第31話 ダンジョン消失
「あの人フリーダムだよな」
「凄く楽しそうですね、マスター」
ダンジョンに引っ越して来た将軍は、カウボーイハットにブーツ、そして腰に45口径のリボルバーをぶら下げて馬に乗って走り回っていた。映画で見たカウボーイそのままの姿で何やら毎日楽しそうに暮らしている。ああいう人の事をアグレッシブって言うのだろうか、毎日チマチマ悩んで居る俺がアホらしくなってくる様な生き方だった。
「ヘイ! マスター、今日もBBQしようぜ」
「お! おう」
将軍はダンジョンに来る時にテキサツから牧場にいた牛や馬、それに犬や家財道具を全部持って来ていた。引越しはダンジョンから牧場まで通路を作ったから簡単だった、家財道具を運んでくる時にはスケルトン部隊を使ってこれまた簡単に終わった。そしてダンジョンの地下28階層に将軍専用の草原や水場を作ってあげたのだった。牛飼いの仕事って朝早くから夜遅くまで有る重労働だった。何故知ってるかと言えば、何故か俺が手伝わされて居るから知っているのだ。馬に載ると尻が痛くなるし、性格の悪い馬は俺に噛み付いたりするのだ、ぶっ殺そうかと思ったが、将軍の馬なのでやめておいた。
でもまあ悪い事ばかりでも無かった、乳牛が居たので採れたての牛乳が飲めたり、チーズ何かが自家製で造れる様になったのだ。大きな声では言えないが採れたての牛乳は美味しくない、俺は普通の市販の冷やした牛乳の方が好きだな。まあ、グルメっぽくは無いけど事実なのだから仕方が無い。
「ほらよ、焼けたぜ! 食えよマスター」
「おっ! おう」
「私にも下さい」
「私は一番デカイやつ!」
「吾輩はレアが良いですな」
将軍の焼く肉は馬鹿デカイ、バルキリーは丈夫な歯と胃袋でバクバク食っているが、俺は肉をキロ単位で食うのは無理だった、ご飯や野菜が食べたいのだ。
「ぷは~クソ旨いぜ! ここにはチマチマ文句を言う餓鬼が居ないから住みやすいぜ」
将軍は肉を喰いながら、葉巻を吸ってバーボンまで飲んでいた。仕事中は酒を飲まないが、仕事が終わるとバーボンをガブガブ飲んでいい気分になるのが人生の醍醐味なのだそうだ。まあ、汗を流した後で食う飯は美味いし、好きな事をして文句を言う人間が居ないのは良い事だと俺も思う。
「何しけた顔してるんだよ! 世界で一番強いんだからシケタ顔するなよ」
「いやさ、人類をどうしようかと悩んでるんだよね。仲良くするのも最初だけで絶対あいつ等裏切るし」
「滅ぼせよ! メンドクセー。アイツ等が大人しいのは最初だけだぞ、どうせその内変な連中が組織を乗っ取るから同じことの繰り返しだぜ」
「やっぱりな、将軍も同じ考えだったか」
「でも俺ならアイツ等に取り合わないな、時間が勿体無いからな。無視して自分の好きな事をやる方が楽しいぜ。俺はな騎士になりたかったんだ」
それから将軍の夢物語が始まった、何でも子供の頃に見た映画で姫様を守る騎士が格好良かったので憧れてたのだそうだ。現代に騎士は居ないので仕方なく軍隊に入って姫様の代わりに国を守る事にしたけど思ってるの全然違ったって話だった。
「ふ~ん、騎士ね~」
「悪いかよ! 姫様を守る騎士とか憧れるじゃね~か。クソ格好良いぜ! 死ぬ前に一回騎士に成って見たかったぜ!」
「姫様を助けて、それから姫様と結婚するのが夢なのか?」
「馬鹿言え! 姫様を助けてそれから格好良く去って行くんだよ! これが漢の美学って奴よ!」
「ウヒョォォォォォ~! 全然報われない所がカッケ~」
多分これが将軍の魅力なのだろう、損や得を全然考えない潔さ。だから信用出来るのだな、それに引き換え俺は何なんだろうな? 俺に美学とか有ったっけかな? うん全然無いな、楽して行きたいだけだった。
「騎士にしてやろうか?」
「何だって? そんな事出来るわけね~だろ。この世界に騎士なんてネ~よ」
「俺が元居た世界には居たぞ、それに姫様も居た」
「マジか! その話をクソ詳しく!」
それから俺の独演会が始まった、知らない異世界に捨てられて、勇者をぶっ殺し、姫様を助けて魔王をぶっ殺し、そして世界を平和に導き姫様や人族や亜人達を助けた話。
「うおおおお~!!! カッコ良い~! クソクソクソ! カッコ良いぜ!」
「かなり盛ってますね、マスター」
「騙し討と不意打ちばかりだった記憶が・・・・・・」
「素晴らしい戦いでしたな」
「そんじゃ、将軍を騎士にする事にするか! この世界を滅ぼすより面白そうだ、ここの連中は勝手にやれば良いだろう」
良く考えたら俺はこの世界の神でも、人類の母親でも無かった。アイツ等は好きに生きて勝手に滅びれば良いのだ、俺が滅ぼさなくても勝手に滅びると思う。なので、俺はもっと面白い事をして生きる事にしたのだ、将軍が騎士になるなら俺はSランクの冒険者に成るのだ、冒険者組合が無ければ俺が創る、そして俺が冒険者の憧れS級冒険者になるのだ。ドラゴン位ならバルキリーやキングがやっつけてくれるだろう、俺にはとても無理だがな。
「よ~し、そんじゃ。転移するぞ。目標は剣と魔法の世界!」
「了解です、マスター」
「面白そうだな」
「グフフフ、邪王様の恐ろしさを次の世界にも思い知らせましょう」
「頼むぜマスター! クソ面白い世界に連れてってくれ」
そして次の日ダンジョンはこの世界から消えた、消える前に世界中の金や銀を盗んで。そしてその事実が広がると世界は安堵した、世界の脅威が無くなったから。そして不思議な事に世界中に現れていた魔物も出現しなくなった、この事に安堵する者も居たが、レベルが上がらなく成ったので残念に思う人間達もいた、魔物が居なくなったせいで人間が特別な力を持つ事が無く成ったのだ。魔物を倒してレベルアップした人間は普通の人間より遥かに強く、オリンピックの記録が全て塗り替えられたのだった。人間の科学的な努力をあざ笑う様な現象が実際に起きていたのだから。




