表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愛した姫の名で生まれ変わり、前世の誓いを果たす ~思い出すは、君の名~  作者: 呂兎来 弥欷助
第二章:選んだ恋(全26話)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/38

【20】確かな繋がり

「も、もしもし?」


 双子を起こしてはいけないと、リュウは咄嗟に受話器を上げる。すると──。


「あ! リュウよね? わ! 繋がったわ!」


 庾月ユツキの声がする。


「え? え!」


 現実ではない気がして、リュウは頭が真っ白になった。


「ど、どうして?」


 リュウが問うと、はしゃいでいた庾月ユツキの声がピタリと止んだ。


「うれしくないの?」

「いや、うれしいけど……」

「あら……寂しかったのは、私だけだったのね……」

「ち、違うよ! 寂しかった、すごく。すんごく!」


 必死に言っていたら庾月ユツキの笑い声が聞こえ、リュウは急に恥ずかしくなる。


「話せると……思ってなかった、から……その、驚いてるだけで……」


 こぼれ落ちた本音に、『うれしいわ』と庾月ユツキは返してくれた。続けて『祖父のお陰』とも。

 どうやら、祖父が鴻嫗トキウ城の大臣に連絡を入れ、計らいをお願いしたらしい。


『あ』と言いそうになった。

 今朝、祖父が遅れてきたのは、それだったのだろう。


 ──そういえば、じぃちゃんって……俺が庾月ユツキと付き合ってから、度々どっかに連絡してる感じだった……気が……。


「それでね、急遽この専用の線を引いてくれたの」


「で、でも……鳴ったタイミングが、すごくよかった気がするんだけど……」


「ふふ、それはね……リュウは留守番機能のボタンを、何度か押したんじゃないかしら?」


 ──ん?


 思い返せば、庾月ユツキの言う通りだ。


「そうだね……明日の朝、確認する暇がないかもと、思って……」

「それよ。私の方でリュウが留守にしたか、解除したかがボタンの色でわかるの」

「え! そうなの?」

「ふふ、便利でしょ?」


『だから、私からかけるわね』と庾月ユツキが楽しそうに笑う。


「でも……庾月ユツキは、色々大変じゃない? その……先日、お母さんが亡くなったでしょ?」


 ピタリと笑い声が止まった。


「だから、無理しなくても……」

リュウと話せない、繋がれない。その方が無理だわ」


 キッパリと庾月ユツキが押し切ってきた。


「この電話を今日受け取って、私……頑張れると思った。毎日声を聞けるなら、頑張ろうと思った。……昨日なんて、私……夷吹イブキとふたりでワンワン泣いちゃってたのよ?」


 浮かべた光景は、あまりにも昨日のリュウ自身で──リュウは声を失う。


「だから、リュウが電話を繋げてくれるのを……今日すごく楽しみにしてたのよ。なのに、酷いわ。やっぱり私だけ寂しかったのね」

「ち、違うってば! その、俺も同じで……恥ずかしいけど、俺たちも昨日……たくさん泣いた……」


 庾月ユツキが大きく息を吸った。


「ほんと?」


 疑うような声が、かわいらしい。


「ほんと」

「まぁ!」


 コロコロと庾月ユツキは笑い、とても幸せそうに言う。


「私たち、すごく仲良しなのね!」




 他愛のない話しをして、すっかり遅くなってしまった。


 子どもたちはもう寝ているから、今後はまだ起きているときに、優先的に変わって話そうとなった。




 それから、次の日も、またその次の日も──庾月ユツキから電話がくるようになった。


 いつからかリュウは仕事後の電話が楽しみになって──仕事中にホウッと『今日も話せる』と夢見心地になった。




 たまに早い時間に終われば、離れて暮らす夷吹イブキもの話を聞き。

 双子と受話器を変わり、姉妹と母娘が話して──最後にリュウに受話器が戻ってくる。


 娘たちが眠ったあとの電話は、庾月ユツキとふたりで色々話してしまって──どうしても長くなってしまう。


 どんなに短く切ろうと思っても、名残惜しくて受話器を置けない。




 季節が巡れば、どうしても忙しい時期はやってきて。


 仕事が遅く終わるのに、そういうときでも庾月ユツキは電話をくれて。庾月ユツキとじっくり話すだけの夜も増えて。


 日に日に忙しさが落ち着けば、数秒だけでも夷吹イブキの声を聞き、受話器を双子に受話器を託して──双子から再び受話器を受け取り、庾月ユツキの声を聞く。




 子どもたちにまで家族と離れさせてしまったけれど、月日が過ぎて、双子でよかったと考えられるようになっていた。


 年端もいかないふたりは、()()()だからか自然と助け合っていて。


 でも、寂しい思いをさせることになったのは、花月カヅキ令舞生ヨブキにだけじゃないとジリジリ胸が痛むこともある。


 夷吹イブキも、姉妹から離してしまった。だから、できる限り双子との時間を電話で過ごしてくれたらいいと願う。




 庾月ユツキが正式に鴻嫗トキウ城を継ぎ、約五ヶ月。夷吹イブキが幼いながらに後継者と公表された。


「そういえば、柚子ちゃんって庾月ユツキ様に似てるわねぇ?」


 食堂で接客中に言われ、リュウキはドキリとする。


「そうですか? でも、柚子が聞いたら喜ぶかな?」

 と必死にごまかそうとしたら、

「あら、のろけさせちゃったわ」

 何て返ってきたから、照れたと思われたらしい。




 庾月ユツキの姿を何かで見る度に、リュウ庾月ユツキのきれいさに胸を打たれて。

 同時に、『姫』になった夷吹イブキの姿にも、届かない距離を感じている。


 それでも、すっかり『姫』に戻った庾月ユツキを見れば、リュウはひとりでうれしくもなる。


 庾月ユツキがふたりで買った指輪を、まだしてくれているから。それに、結婚した日にリュウがプレゼントした黒い宝石のイヤリングを、こっそりとつけてくれているから。


 ──やっぱり、俺の妻だ。

 身に付ける物に確かな繋がりを得て、愛おしくもなる。




「おとー様」

 受話器から聞こえた夷吹イブキの声に『あ』と思いながらも、リュウはこれまで通りに接し、双子に受話器を渡す。


 楽しそうに話すふたりを見守り、一周してきた受話器を受け取った。


 庾月ユツキと少し話していると、いつの間にか双子が寝ていて、リュウはそっと布団をかける。


夷吹イブキはますます庾月ユツキに似てきたね」

「ふたりは、リュウに似た?」

「ん~……」


 どこか似てるかと眺め、ふと気付く。


 ──そういえば庾月ユツキは……花月カヅキ令舞生ヨブキに、生後半年のときから……会ってない。


 リュウの前では歩く練習をしたり、物を認識したりし始めているが──。


 ──庾月ユツキの中では、ふたりとも()()()()()()()()()なんだ……。


 それはリュウも同じ。

 夷吹イブキが二歳半ほどで止まっている。


「そうだ、家族写真を撮ろう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