、自衛隊の封鎖部隊の隊長佐々木1尉と話をしたのだ、開放される事は喜んでいたが、スケルトンに見張られているのは気味が悪いって話だった。
そうしてマッケンジー大尉に本国との連絡をとって貰う事にしたのだ、ダンジョンから出て外で通信してもらえれば直ぐに本国と繋がるはずだ。彼らには今のところ用は無いので、直ぐに帰還してもらっても構わないのだ。
「それじゃ、本国と通信しても構わないのだな」
「良いですよ、直ぐに開放しますよ、それに自由に外に出てもらっても構いませんよ」
「有難い、骸骨に見張られて生きた気がしないんだよ。部隊を連れて外に出させてもらう」
う~む、俺のスケルトン部隊は人間達に不評の様だ。見た目は怖いけど凄く気の良い奴等なんだがな。見かけで人を判断してはいけないぞ、まあ、人じゃないけど。
そして次の日オスプレイの編隊がダンジョン入口にやって来た。封鎖部隊の救出部隊だ、アメリカは自国の兵士を大事にするのだ、彼等は仲間を決して見捨てない、だから勇敢に戦えるのだ。
そして嬉しそうに帰ってゆくアメリカ兵達を俺とコア子、そしてスケルトン達で手を振って見送ってやったのだが、彼等は何故か青い顔をして口を引きつらせていた。トラウマにならなければ良いのだがな。
「やあ、マスター。兵士の開放と救助に感謝する」
「よお、ジョンじゃないか。偉く早い再開だな」
「ハハハハ、何故か僕が君の専属連絡員になったんだよ。お手柔らかに頼むよ、何でもスケルトンは凄く怖いって話だからね」
「良い奴等なんだけどな、まあ良いや。早速ビジネスの話をしようじゃないか」
「ビジネス?」
「お互いの利益に成る話しさ」
そして俺の政府に対する復讐が始まったのだ。先ず復讐その1、アメリカに俺が理不尽に監禁された事によって今回の事件が引き起こされた事を暴露してもらう。その2、監禁から救助してもらったお礼にポーションを10本程アメリカ政府に贈与する。これをアメリカの政府に大々的に発表してもらうのだ。
「へ~、ポーションとか言う不思議な奴を貰えるのかい?」
「勿論だ、救助のお礼さ。何なら毒消しも10本程付けようか」
「有難い、これで僕は出世出来るよ」
「フフフフ・・・・・・力が欲しいか?」
「?、何の事だい・・・・・・」
「ジョンが出世するのに力を貸すって事さ、どうだい? 俺と組まないか」
「良いとも! 君は仲間にはフェアみたいだからな。敵には厳しいみたいだけど」
それから俺はジョンと色々な悪巧みを始めた、ジョンは思っていた以上に腹黒で、俺がドン引きする程交渉ってものが分かっていた。彼が俺に本国の要求を伝えて来るのだが、彼は完全に俺の味方で、本国の要求を片っ端から拒否するように俺に助言するのだ。
「ダメダメ! そんなに簡単に要求を飲んだら舐められるよ。それに僕が目立たないじゃないか!」
「そんなもんかな~、良くわからんけど」
「まあ僕に全部任せてよ! 難しい交渉をするフリをしてマスターが儲かる様にするからさ!」
「ええっと、宜しくお願いします」
それから毎日ジョンは俺のダンジョン最下層に入り浸り、一緒にモン○ンをして遊んだり。ダンジョンの風呂に入ったり。俺やコア子とトランプしたり、スケルトン達とキャッチボールをして遊んでいた。俺が見る限り1秒も仕事をしていないのだが、遊ぶのが仕事なのだと言って全然悪びれて居なかった。遊んでいると罪悪感に見舞われる俺と違ってジョンは大物だったのだ。
そして今日もジョンはスケルトン達と野球をして遊んでいたのだが、急に真顔になって俺にこう言った。
「そろそろ本国の連中がブチ切れそうだよ、何か良い考えが無いかな?」
「何だよ、お前は何か考えが有って遊んでいたんじゃないのかよ!」
「いや~、遊んでいたら何か良い考えが出るかと思ったんだけどね。出なかったんだ! 当たり前だよね、僕ダンジョンの事何も知らないもの」
頼りになるのか成らないのか良く分からない奴だった、もしかしたら此奴は俺と同じで何でも適当に誤魔化す奴なのか? いやいや、仲間を疑うのは駄目だ、一度信用したら最後まで信用するのが漢ってもんだ。
「じゃあさ、このダンジョンの調査団を受け入れようぜ。ポーションとか凄く受けたから、喜ぶんじゃね?」
「それだ! 良い考えだよ! またもや僕は出世して時給が上がるよ!」
彼は大喜びしてスキップしながら、ダンジョンの外に置いてある通信機へと向かった。そして何やら大声で本国と話をしていた。早口の英語では何を言ってるのか全然分からなかったが、物凄いテンションで強気で交渉している事だけは良く分かった。俺と話す時と違って、ジョンにはそこはかとなく迫力が有ったと思う。
「マスター、やったよ。僕は正社員になったよ、ついでにマスターに現金1億ドル払う様に言っておいたからね! マスターは今日から億万長者さ!」
何をどうやったら俺が金持ちになるのかわからなかったが、ジョンが上手くやって現金を分捕った様だ。ついでにチャッカリ自分を正社員にしていた。
そして俺のダンジョンはアメリカ政府の調査団を受け入れる事になった。そしてこの事を発表した途端に世界各国が大騒ぎする事になった。なにせこのダンジョンには未知の薬があるのだ、この謎を解き明かせばノーベル賞は確実で、さらに薬の独占販売が出来れば世界を支配する事すら出来るかも知れない程の効能を持っていた。だから俺の持ってるポーションは世界中の製薬会社が幾ら金を払っても欲しい物だった。
そして各国が大騒ぎをしている中に当然日本政府も入っていたのだが、俺は完全に無視をしていた、誰が来ても門前払い、使者の話も聞かないのだ。この事実を知った国民は、現政府に対して連日批判して政権支持率はついに一桁にまで落ちてしまった。利用するだけ利用して捨てようとした俺に反撃されて、政権が吹き飛ぶのは時間の問題だった。そしてここまで来ると、自衛隊を中に監禁していると、俺の立場が悪くなるので、彼等を全て無条件で開放した。平和を愛する正義のダンジョンマスターは哀れな兵士達を助けたって美談にして、無能政府を更に攻撃してやったのだ。
「へい! マスター。今度はイギリスが調査団を送りたいって言って来たけど、どうする?」
「わははは、受け入れてやれい! 俺は気前が良いのだ、ここに沢山の国が調査に来れば、来れない国は立場が悪くなるのだ!」
「ハハハハ! 世界を征服出来そうだよね。マスターに跪いた国だけが利益を得られるんだからね」
「世界なんか要らん! 俺は日本政府をハブれれば其れで良いのだ」
こうしてダンジョンにアメリカ政府の調査団100名がやって来た、調査の為の学者が50名、そして彼等の調査の補助をする者達が50名。彼等はダンジョン2階層でキャンプを張りながら、ダンジョンの調査をすることになった。この調査団の人気は凄まじく、選ばれた人間は間違いなく世界有数の能力を持つ学者ばかりだった、そして本物の天才達って奴は凡人にはまるで理解出来ない謎の理論で行動する事が良くあるのだった。




