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✧白面金色との邂逅、それの旅。:其のニ。

ゆっくり眠ったところで翌朝はなんだかスッキリ眠れた気がした。綾姫ちゃんはゴロゴロしたりしてたらしくて、少しだけ髪の毛がぴょんと跳ねてて少し笑っちゃった。昼ご飯を食べたり軽く外に出る支度をしたあと、ロビーで泰嗣さんと合流する。

「おはよー。あ、綾姫寝てないのに寝癖ついてんじゃん。」

「む?……ほんとじゃ。創葉、わかっててさっき笑っていたのかえ?」

「あはは、ごめんごめん。かわいかったから、つい。」

 まるで今からかの大妖に会いに行くだなんて思えないほどの緊張感だけど、そりゃこのつわもの二人からしたらそんな大したことないんじゃないのかも、と思うことにして、宿を発つ。

「ところで、どうやって封印解くんですか?まさか岩壊したりなんてしませんよね?できないだろうし。」

「まさか!壊して封印解除〜なんてものじゃないよ。まあこれだけ時間が経ってるとね、わりと緩んでるものなのさ。綾姫が出てきたみたいにね」

 出てきたみたいに……?まるで綾姫ちゃんが封印されてたみたいな言い方……

「これ泰嗣。余計なことを言うな。」

「まあまあ、大事なことじゃん?自分の身の上って。」

「……追々話すとするが。封じられていたことは事実じゃ。」

 本当に封印されてたの?この、ちっちゃくて可愛い子が?というより陰陽師なのになんで封印されたのかってとこも気になるし……。まあ、今度話してくれるんだ。それなら、いまは無理に聞かなくてもいいかな。

「じゃあ、その緩んでるところを、解く……感じですか?」

「お、いい感じにわかってるじゃん。その通り。ぼくの術の触媒は空気。空気と言っても、そのなかでも酸素なんだ。まずそれでアプローチをかけてみる」

 酸素!?ってことは私たちの身体の中にも……!?考えてちょっとゾッとしたけど、まあ、仲間だし……仲間だよね?うん、仲間、仲間だよ。

「で、それでも駄目だったらぼくの術も混ぜる。ぼくの触媒は影じゃからな。相性はいいのじゃ」

「嬉しいこと言ってくれるじゃん」

「気持ち悪い顔をするでない」

 鋭い一撃が泰嗣さんの脇腹を抉った。泰嗣さんは大げさによろめいて額に手を当てる。ひどいなぁ、なんて言って笑ってた。

 ――

 宿を出て歩き始めてから数十分たって、太陽が西に傾き始めた頃に、ふと泰嗣さんが足をとめる。

「うん、ここまでくれば届く。そうだよね?」

 綾姫ちゃんにウインクをしてみせる顔はやっぱり二枚目だ。うん、顔だけはいいんだな本当に。でも、届くって?

「あ、もしかして、ここからなら術?を飛ばせるんですか?」

「そうさね。こやつは射程が広い故、届くであろう」

 謎の結託感がある。知り合って長いのかな。というより私邪魔じゃないかなぁ。

「バイトの先輩として上手く話をまとめてくれ〜って魂胆じゃな〜い?多分」

  ……もうこの人心読めるってことにしていいかな。

「まあ、そういうことになるな。先に務めている者が話をつければあやつも納得するであろう。」

 そういうものなの?うーん、頭が痛くなってきたぞ。話をまとめよう。私は曙宵誰彼堂……何でも屋さんのアルバイト。で、人が足りないから人を増やすことになって玉藻の前をバイトに雇用するってことになった。で、今から私が玉藻の前に話をつける。……うん、筋は通ってる。通ってるかなぁ。まあ、ここまで来たら戻れないしね。どうにかなれ!

 泰嗣さんがす、と息を吸うと、少しだけ空気が張り詰める。まるで新品のノリの張ってあるシャツみたいな空気。見てるこっちが緊張しちゃって、呼吸が浅くなった感じがした。というより、さっき酸素を使うって言ってたから、本当に周りの酸素濃度が下がってるのかもしれない。その時、ゆらりと陽炎のように空気が歪んで、その歪みが那須野が原の方に飛んでいく。

「白面金色、話をさせてくれ」

 飛んでいくものにそう言葉……音をのせる泰嗣さんの顔はいつもより茶化した雰囲気がなくて、もともとの整った顔が相まって少し怖く感じるほどだった。……でも、まだなんの応答もなくて少しだけ顔をしかめている。

「……こなさそうですか?」

 うん、と一つ頷いたあと、肩をすくめて、綾姫ちゃんのことをみた。協力を求めてるらしい。綾姫ちゃんもこくりと頷いて、泰嗣さんのすぐ隣に立つ。

……

 ぐわんと2人の影が揺らめく。というよりも、影という影が2人の、主に綾姫ちゃんの影に根を張るみたいな感じ。で、その影が足を、胴を、指を伝って、さっきの空気の歪みに乗っかった。

「ふむ、このままでは来んか。……創葉。」

 突然呼ばれてびっくりする。何だろう

「あやつがもし人として来るのなら、名を何にしたい?」

 名、名前……?名前、決めればいいの?なんで、いやまあ、考えてって言われたなら、考えなきゃ。玉藻の前、玉藻、玉かあ。じゃあ……

「ギョク、とか?」

「……良い名じゃ。」

「「ギョク、話を」」

 2人がそういうと、さっきよりもぐんと空気が重くなって、すこし立ちくらみがした。でもなんとかふらつかないようにしてたら、急に今までとは違う空気の重さに変わった。

 ……何だろ、これ。

 そんなことを考える間もなく、声が響く。

「われをギョク、と呼ぶの?」

 聞いたことのない、いや、いままで聞いたことのある声とは比べようにもならないような声。きれいで、艷やかな、女性の声がした。

「面白い。名を名乗ってくれるかな」

 二人が私に目配せをする。……私!?

「わ、私なら、私は……御愛鈴、御愛鈴創葉です。」

「御愛鈴創葉。ふぅん」

 そういった瞬間、するするとその歪みと影を伝ってナニカが近づいてくる。肌が泡立つのを服の中で感じながら、私はそれを見つめた。

 ……現れたのは、一人の女だった。声から想像した通りの、美しい女の人。金色の髪の毛が西日にきらきら輝いてて白い肌は逆光のなかでもきれいなのがわかった。

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