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23時と0時に1話ずつ更新します。
レイン様は、夕方になると私の家から出てしまった。ヴァルテス家からクライシス家までかなりの距離があるので、歩いていったら夜になるだろう。
・・・・・・あぁ、風が気持ちいいなぁ~。現在私は・・・・・・空にいます。
ん?何を言っているのかって?空を飛んでいるんですよ。空を飛ぶのって気持ちいいよ。なぜ私が空を飛んでいるのかって?そりゃあもちろん、乙女ゲームのシナリオを、フラグを、たたき折るために決まったいるではありませんか!!
今、私が向かっているのは王都に立っているクライシス家。レイン様の実家ですね。私の予想通りなら、今から、大火事が起こるはず・・・・・・のちに『サラマンダーの癇癪』と呼ばれる、レイン様の心に大きな傷をつける出来事が・・・・・・。
乙女ゲーム『マホコイ』の攻略難関隠しキャラ、レイン・クライシス。
ヒロインと乙女ゲームのレインとの出会いイベントは、少し特殊だ。なにせ、Aランクの迷いの森に薬草を摘みに来たヒロインが、魔物に襲われるところから始まるのだ。何故森に?と思うかもしれないがそこは、ゲームならではのご都合主義の発動。ストーリーでは、ヒロインのおばあさんが病気にかかってしまい、その病気を治すために必要な薬草を取りに行くという流れだった。実はこのゲーム、ヒロインが学校に編入、つまり、始まってすぐに選択肢が出てくる。その選択肢は3つ。
『天気がいいから、学園の周りを散歩してみようかな?』
『学園の中を探検してみようかな?冒険みたいでわくわくするな!!』
『少し疲れちゃった。寮に帰って休もうかな』
この3つの選択肢の中から1つ選ぶ。ちなみに、『学園の周りを散歩』『学園の探検』を選ぶと、攻略対象と悪役たちに出会える。
で、『寮に帰る』を選択するとすぐに次の日になってしまう。まあ、それは隠しキャラのルートが解放されていない場合。隠しキャラのルートが解放されていると、ヒロインのお母さんから1通の手紙が届くのだ。この手紙を、その日のうちに読めばレインルートに入れる。次の日に読んでしまうと、既におばあさんの病気が完治していると書かれた手紙が届くので、レインの攻略はできない。
レインと出会ったヒロインは、助けてくれたお礼に何故か持っていたクッキーを渡そうとする。が、レインはこれを拒否。それもそのはず、乙女ゲーム・レインは人とかかわることに恐怖していたのだから。
なぜ、人とかかわることに恐怖していたのか?それはレインのトラウマとなった『サラマンダーの癇癪』に関係がある。
幼いころから好奇心が旺盛であったレインは、多くの書物を読み漁り、たくさんの知識を吸収していった。気になったことはすぐに実験していた。気づけば彼は賢者になっていた。そして、彼は様々な魔法や魔道具を生み出していった。それはとても素晴らしいものばかりで、たくさんの人たちに称賛された。しかし、中には彼に嫉妬する者たちがいた。
その中でも、特に彼を嫉妬した男がレインを亡き者にしようとした。しかし、レインは強かった。並の暗殺者では歯が立たなかったのだ。そこで男は、レインの家族を亡き者にしようとした。そのころにはすでに自立していたレインは実家を離れ、森の中で生活していた。男の計画を知ったレインが実家に向かうも間に合わず。レインの家族が住んでいた屋敷は、火で包まれていた。魔法で水を生み出し屋敷にかけるも、火は勢い良く燃え上がり、消えることはなかった。何をしても決して消えることのない火。月のない夜に燃え盛る屋敷を前にレインは立ち尽くしていた。そんなレインの前に男が現れてこう言ったのだ。『お前さえいなければ、家族もこんな目に合わなくて済んだのになぁ?・・・・・・お前がいたからこうなったんだよ。まあ、今更嘆いたって仕方がない。すべて、なくなっちまったんだからな!!ギャハハハハハハハ!!また、こんなことが起こってほしくなければ、あの森に建てられたボロ屋敷でおとなしくしてな!!』
その男の言葉を聞いたレインは自分を責め続け、やがて何をするも無気力な、人とかかわることに恐怖する、堕落した賢者となったのだ。
この話は、乙女ゲーム・レインの好感度をMAXまで上げることで聞くことができる。『僕とかかわると、みんな、不幸になるんだ。』と言った乙女ゲーム・レインの切なげな顔、もといスチルは今でも思い出すことができるよ。この場面で、前世の私はマジ泣きしてしまった。
レインルートでは『サラマンダーの癇癪』事件を引き起こした男に、ヒロインが追われ、殺されそうになるんだけど、レインと一緒に返り討ちにするんだ。その時のスチルもまた素晴らしいもので、クフフフっゲフンゲフン!!
と、とにかく、そんなわけで私は『サラマンダーの癇癪』事件を阻止しようとしているわけだ。この『サラマンダーの癇癪』事件、なんで『サラマンダーの癇癪』っていう名前なのかは知らないんだよね~。どんな手段を使っても、火が消えなかったっていうことが関係していると思うんだけど・・・・・・う~ん、わからん。
そんなことを考えながら空を飛んでいたら、あたりは暗くなっていた。私、クライシス家の場所知らないんだよね~。ヴァルテス家からすごく離れている、というか何故かすべての貴族の屋敷がヴァルテス家から離れているから、どの屋敷なのかわからない・・・・・・。
ん?大きな魔力の反応が・・・・・・こんなところで?魔力暴走にしては制御が取れすぎて・・・・・・まさか!!
私は魔力反応があった方向に猛スピードで向かう。あともう少しでつく、というとき・・・・・・
鼓膜が破けるかと思うほどの爆発音がして・・・・・・
目の前の屋敷が燃えていた。




