表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

水龍の剣

朝が来た。小鳥が喜びの歌を歌っている。キーシャが来る。

「もう大丈夫なのか?」

「はい。リーヴァ、私も連れていくと言ってくれたそうですね。」

「そうだな。」

「なかなかお役に立てませんが、よろしくお願いします。」

「そんなことはない。キーシャがいて助かっている。大事なイヤリングを売り払い外套を買ってくれたこと、ヴィーダという道を示してくれたこと、ここでよくしてもらえるのも君のおかげだ。」

「ありがとうございます。」

このやり取りをシンが静かに見つめている。

「さて、行くっしょ!」

サーガが指を指す。

「南のシュミートへ!」

キーシャが手ごろな剣を腰に差す。リーヴァは荷物を背負う。サーガは片手に地図を、片手にクッキーを。シンは荷物をリーヴァから半分受け取る。

「出発!」

道中、キーゼル川で兵の集合を目の当たりにする。

「かなり多いな。どこにぶつける気なんだろう?」

「メテオアに向かうみたいですよ。」

メテオア。北の都市のひとつ。今は陥落している。取り戻すのに本気らしい。ゾンネとゴットの旗がそれぞれ見える。

「我々も頑張んなきゃね!」

「そうですね!」


険しい山道を超える。途中、野犬に襲われたが、シンが簡単に追い払ってくれた。シンは事あるごとに俺の体調を気にかけてくれた。しかし、この体になってから、痛みは感じるが、それ以外には、愚鈍というか何も感じなかった。疲れもない、腹もすかない、喉も乾かない。人間の体の不自由さを考えるとかなり楽だ。

(いかんいかん、それでも俺はできる事なら戻りたい!)

平地に降りると、のどかな景色が続いた。途中、柳の木の下で休憩をはさむ。

「柳と言えば、昔よく熱を出す子供だったんだけど、柳を煮出した薬をよく処方されたっけー。」

「サーガが?」

「これでも、子供のころはあったし。」

「私も飲んだことあります。一度大雪の中、外で駆けずり回って、熱を出したことがあります。」

「キーシャがそんな無邪気な子供だったとは!シンは?」

「僕ですか?おとなしい子供でした。・・・恥ずかしながら、エピソードとかはないですよ。」

「リーヴァは?」

「とにかくよく稽古してたな。」

昔のことを思い出す。木人人形を前にして、剣を打ち込む。親父に良く怒られてた。脇が甘いって。

「そろそろ行こう。」

空の様子がおかしかった。黒雲がシュミートへの道を覆っていた。シュミートへの道を歩く。シュミートが見えてきた。雷が都市に落ちたのが見えた。

「すごい稲妻!」

鍛冶都市シュミート。

都市の真ん中には亀裂が入っていた。嵐が巻き起こっている。中心に何かいるが見えない。

「なんなんだ?」

悲鳴。逃げ遅れた人が飛んでいく。そのまま地面にたたきつけられ、ぐしゃり。血の池ができた。嵐が静まる。中心には燃える尾をはやした牡鹿がいた。立派な角には人の死骸が刺さっている。

「フルフルは皆と仲良くしたい。」

悪魔だ!身構えた。シンとサーガが構え、キーシャが剣を抜いた。

「フルフルは皆と友達になりたいだけ。」

そういうと雷が落ちてくる。サーガが土壁を張る。キーシャの真正面に雷は落ちた。土壁がボロボロと崩れ落ちる。

「やめてあげて!」

子供が飛び出してくる。

「危ない!」

悪魔が子供の横に立つ。

「フルフルは優しい天使。」

雷が子供の真横に落ちる。

「危ないから逃げなさい!」

キーシャの忠告に耳を傾けない子供。

「フルフルはかわいそうな天使なんだ。お願い!意地悪しないで。」

フルフルの体を押す子供。

「さあ、帰るんだ。」

すると突然シカの顔が裂ける。子供の頭を一瞬で飲み込む。子供の体がフルフルの体に寄りかかる。それを前足でフルフルは踏みつぶした。

「フルフルは優しい。」

シンが始めに突っ込んでいった。サーガが土杭で援護する。雷が激しく落ちる。そのどれも避けて、シンはフルフルの元にたどり着く。フルフルの体を中心に嵐が巻き起こりだした。サーガが慌てて土杭を地面に埋める。浮き始めていたシンがそれで体を支える。キーシャは固まっていた。幼い命があっけなく奪われたことに気が動転していた。リーヴァがナイフを握る。すると、不思議な力を感じた。エウロスがよく使っていた変化をもたらす風を感じていた。ナイフを大降りに振るう。すると竜巻が舞い起こり、嵐とぶつかった。竜巻は嵐をいとも簡単にほぐし、分解した。フルフルがあらわになる。すかさずシンが剣を抜き放つ。フルフルの体が一刀両断される。汚い断末魔の後、フルフルが崩れ落ちる。悪魔は倒された。黒雲がサーっと引いていく。静かになった後、町の人々が扉を開ける。その中の一人が、フルフルのそばの死体に駆け寄っていく。その人は、子供の死体を見留めると、泣き崩れた。

