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斜め上のダンジョンマスター・現代編  作者: ぴっぴ
第3章 ダンジョンの咆哮
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第29話 悲鳴を上げる世界

 包囲殲滅作戦と言うものがあるらしい、日本や俺がゾンビ兵を送り込んだ国で盛んに行われている軍事作戦の事だ。

 首都でゾンビが大量に発生して国が滅びそうなので、首都以外の人間達が首都を切り捨てる判断を下したのだ。何をするかと言うと、首都を封鎖して出てくる人間を全て殲滅する作戦なのだ。つまりこれ以上ゾンビが増えない様にするって作戦だった。他にも全世界が国ごとに国境を閉ざしてゾンビ兵が現れた国を包囲し始めた、自分の国にゾンビが入り込むのを防ぐ為に。そして俺を攻撃して来た国は国同士の貿易も無くなり、危機的状況に陥っていった。もはやGDPがどうとか言ってる余裕が無くなって来た、生きていくだけで精一杯、国全体が田舎状態に陥ったのだった。


 そして無謀な攻撃を仕掛けた国連に非難が集中し国連は解体、新しい組織が発足する事になった。まあ出来たところで大した組織では無いのだが、常任理事国と言う一番のガンは無く成った、全ての国の権利が平等になった事だけは進歩と言えるかも知れない。この組織は真国際連合と言う厨二病的名前になった、名づけた奴は日本のアニメのファンだった様な気がするのは俺の気のせいかも知れない。


 そして世界中が悲鳴を上げて大騒ぎをしている時に俺達は何をしていたかと言えば、分捕った国連軍の資材の整理をしていた。そして面白い物を見つけるとそれで遊んでいた、特に今回手に入ったボート等は今まで持ってなかったので楽しめたのだった。


「マスター、知った顔が来てますよ」


「誰だ?」


「将軍ですよ」


「将軍だったら会おうかな、友達だからな」


 今まで攻撃一辺倒だった世界だったが、少しは頭を使う事にしたらしい。そう、対話って奴だ、普通なら攻撃の前に行うのだが、簡単に踏みつぶせると思っていたら強かったので考え直した様だった。まあ俺からすると遅すぎるって思うのだ、クラスにおとなしくて動かない奴が居て、良い物を持っていたからクラス中の皆で石を投げて殺して奪おうとしたら反撃されて、酷い目に有った連中が急に話し合いをしに来たって感じなのだな。俺としては話し合い等しなくても一向に構わないのだ、困ってるのは世界で俺は全然困っていないのだ。


「よう! 将軍久しぶり、日焼けしたな」


「おう、マスター久しぶり。派手にやったな」


「そうか? 手加減してるぞ、まだ人間達が生き残ってるだろ?」


「何だよ、そこまでの力が有ったのかよ。こりゃあお偉いさん達が腰を抜かすな」


「大丈夫だって、本当の事を言ってもアイツ等は信じないからな。アイツ等は自分に都合の良い嘘しか信じない」


「ハァ~ッハッハ!! クソ良く分かってるな! 違いないぜ」


 将軍は真国際連合の知り合いに頼まれて、俺との交渉に来たのだそうだ。テキサスで牧場をやってノンビリ暮らしていた所に急にヘリが現れて、昔の戦友に頼まれて来たから仕方なく来たって事だった。


「ゾンビの被害は大丈夫だったか?」


「ああ、何の問題も無いな。田舎は自給自足だからな。それにゾンビ兵が来ても撃ち殺せば良いだけだ、野生動物の方が怖いぜ」


「わざわざ田舎に引っ越したんだから、首都を攻撃するのは予想の範囲内だったんだろ?」


「そりゃあな、脳みそがついてれば誰でも首都を攻撃するよな。田舎なんて攻撃しても金が勿体無いだけだからな」


「で? 俺にどうして欲しいんだ」


「真国連が話し合いをしたいそうだ。俺としては無理だと思うんだがな、人の家に武装した連中を送り込んでおいて、都合が悪くなったから仲良くしましょうなんて信用出来ないからな」


