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太陽の届かない空の下で

その日はあいにくの曇りだった。ゾンネの人々にとって太陽が見えないことは、気持ちに関わる。太陽は神だった。ゾンネの人々は、神の信徒だった。しかし、そんな時でも悪魔は容赦しなかった。

「北に大軍。突如空中に現れました。」

「守りを固めろ。案ずるな、太陽は分厚い雲の上から見ている。」

「地上に降りてきます!」

「迎え撃て!」

女王の咆哮で砲兵が一斉に射撃する。歩兵たちが突っ込んでいく。悪魔は地上からも、上空からも来た。弓兵たちが、魔術師たちが上空の悪魔を打ち落とす。リーヴァたちは、打ち落ちてきた悪魔たちの生き残りと戦っていた。大小さまざまな悪魔たちは、ひるむことなく兵士たちの首を狙った。とりわけ、女王の首を狙う悪魔たちが多かった。それを軽々と火の魔法で焼き焦がすゾンネの女王。

「女王の首を狙えー!」

「奴らの士気を削げ!」

「愚かな。」

女王は強かった。そこらの魔術師とは比べ物にならないほどに。戦争を三度生き延び、その座を守ってきた力は確かなものだった。そこに後ろから小柄な悪魔が不意を突く。そこに土でできたボールが飛んでいった。ボールは悪魔に当たると爆発する。悪魔の体はいともたやすく吹っ飛んだ。

「どうじゃん!新魔法の味は?」

「すごいなサーガ!」

「でしょ。」

そんな会話を交わしていると、悪魔の軍勢が背後から湧いて出てきた。

「不意を突くつもりじゃな。しかしこの程度簡単に見越してたわ。」

女王が合図をする。ラッパが吹かれる。それを合図に魔方陣が組みあがる。魔方陣の中心に大きなゴーレムが出現する。研究されていた新型魔法。ゴーレムは背後に沸いた悪魔を次々になぎ倒す。たくさんの死骸が積みあがる。

「ほお、やるようだな。」

声のする方を見上げると、魔王ルシがいた。優雅に空中に座り、グラスに入った赤い液体を飲み干す。セーレがグラスを受け取ると、ルシが下に降りてくる。

「力試しと行こうか。」

ルシが剣を抜き薙ぐ。すると、目の前から大量の悪魔が湧いて出てくる。女王が呪文を叫ぶ。すると業火が悪魔たちを焼き尽くす。大量の悪魔は、簡単に死体へと変わった。

「なるほど。では、これは。」

ルシ自らが切り込んでくる。女王が火を撒く。それをよけてルシは突っ込む。剣が女王のドレスを引き裂いた。やられるばかりの女王ではなかった。ルシの切り込んできた片腕を素早くつかみ焼く。ルシが距離を取る。腕が焼けていた。女王は服を払った。

「ルシ様。」

「ふん、面白い。セーレ、杖を出せ。」

「かしこまりました。」

セーレがどこからともなく杖を取り出す。ルシがそれを受け取ると女王に向ける。

「闇に落ちるといい。」

闇の塊が女王の元に飛んでくる。女王がそれを焼き焦がす。闇の塊は数を増していく。女王はそれを打ち落とすので精いっぱいだ。俺は、目の前の悪魔を切り伏せ、女王の元に駆けよる。闇の塊に向けて剣を振るう。水しぶきが複数の闇の塊を打ち落とす。

「きりがない。」

「リーヴァ、そなた手はあるか?」

「隙を作ってもらえれば。」

「良かろう。」

女王が一瞬集中する。闇の塊が迫って来る。ボンと音が鳴った。闇の塊が一斉に燃え出す。

「今じゃ!」

リーヴァがルシに向かって切りかかる。右手に水龍の剣を、左手に風の剣を持って、同時に切り裂く。渦潮が発生した。それは素早くルシを飲み込む。やったと思った。仲間の顔が、姫の顔が浮かんだ。

「ルシ様!」

セーレが呼ぶ。返事はない。

「やりおった!残るは雑兵だけじゃ!」

兵士たちが叫ぶ。士気は高い。

「だが、それでは足りぬ。」

女王の心臓が刺される。後ろから支えるようにして、ルシが剣を引き抜く。

「な・ん・と・・・。」

女王が崩れ落ちる。渦潮が消える。ずたずたに切り裂かれた人形が舞う。ムルムルがいた。笑っていた。嘲笑っていた。笑い声が響く中、俺はルシに決死の突撃をした。

「ルー!シー!」

「愚かなバアル。」

冷めた口ぶりは魔王にふさわしい。抑える者のいなくなった闇の塊が飛んでくる。体がずたずたに引き裂かれる。

痛い痛い痛い・・・。

その日、兵たちは敗走した。隣国のゴットになだれ込んだ。相当な怪我人がいた。生き延びられるものとそうでないものに分けられた。シンが駆け寄って来るのが見えた。綿と布をかき集めている。無駄だと思った。ここで俺は死ぬのだと思った。悪魔の力は恐ろしくて使えなかった。また仲間を傷つけてしまうかもしれなかったから。キーシャが呼びかける。

「混乱してはいけません!相手の思うつぼです!」

サーガがあちこちに土壁を張る。皆が逃げやすいようにするためだろう。

戦は終わった。

数万の命が犠牲になった。ゾンネはシュテルンの時と同じように地図から消えた。

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