第6話 囚われのダンジョンマスター
「おふう~!」
俺は暇だった、東京に連れてこられた俺は、ダンジョン内での出来事を毎日調べられ、そして個室に閉じ込められてしまったのだ。外に出たいのに出してくれない、つまり俺は監禁されたのだ。何も悪いことはしていないのに、と言うかダンジョンに入った連中を助けたのに、これは一体何の罰ゲームなんだ?
「人権蹂躙だ~! 責任者を出せ~! 腹減った~! モンハンと3D○LLを寄越せ~!!」
「煩い! 静かにしろ。 メシ抜きにするぞ!」
「やれるもんなら、やってみやがれクソ野郎!」
監禁2日目、朝飯抜きで取り調べ。何時間も同じ事を繰り返し聞かれる。俺はこの方法を知っていたので、聞かれるたびに違うことを答えて相手を混乱させてやった。ザマ~見ろだ!そして訳の分からない時間に食事が出される、オマケに不味い。俺は益々怒り出した。これは犯罪者に対する調べ方では無く、適性のスパイや兵士に対する尋問方法なのだ。つまり何故だか俺を政府は敵性が有ると判断したのだ。
監禁3日目、又もや変な時間に食事や尋問が始まる。そして同じ事を繰り返し聞かれる。完全に頭に来た俺は質問には全く答えなくなった。怒りのゲージはドンドン溜まってゆく、俺をこういう目に合わせた責任者には目に物を見せてやる、そして復讐の方法を考えると段々楽しくなってきた。
監禁4日目、殴られたりはしないのだが、毎日食事の時間をずらしたり、尋問時間を変えたり、更に就寝時間や起床時間を変えている様だ。これで俺の時間感覚を狂わせたり精神的に不安定な状態にして有利に尋問をしたいようだが、甘い! 俺はこの尋問方法を知っているので益々怒りが増大してゆくだけなのだ。そして俺は異世界に捨てられても勇者と魔王をぶち殺し、神を殺しかけた危険人物なのだ、この程度の事で精神が折れる程ヤワでは無い。
「くそ~、日本を滅ぼすぞクソ野郎どもが」
「おやおや、これは又物騒な事を言うね」
「誰だ貴様?」
今まで見たことの無い男が部屋に入って来た、日本人では無い白人で、何の特徴もない男だ。
「やあ、僕はアメリカ大使館から来たんだ。話を聞かせてもらえるかな?」
「ふ~ん、もしかして分析が済んだのか?」
「ふふ、話が早くて助かるよ」
俺はここに監禁される時に身ぐるみ剥がされたのだ、俺の私物のスマホも商売に使おうとしていたポーションや毒消しも政府に取られてしまったのだ。ダンジョン内での映像で俺がコア子から貰ったポーションを飲んでいる画像があるハズなので、あれが人体には無害なこと、また骨折を治す可能性がある事等が分かるはずなので、政府は俺から取り上げたポーションと毒消しを分析している事は予測していた。そしてこの作戦にアメリカが噛んでいる事からポーションや毒消しのサンプルをアメリカ側にも渡しているだろう事は勿論予測していたので、アメリカ大使館から人が来ることは以前から予想していた。
「秘密が分からなかったんだろ?」
「その通り、全てお見通しとは凄いね。僕はジョンだ、宜しくねマスター」
そのジョンと名乗るアメリカ大使館の方から来た男は、俺の部屋にある小さな机に腰掛けた。そしてメモ帳を取り出して記録しだした。どこにでも居る様な平凡に見える相手は恐ろしい、わざわざそういう人間を選んで送り込んで来ているのだから彼は相当優秀なエージェントに違いない。メモ帳も意味があるはずで、勿論録音もしているのは間違いないはずだ。
「君が持っていた2つの液体は分析させて貰ったよ。結論から言えば未知の物質は発見出来なかった」
「それで?」
「未知の物質が発見出来なかったのに、未知の効果が有ったので本国は大騒ぎになってるんだ」
「そうだろうな、あれはこの世界の物じゃ無いからな。世界で2本しかない貴重なものだったんだよな。クソ野郎に取られたけどな」
「何か欲しいものは有るかい? 殆どの物は手に入るよ」
そこで俺は彼の手帳に(自由)と書いた。書いている最中に怪訝な顔をしていたので、目で監視カメラや盗聴器をチラリと見ると、ジョンには意味が通じた様だった。そしてジョンも監視カメラから死角になる様に手で塞ぎながら手帳に何やら書き出した。
(見返りは有るのかな?)
(ここには無い、ダンジョンに有る)
「OK! 実に有意義な面談だったよ。またね! マスター」
そして俺は彼と握手をして別れた。勿論その後で政府職員の尋問が長時間有り、又もや不味い食事が出た。そしてこの日からシャワーも禁止されて俺は益々怒りを溜め込んでいた。
監禁生活5日目、変化が有った。突然まともな食事が出て、シャワーを浴びる許可が出たのだ。そして新しい服を支給され移動することになった。何故か手錠をはめられ両腕を体格の良い奴に掴まれている、いつの間にか俺は何もしてないのに犯罪者にされた様だ。そして黒塗りの車に押し込まれて何処かに運ばれる様だ、勿論周りの連中に何処に行くのか聞いてみたが無視された。
そして監禁されている場所から車3台で移動中に騒ぎが起こった。3台の車のうち俺の乗ってる車は中央で、前後は護衛の乗ってる車なのだ。道が開けて来て車の通りがすくなった時を見計らったかの様に、前後の護衛車両に大型の車が追突して動きを止めたのだ。鮮やかな手口で、俺の車両も車に挟まれ完全に動きを止められた、そして前後の車から覆面姿の武装した人間が出てきて、俺の監視人を簡単に無力化した。
「出ろ!出ろ! 急げ!急げ!」
そして当然の様に俺は車から連れ出され、黒塗りの大型のバンに連れ込まれた。ここまで30秒程なので彼等は訓練を受けた本物のプロなのは間違いないだろう。素人が相手なら何をするか分からないので俺も少しは焦るのだが、相手がプロなら安心していられる。なにせプロは余計な事はしないし話が通じるのだ。
「悪いね、遅くなった」
「いや、予想より早かったよ」
連れ込まれた黒塗りのフルスモークの大型車両にはジョンが乗っていた、つまり此れはアメリカの作戦って事だった。
「これから空軍基地に向かう、良いね」
「ああ、早くダンジョンに戻らないと不味い。周りの人間達が虐殺されるぞ」
「既に始まってる、アメリカ軍は撤退中だ」
「遅かったか」
俺が恐れていた事が始まってしまった様だ、ダンジョンマスターの俺が帰って来ないのでダンジョンコアが実力行使を始めたのだ、そしてダンジョンコアは生物に対して遠慮なんて全く無い。マスターを攫った連中は全て敵なのだ。この世界の兵器は強力だが、コアの力はこの世界の法則では理解出来ない力を持っている、認識も分析も出来ない攻撃から身を守る手段を人間達が持っているとは思えなかった。政府はパンドラの箱を開けてしまったのだ。




