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<レイン視点>


 ヴァルテス家を出て、クライシス家の屋敷に向かう。ヴァルテス家の屋敷から遠くに建てられているクライシス家の屋敷は、今から向かえば夜に着くことになるだろう。

 

 今日、エリシアに連れられてお邪魔したヴァルテス家はとても広くて大きかった。あれがクレメンス王国で最も大きな力を持つ、ヴァルテス家。

 ・・・・・・圧倒された。もし、エリシアが手を引いてくれなかったら、ずっとあの場所に突っ立っていただろう。あれが、ヴァルテス家・・・・・・。


『えっと、久しぶり、ですね。覚えていらっしゃるでしょうか、エリシア・ヴァルテスです。後ろの方は私の連れの方ですので身分は確かですわ。ここを通してもらえますか?』

『やはり、エリシア様でしたか!!無事なお姿を見ることができ、うれしく思います。』

『皆様、お待ちになられていますよ。さあ、どうぞお入りください。後ろの方もどうぞ。』

『ええ、お仕事、頑張ってくださいね』

『『光栄の極み!!』』


 ふわりと美しく笑って、騎士たちをほめる姿は、まさに、『ヴァルテスの宝石姫』。その美貌と圧倒的なカリスマ力、目にまぶしいほどの輝きで、万人を魅了する『宝石姫』がそこにいた。


 あの時、届かない、と思った。


 僕とエアリシアの間には、大きな溝があった。


 ・・・・・・わかっている。もしもあの森で、出会わなかったら、僕たちが関わることなんて・・・・・・。


 いや、やめよう。これいじょうは・・・・・・それよりも、目の前の問題を片付けなければ・・・・・・。

 

 僕がここに来る前、妖精たちがある情報を入手した。


『陛下、少々よろしいですか?』

『ん?何?』

『実は・・・・・・』


 急がないと・・・・・。


 



 そう思って、顔を上げた瞬間・・・・・・


とてつもない魔力反応と爆風が走り・・・・・・


クライシス家の屋敷が燃えていた。










 ぼうぼうと燃え盛る炎。魔法で水を生成して屋敷にかけるも、炎の勢いは止まらなかった。まずい・・・・・・あの中には、僕の家族だけじゃなく使用人たちもいるのに!!・・・・・・どうすればいいんだ!!大きな力を持っていても、誰一人守ることができないなんて・・・・・・!!

 いまだに燃えている屋敷を前に、茫然としていると、何者かが、僕に近づいてくる気配を感じ取った。これは・・・・・・嫉妬と、激しい憎悪か?

 振り返ると、一人の男が立っていた。誰だ?見覚えがないな・・・・・・。


「ふふふ、どうですか?自分の家が、家族が、大切なものが!!自分の前で燃えていく気分は!?」

「・・・・・・お前が火をつけたのか」

「ええ、そうです。私がやりましたよ。それが何か?」

「僕は侯爵家の者だ。その意味が分かっているのか?」

「クフフフフフフ、ええ、わかっていますとも・・・・・・でも、あなたが私をとらえることはできませんよ・・・・・・今、私を牢に入れたとしても、私はあなたの大切なものを壊すことができるのだから!!」


 どういうことだ?牢にいても、僕の大切なものを壊せる?意味が分からない・・・・・・。

とにかく、火を消さなければ!!

 大量の水を生成して屋敷にかける。しかし、炎は消える気配がなかった。

そんな僕の姿を見て、男は笑っていた。ゲラゲラと。


「無駄無駄無駄、無駄ですよ~!!その炎は消えることはない!!」

「なっ!!どういうことだ!!」

「この炎は特殊な炎でしてね・・・・・・絶対に消えることはありません」

「そんな、じゃあ・・・・・・」

「ええ、ええ、もう何もかもが遅いんだよ!!火がついた時点で手遅れだったんだ!!お前さえいなければ、家族もこんな目に合わなくて済んだのになぁ?・・・・・・お前がいたからこうなったんだよ。まあ、今更嘆いたって仕方がない。すべて、なくなっちまったゲグギャッーーー!!」


 どこからか飛んできたピンクのハートに顔を打たれ遠くに飛んでいく男。何かと思って上を見上げると・・・・・・





天使が降臨していた。




 

++++++++++






<エリシア視点>


 うわ、燃えてるわ~盛大に燃えてるわ~。

中にいる人たちは、結界を張って、転移魔法で家まで飛ばしたんだけど・・・・・・。いや~、お父様たちに言っておいてよかったわ~。『もしかしたら、クライシス家の人たちを、大広間に強制転移させることになるかもしれないけどいい?』って。お父様たちもOKしてくれたから、きっと、今頃大変なことになっているんだろうな~。

 さてさて、ここに取り出したるは、前世でもおなじみ、魔法少女な女の子が持っていそうなパステルカラーのピンクのハートと小さな翼のついた、白いメルヘンステッキで~す。このステッキは完全なネタ道具として作ったんだけど・・・・・・まさかここで使うことになるとは。

