第21話 ダンジョンマスターの仕事
国連からの引渡し要求を蹴った翌日、将軍とジョンがやって来た。ダンジョン都市の国際空港にはまだ国連軍は来ていない様だ。多国籍軍に成るので編成や、指揮系統のすり合わせに時間が掛かるようだ。そして俺も戦闘の準備に少し時間が掛かるのでちょうど良い塩梅だった。こっちの世界に帰ってきてからはダンジョンの改造を行っていなかったのだ、まあポイントが貯まる端からポーションに替えて金儲けをしていたので俺も平和ボケしていたのかも知れない。金を有難がる人間も居るが、金は食えないし、今回のような状態に陥ると何の役にも立たないのが金なのだ、金は平和な時にだけ有効な数字なのだな、特に今回の様な戦闘状態に陥ると国同士でも兵器の売り買いに制限が掛かるのは昔から同じで、自国で兵器を作れない国はそもそも戦争をする能力すら無いのだ。
「やあ、将軍久しぶり。どうした? 渋い顔して」
「もう将軍じゃね~よ、元将軍さ、マスター」
「辞めたのか?」
「ああ、こんなクソ戦争なんかやってられるか! 阿呆らしい」
将軍から今回の国連通達について話を聞くことが出来た。今回の騒動の発端は地震と保護した怪我人が原因だったらしい、地震の影響を全く受けないダンジョンは想像通り核兵器による攻撃も受け付けない。なにせ外部の影響を全く受けないのだ。そして怪我をしても直ぐに治る不思議な薬が大量に有る事もバレてしまった。こうなるとこのダンジョンの価値は無限大の可能性を持っている、特に財産が有り核戦争に怯える富豪達にとっては理想郷となるのだ。そこで各国の大富豪達が飼っている政治家達を動かして国連で今回の決議を決定したのだそうだ。
勿論中には反対した国も有った、しかし欲の皮のつっぱった国の数の方が多かったのだそうだ。まあ、世界は不景気だし、ダンジョンを手に入れれば経済的に潤うのは間違い無いから儲け話に乗りたくなるのも人情って奴だ。しかし、将軍は今回の件で武力制圧をするのに反対の立場だったのだそうだ、どう見ても他人の物をかっぱらう武装強盗にしか見えないので、反対の立場をとっていたらクビになったのだそうだ。
「俺はな正義の為に戦いたかったんだ、クソ強盗の真似する為にクソ兵士になった訳じゃね~んだ。クソ共が!」
「それでどうするんだい、将軍?」
「テキサスに帰って牧場でもするさ、気楽で良い」
「俺のせいで悪かったな」
「マスターのせいじゃね~よ! クソ欲張りな連中のせいだ! せいぜい頑張れよマスター、クソ共の尻を蹴っ飛ばしてやれ!」
そして将軍は俺にUSBを手渡して帰っていった、俺は友達を殺さずに済んでホットした。幾らダンジョンマスターと言えども友達を殺すのは良い気持ちはしない。そしてジョンと言えば、何時も通りに飄々としていた。此奴はやっぱり大物だ、一体どんな地獄を見てきたのだろうか?
「マスター、僕はこれから身を隠すよ。な~に身分証明書なんか沢山有るし、隠し口座も山程有るから大丈夫だよ」
「抜け目がね~な、流石はジョンだ」
「手伝いたいけど僕が居ても邪魔に成りそうだから逃げるね、頑張ってねマスター、応援してるよ」
「じゃあなジョン、世話になった。出来れば人の居ない所に逃げろよ、人の多いところは色々危険になると思うぞ」
「分かった、その助言は誰にも言わない様にするよ。でもまあ仕方無いよね人類が滅びても、人間も沢山の動物を絶滅に追い込んだからね、今度は人類の番ってだけだよね」
そしてジョンは少しだけ寂しそうな感じでダンジョンから出て行った。こっちの世界で仲良くなった友達は2人だけ、なるべく友人を作らないでおいて良かったと思う。これから俺はダンジョンマスターとしての仕事をしなくては成らない。今のダンジョンには人間は一人も居ない、俺と俺の下僕の魔物だけが住人なのだ、そしてこれ以後ダンジョンに入った人間は全てポイントに変換する、それが俺の仕事なのだ。
将軍が俺にくれたUSBの中には秘匿兵器の一覧が入っていた、一番注意をしなくては成らないのが携帯型核兵器だった、これは2000年頃に実用化された人間が持ち運べる核兵器だ、小型なので車のトランクに入るサイズだった。確か2つに分かれていて設置する時には2つを組み合わせて使う兵器だ、核兵器にしては威力は弱いがそれでもTNT火薬で何千トンと言う威力があるやつだ。これのお陰でICBMの利用価値が激減して各国がICBMの開発を何故か辞めたっていう曰く付きの兵器だ、わざわざミサイルを飛ばさなくても敵の都市に隠して置けば何時でも爆破出来るので、ICBMの価値が無くなったのだ。これを使われると使われた階層の魔物が全滅するので注意する必要が有る、だがこれを使えば魔物だけでは無く、中に居る人間達も消滅するので俺としては痛くも痒くも無いものだった。対抗策は俺がダンジョン最深部にいるだけで良いのだ。
「さて、コア。ダンジョンの罠を全て作動させろ」
「はい、マスター。全ての罠を作動します」
「私は何をすれば良い?」
「俺の護衛だな、後から遊撃に回ってもらう」
「グフフフフ、マスター私の下僕を動かしますか?」
「まだだ、もう少し時間が経ってからの方が効果的だ」
「分かりました準備だけはしておきます、今から楽しみです」
俺がダンジョン産のポーションや色々なアイテムを秘密裏に売りさばいた金は、色々な国でマネーロンダリングして綺麗な金に変えていた。そしてその金は色々な名義でキングの下僕たちに持たせて居たのだ。キングの作った下僕達は世界の破滅を願う狂信者達ばかりだ、何故自滅したいのか俺にはサッパリ理解出来ないが、何故かこの世の中には破滅願望が有る人間が一定数存在するのだ。まあ、普通の人間達も別段平和の為に活動している訳では無いから、破滅願望の持ち主とも言えるかも知れない。
平和な時代なら彼等は監視されて大した事は出来ないのだが、俺を敵に回した国の軍隊はこちらにやって来る事になる、それは自国が弱体化するって事なのだ。そしてダンジョンに兵士を向けた国はキングの下僕たちが祭りを始めて国内が悲惨な事に成るのだな、まあ自業自得って奴だ。
「さてさて、頭の悪い俺に頭の良い連中の力を見せてもらおうか。」
「ダンジョンの力を見せる時がやっと来ましたね」
「バルキリーが伊達では無い所を見せてやろう」
「魔法も知らない愚民共に魔法の恐ろしさを教えてやりましょう、世界は邪王様の物ですぞ」
俺は頭が悪い、だから経済なんて全く分からないのだ。特に分からないのは閉鎖空間において常に右肩上がりになると考える経済学者や企業の偉い連中の事だ。国と言う限られた領土で息詰まると他国を侵略し領土を広げて経済成長するのだが、世界中を荒らし回った後はどうするつもりなのだろうな? 地球が大きく育つとでも思ってるのか、閉鎖空間で飽和した生物は共食いを始めて滅びるんだがな。一体どういう魔法を使って永遠に成長するつもりなのか頭の悪い俺に教えて貰いたいもんだ。