「まあ、その通りだな。トップが変わったから今までの事は無しにしましょうなんて言い訳は俺には通用しない」


 仏の顔も3度までって言葉が有るが、俺はそんなに善人じゃないので一度騙されれば十分だ。殺しに来れば反撃する、世界中の人間の命よりも俺の命の方が大事なのだ。世の中には奇特な人もいて世界の為なら死んでも良いって人もいるだろうが、俺は違う。自分の命は惜しい、それも俺の持ってるダンジョンを取り上げる為に死ねって言われても死ぬ気は全然無い、それどころか因縁を付けてくる奴は全員殺す気なのだ。


「だよな~、俺でもそう思うぜ。じゃあ真国連にはクソ野郎って言えば良いか?」


「そうだな、もう少し身の程を知らせてやった方が良いかな? 人口が半分位になれば自分達の立ち位置が分かるかもしれんな」


「おいおい、やめてくれよ、牛肉が売れなくなるだろうが。俺の牧場が潰れちまう」


「仕方ね~な、将軍の頼みならやめとこうか」


 面倒なので世界人口を半分位に減らして、ダンジョンに攻撃する能力を根こそぎ取り去ろうと思ったが、そこまでやるのは面倒だし友達が困るのならわざわざしようとも思わなかった。知らない人間が何人死のうと気にしないが、友達に苦労を掛けるのは良くないからな。そして将軍が帰るときにお土産でコア特性のお守りを10個程渡した、これを持っているとダンジョン産の魔物には絶対に襲われない。むしろ人間に襲われているときは近くの魔物が守ってくれるという便利グッツだった。魔物は敵しか襲わないので人間よりよっぽど信頼出来るのだ。


 そして1週間ほど後、又もや国連の代表らしき者がダンジョンを訪ねてきた。何も話すことは無いのだが、折角来たのだから話だけでも聞いてやることにした。俺は気遣いが出来る日本人なのだ。


「お会い出来て光栄です、ダンジョンマスター」


「うむ。俺は暇だから気にするな」


 新しい国連から偉く低姿勢な奴がやって来た、俺の方に話し合いをする気が無い事を将軍が話したからだろう。そして俺は遠慮するのを辞めたので、思ってる事を包み隠さず話すことにしたのだ、まあ、それで相手が慌てているが気にする必要は全然無いからな、なにせ俺の方が遥かに有利な状況なのだ。


「不幸な行き違いが有った様ですな、その説明をさせて頂きたいのです」


「な~に俺は全然気にしてない、俺は寛大だからな。気分が良いうちは貴様らを生存させてやろう。気が変わったら殲滅するかも知れんがな」


「ま、まさかそんな事が出来るわけない!」


「そうかな?」


 国連の代表者と話をしている普通の部屋を指を鳴らすだけで改変する。今度は大理石が敷き詰められ、真っ赤な絨毯と玉座が有る広々とした部屋だ。そして俺はおもむろに玉座について指を鳴らす、そうすると今度は部屋の中にスケルトン部隊600名が整列する。国連の代表は目を剥いて驚いているが気にしない。


「馬鹿な! トリックだ、これは何かのトリックに違いない」


「不敬である! 跪け虫けら」


 いつの間にか現れたキングが代表を怒鳴りつける、王に向かって許しが無いのに話しかけるとは不敬なのだ。普通ならその場で切り捨てられても仕方無い事なのだが、野蛮人の代表の人間には分からなかった様だ。


「キング。そいつらは野蛮人なのだ、他人を敬うとか言う概念は無いのだ。自分達は特別、自分達の言い分を他人は無条件で聞かなくては成らないと考える馬鹿どもなのだ」


「何と愚かな、強者と弱者の違いすら気づかないとはな」


 お気づきの通り俺はダンジョンレベルが上がって、出来ることが増えた、先日の国連軍のお陰だな。以前のレベルが30台だったのが今やダンジョンレベル60オーバー、ちょっと前ならコアに頼んでいた事も自分で出来る様に成ったのだった。この世界に来た時は俺もコアも力を使い果たしていたので無力だったのだが、この世界の悪意が俺を強くした、ダンジョンはその特性上、自分からは動かない、ダンジョンに侵入する悪意を持つ者により力を増す、そういう存在なのだ。簡単に言えば俺はこの世界の悪意とも言えるだろう。

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