 私はステッキを頭上で振りながら「エンジェル・ラヴラヴ・ラヴチェンジ!」と叫んだ。この空に、私以外いなかったのが幸いだ。もしもこれを聞かれていたらと思ったら、死にたくなる。ほんと、何で私はこれを作ったんだ・・・・・・。でも、あの火を消すにはこの道具を使わなくちゃいけないし・・・・・・。

 そんなことを考えている間にも、変身する私。そして・・・・・・


「闇に落ちた哀れな子羊よ。今、我が神に代わって天罰を下そう。さぁ、懺悔なさい・・・あなたの罪を悔い改めるのです!!愛の天罰執行者、エンジェル・ピンク!!」


 ピンク色になった瞳を輝かせ、パステルピンクのふわふわとしたフリフリ甘ロリ風の恰好をして天使の羽をはやし、ビシッとポーズを決めながら、高らかに名乗る、私がいた・・・・・・。


 『天罰執行☆エンジェル・ステッキ(ピンク)』、私がノリと勢いで作ったネタ装備。効果は、『身体能力向上・大』『格闘攻撃補正・大』『魔法攻撃補正・大』『状態異常無効』等々、様々な効果をつけられている。その中でも、今回特に重要な効果が・・・・・・『実体ない者に対して物理ダメージ・大』だ。字面通り、実体のない、例えばレイスや精霊なども殴って倒せるという効果がある。

 今回の『サラマンダーの癇癪』事件は、精霊が起こしたものだ。正確には、闇落ちした精霊だが・・・・・・。【神眼】で見ると、やたらと黒くなっちゃった炎をつかさどる精霊が暴れてるんだよね・・・・・・。精霊の起こしたものは、魔法では止めることができないからね。精霊自体を止めるか、他の精霊や妖精で対処するしかないんだけど・・・・・・私は精霊を使役してないから、今回は精霊を物理的に止めて、妖精で消火活動をしようと思います。

 無駄にキラキラしながら空を飛ぶ私。・・・・・・そういえば、これ、エフェクトもどきをつけてたな。目立って仕方がない・・・・・・。【神眼】の効果の一つ、【千里眼】を行使してレイン様を探す。ゲームのストーリー通りなら、レイン様はいるはずなんだけど・・・・・・いた!あの姿は間違いなくレインさ、ま?


 ・・・・・・何故かはわからないんだけど、レイン様、精神攻撃受けてるんだけど・・・・・・。え、何?あの禍々しさ抜群の精神干渉魔法。【鑑定】したら、なんかヤバい結果が出たんだけど・・・・・・。


*鑑定結果*

 魔法名:絶望の闇

 属性:精神干渉魔法(オリジナル魔法)

 効果:他者の精神を弱らせ、絶望に落とす魔法。

    特に精神が弱っている者に対し、効果がある。

    この魔法にかかった者は、自信を無くし、徐々に堕落していく。

 解除方法:1・精神干渉魔法【救いの光】(オリジナル魔法)による【絶望の闇】の解除

      2・精神に大きな衝撃を与える

      3・術の執行者が術の解除を行う


*****

 

 解除法が3つ・・・・・・うん、3つ目の方法にしようかな。この方法が1番簡単そうだし。ちょうど術者っぽい人が出てきたし。


 う~ん、この装備で殴ったら、間違いなく、あの術者が永遠の別れ(エターナル・グッバイ)しちゃうよね・・・・・・。仕方ない、ここはあれを使おう。

 

「『しゅーてぃんぐ・ラヴ・ハート』」


 ステッキを術者に向け技の名前を言うと、ステッキからピンクのハートが出てきた。そして・・・・・・


「『シュート』」


術者の顔面にストライク、術者は飛んで行った・・・・・・。


・・・・・・うわぉ。


 予想以上の威力だった・・・・・・。と、とにかく、レイン様のところに降りようか・・・・・・。


「レイン様、大丈夫ですか!?」

「・・・・・・て、天使様」


・・・・・・what's?天使様?・・・・・・あぁ、この羽のせいか。まあ、天使をイメージして作った装備だからね。そう思うのも仕方がないか。


「っ!?え、エリシアか、ビックリした・・・・・・」

「はい、エリシアです。レイン様、このお屋敷の中にいた人たちは、みんなヴァルテス家に飛ばしたよ」

「はい?」

「クレメンス家にいた人たちは、みんなヴァルテス家にいるよ。一応、屋敷の中にあった重要そうな物とかも一緒に飛ばしたんだけど・・・・・・」

「ヴァルテス家に?」

「うん。だから、みんな無事だよ」

「っ!?あ・・・・・・よかった」


 安心したらしく、その場に座り込むレイン様。あれ?【絶望の闇】が解除されてる。いつのまに・・・・・・。ん?


「よくも、よくも邪魔をしてくれたな、このガキがーーーーー!!」

「『束縛♡ラヴ・チェーン』」

「ウギャーーーーー!!」


 遠くに飛ばしたはずの術者が襲い掛かってきたので、拘束技を発動した。ステッキから生み出され発射される、無数のピンクハート。術者はピンクハートで埋め尽くされ、その場で倒れる。この技は、敵を拘束して眠らせるので、しばらく、あいつは動かないと思う。



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