「何もできなかった・・・。」

キーシャがつぶやくように言った。俺はどうしたらいいかわからず、キーシャを見つめた。シンが駆け寄って来る。

「大丈夫でしたか?」

「あ、ああ。」

「キーシャ、しっかりしな!」

サーガがキーシャを励ますように声をかける。

「私、動けませんでした。」

「子供を人質に取られたようなものだったんだから仕方ないし。」

男がそばに寄って来る

「助かったよ。突然嵐が来たもんだから驚いたぜ!アンダーソンさんちのツツが飛び出して行っちまうとはな、気の毒だぜ。」

「悪魔のことを信じてるみたいだった。」

「そそのかされたんだろう。悪魔はうそつきだって、日ごろから教えてるんだがな。」

「腕のいい鍛冶師を知らないか?」

「それなら家に来な。シュミート一の腕利き鍛冶師と言ったら、このコーレ・スミスさんよ。」

「本当か?悪魔を殺すための武器を作ってほしいんだが。」

「要望は家で聞こう。さあ、入った!」

キーシャたちを呼び寄せ、コーレの鍛冶屋へ。たくさんの武器が飾られていた。奥に炉が見える。そばの机に通される。

「で、何を作ればいい?」

「剣が欲しい。魔力のこもった剣が。」

「私は・・・槍がいいです。」

「僕は小刀を。」

「あーしは大丈夫かな。」

「そうだな・・・どんな魔力を込めるんだ?」

「水、水がいい。」

「リーヴァ様と言えば水龍の剣でしたね。」

「リーヴァ・シュトロームね、あの名剣に匹敵するものを作ろう。材料だが・・・水龍の鱗がいるな。」

「剥ぎ取ってくればいいのか?」

「近くに小型の水龍の生息地がある。」

「すぐに行ってこよう。」

「準備して待ってるよ。」

シュミートを出て、近くの湿地帯へ。


湿地帯。

小型の水獣がうようよしている。人を惑わす人魚、馬に似たケルピー、こちらの様子をうかがう水虎。しばらく行くと、水龍を発見した。どれも小型だ。

「大きいのは居ないか?」

突如、水柱が立ち上がる。大きな水龍だ。

「こりゃいい。」

ナイフを構える。突進してくる水龍の頭を一突き。

「お見事です。」

下半身をばたつかせる水龍。その場で捌く。鱗のついた皮、新鮮な肉。

「持って帰って、夕飯にでもしよう。」

シュミートに戻ると鍛冶師が待っていた。

「どうだい?」

どさりと鱗付きの皮を置く。

「これまた立派だな。」

苦笑する鍛冶師。

「腕が鳴るぜ。」

「どのくらいかかる?」

「三日で作ってやるよ。」

鱗を渡す。

「どこか休める場所はないか?」

「宿屋が上にある。出来たら呼んでやる。」

宿屋。肉を持って、店主に見せる。

「調理してもらえるか。」

「ええ、かまいませんよ。お客さん、あの嵐の悪魔を倒してくれた人たちでしょう。」

「ああ。」

「割引しちゃう!」

「それは助かる。」

「部屋はそこを使っておくれ。」

部屋に入り、外套を脱ぐ。みんなそれぞれ休憩する。キーシャは荷物の整理、サーガは鏡を見て、メイクを整える。シンは剣の手入れ。

「シンの剣はどこで作ってもらったんだ?」

「父のお古です。腕のいい鍛冶師に作らせたと言っていました。それから西にいる魔法使いに闇の魔力をこめてもらったと。」

「親父さんも暗黒騎士?」

「そうです。と言っても無名でしたが。早くに母と結婚して、暗黒騎士をやめてしまいましたから。」

「そうなのか。」

「リーヴァ様は・・・。」

「思ってたんだが、リーヴァでいい。」

「恐れ多いです。」

「そんなことはないって。」

「では、リーヴァはどうして剣の道に?」

「親父がシュテルンの兵士だったから。俺も兵士になるのが当たり前だった。それが、エアロスとフォービと共にドラゴン退治しに行ったら、いつの間にか三英雄なんて呼ばれるようになってた。」

「黄金龍ドラド。相当邪悪でしたからね。」

「今の悪魔どもと比べたらかわいいもんだけどな。」

「ご謙遜を。黄金龍ドラドと言ったら、都市を二つも破壊し、あのシュテルンを脅かすほどだったとか。」

「でも、より強力な魔王にシュテルンは滅ぼされた。」

「魔王は別格ですからね。とはいえしかし、復活なされたリーヴァが倒すのでしょう?」

「だといいんだが。」

体を順当に休め、三日が立った。

「コーレ・スミスさんだ。約束通り、武器ができたぞ。まずは小刀。」

シンが受け取る。

「次に槍。」

キーシャが礼を言う。

「そして最後に水龍の剣だ。」

鱗が張られた長剣を渡される。

「ありがとう。」

握ると魔力を感じた。宿を出る。

「次はどこ行くー?」

「ヴィーダに戻りましょう。メテオアのことも気になりますし。」

俺たちは、ヴィーダに向かって出発した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